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第9話 ウサギとネコのお泊まり会

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 ともあれ、ここに来て初めての「ご主人不在」の夜。
 俺達は華深の希望通り出前を取った特上寿司で最高の夕食を済ませ、その後は俺と華深でミントのバブルバスを使った泡風呂を楽しんだ。
「那由太の髪って、細くて綺麗だね。すぐ乾く」
 華深にドライヤーをあててもらいながら、俺は俺で「今夜」を楽しんでいた。

 まだ二回しか会ったことのない友人と過ごす夜。それでも華深の遠慮のない性格のお陰で、何だかずっと昔からの友達みたいな気がしてくる。こうして友達と夜まで一緒にいられるなんて、まるで修学旅行みたいだ。

「あと、風呂で気付いた時は言わなかったけど……那由太、体にキスマークいっぱい付いてるね」
「えっ……」
「これは炎珠さんで、あれは刹っちゃんで……って考えてたら、何か危うくエロい気持ちになりかけたよ。俺も那由太にキスマーク付けちゃいたい」
「や、やめてよ華深っ。変なこと言うの禁止!」

 へへ、と笑って、華深が部屋着として着ていた自分のシャツを捲ってみせる。
「俺のお気に入りのキスマークはこれ。栄治さんが俺の左胸にいつも付けてくれるんだ」
「………」
「心臓に一番近いところ。いつも一緒って意味」
 本当に愛し合ってるんだなぁと、思わず感心してしまう。
「本当は俺も栄治さんと同じ入れ墨したいんだけど、栄治さんの墨は栄治さんにしか持てない意味があるから駄目だって。しょぼーん……」

 その「栄治さん」が風呂から出てリビングに入ってきて言った。
「何だ、あの泡風呂。体が凄げえ冷えて気持ち良かったぞ」
「わっ」
 上半身裸の幸嶋さん。その背中には観音様みたいな物凄い入れ墨が入っている。背中どころか腰に腕、そしてスエットに隠れて見えない尻の辺りまで広がっていそうだ。
「す、凄いですね背中……」
「ん。ああ、若い頃にちょっとな。それよりアイスがあるって?」
 確かにこのガチな入れ墨では、華深に同じものをという訳にはいかないだろう。それこそ本当に重要な意味がなければ入れられないタイプの入れ墨だ。日本ではまだまだマイナスなイメージが持たれる入れ墨やタトゥーだけど、ここまでがっつり入っているともはや芸術にしか見えない。

「栄治さん、俺もアイス食べたい!」
 ドライヤーを置いて立ち上がった華深が、キッチンカウンターの向こうへと駆けて行く。
「那由太も食べるでしょ、たくさんあるけどどれがいい?」
「チョコがいいです!」
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