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第14話 ご主人との大切な思い出
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「み、……見えたっ? 那由太、見たっ?」
「み、見ました! 魚いっぱいでめちゃくちゃ綺麗でしたっ!」
シュノーケルマスクを通して見た海の中は真っ青でどこまでも広がる、まるで竜宮城そのものだった。
遠い海の底にある岩場や海藻の周りを泳ぐ小さな魚の群れに、緩やかな動きで行ったり来たりを繰り返す個性的な顔立ちの大きな魚。
それらを上から見下ろす俺達は空を飛んでいる感覚で、ゆったりと泳ぎながら海底の空中散歩を楽しんだ。
「人に慣れてるのか、魚も割と近くまで来てくれるんだな」
刹も良い写真が撮れて満足そうだ。
「ロープ張ってあるから遊泳区域も分かりやすいし、那由太の浮き輪もあって安全だね」
「お、俺こんな沖で浮き輪なしなんて無理ですよ。二人ともよく平気ですね」
「普段はライフジャケット借りるんだけど、那由太がもし溺れて沈んじゃったら助けに行けなくなるからさ」
炎珠さんが俺の大きな浮き輪に捕まって柔らかく笑った。水も滴る良い男とはこのことだ。
「俺は泳げないけど……炎珠さんが溺れたら浮き輪持って助けに行きますよ!」
「ありがと那由太、大好き」
チュッと音を立てて、炎珠さんが俺の唇にキスをした。
「それじゃ俺は溺れた炎珠に人工呼吸だな」
「えっ、それは刹なの? 那由太がやってくれるかと思った」
「あはは。刹は俺にも人工呼吸してくれるよね」
「今してやろうか」
「んぐあぁっ……! いだっ、いだいっ!」
がー、と口を大きく開けた刹が俺の唇に思い切りかぶり付いてきて、俺は爽やかな空と海の間で何とも情けない呻き声をあげる羽目になったのだった。
「そういえば幸次郎と涼真は、まだ浅瀬の方で遊んでるかな?」
振り返ればカラスのイケメンとそのご主人が、浜に近い場所で潜ったり顔を出したりしている姿が見える。
浅瀬の方まで小さい魚が来るとパラソルのおじさんが言っていたから、それを楽しんでいるのかもしれない。
「もしかしたら泳げねえんじゃねえの」
「でも楽しそうだよ。二人の世界に入ってるって感じ」
刹と炎珠さんも俺と同じ方向に顔を向けて、幸次郎さんと涼真さんの水遊びを見つめている。
「あの二人は涼真の方が強そうに見えて、実は涼真の方が幸次郎に惚れ込んでるからな。素直に言えねえだけで」
「そ、そうなの?」
「そうだよ~。それに『どっちがペットになるか揉めた』って言ってたけど、多分、涼真がペットになりたいけど正直に言えなくて揉めた形になったんだと思う」
やっぱり好きなんだな、と俺は目を細めて二人を見た。
「み、見ました! 魚いっぱいでめちゃくちゃ綺麗でしたっ!」
シュノーケルマスクを通して見た海の中は真っ青でどこまでも広がる、まるで竜宮城そのものだった。
遠い海の底にある岩場や海藻の周りを泳ぐ小さな魚の群れに、緩やかな動きで行ったり来たりを繰り返す個性的な顔立ちの大きな魚。
それらを上から見下ろす俺達は空を飛んでいる感覚で、ゆったりと泳ぎながら海底の空中散歩を楽しんだ。
「人に慣れてるのか、魚も割と近くまで来てくれるんだな」
刹も良い写真が撮れて満足そうだ。
「ロープ張ってあるから遊泳区域も分かりやすいし、那由太の浮き輪もあって安全だね」
「お、俺こんな沖で浮き輪なしなんて無理ですよ。二人ともよく平気ですね」
「普段はライフジャケット借りるんだけど、那由太がもし溺れて沈んじゃったら助けに行けなくなるからさ」
炎珠さんが俺の大きな浮き輪に捕まって柔らかく笑った。水も滴る良い男とはこのことだ。
「俺は泳げないけど……炎珠さんが溺れたら浮き輪持って助けに行きますよ!」
「ありがと那由太、大好き」
チュッと音を立てて、炎珠さんが俺の唇にキスをした。
「それじゃ俺は溺れた炎珠に人工呼吸だな」
「えっ、それは刹なの? 那由太がやってくれるかと思った」
「あはは。刹は俺にも人工呼吸してくれるよね」
「今してやろうか」
「んぐあぁっ……! いだっ、いだいっ!」
がー、と口を大きく開けた刹が俺の唇に思い切りかぶり付いてきて、俺は爽やかな空と海の間で何とも情けない呻き声をあげる羽目になったのだった。
「そういえば幸次郎と涼真は、まだ浅瀬の方で遊んでるかな?」
振り返ればカラスのイケメンとそのご主人が、浜に近い場所で潜ったり顔を出したりしている姿が見える。
浅瀬の方まで小さい魚が来るとパラソルのおじさんが言っていたから、それを楽しんでいるのかもしれない。
「もしかしたら泳げねえんじゃねえの」
「でも楽しそうだよ。二人の世界に入ってるって感じ」
刹と炎珠さんも俺と同じ方向に顔を向けて、幸次郎さんと涼真さんの水遊びを見つめている。
「あの二人は涼真の方が強そうに見えて、実は涼真の方が幸次郎に惚れ込んでるからな。素直に言えねえだけで」
「そ、そうなの?」
「そうだよ~。それに『どっちがペットになるか揉めた』って言ってたけど、多分、涼真がペットになりたいけど正直に言えなくて揉めた形になったんだと思う」
やっぱり好きなんだな、と俺は目を細めて二人を見た。
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