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ぜんぶ初めての夜

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 入る前と比べたら、ただ強烈な異物感があるだけで耐えられないほど痛くはない。むしろ痛いのは、締め付けられている蒼汰の方ではないかと思う。
「──ん。んっ」
 昔見た漫画か何かで、初めてのセックスの痛みを和らげるために、男が女にキスをすると良い、というような知識が書いてあったのをふいに思い出した。
 だから俺は首を曲げて、覆い被さってくる蒼汰の頬に何度もキスをしたのだ。
 それだけのことなのに。
「ちょ、翼っ、お前……何するっ、……」
「えっ? あ、……」
 瞬間、俺の中で一際蒼汰のそれが質量を増した。
「あっ、あ……! あぁっ!」
 繋がった部分がぶつかり合う音と蒼汰の息遣い、それからベッドの軋む音が、俺の喘ぐ声に重なる。俺は激しく貫かれながらシーツを握りしめ、背中をくねらせて体中で蒼汰を感じていた。
   視界にも蒼汰しか映っていない。真剣な顔で俺を見つめる蒼汰の頬には汗が伝っている。何だか神々しさすら覚えるような光景だった。
「蒼汰……」
 涙目になって見上げると、蒼汰が柔らかく笑って俺の下半身に手を触れた。熱く屹立したそれが握られ、根元から揉みしだくように擦られる。
「あぁっ、……!」
 それから、体を倒した蒼汰の唇が俺の頬に押し付けられた。
「翼」
 幾度となく繰り返されるキス。その唇と囁きは優しいのに、俺を擦る手の動きは限りなく激しい。腰が痙攣して涙が溢れ、俺はしがみつくように蒼汰の背中をかき抱いた。
「も、う無理……そうた、っ……イき、そ……」
 ぞくぞくとした震えが足元から這い登り、腰から背中、後頭部へと突き抜けてゆく。
「俺も、そろそろ限界……」
「あ、あっ……イ、く……」
 蒼汰の手と唇に促されるまま、俺は一気に快楽を吐き出した。数瞬遅れて、蒼汰が荒い息と共にぐったりと俺の体に覆い被さってくる。
「あ──」
 心地好い虚脱感に包まれ、目の前が白く霞んでゆくようだ。俺は蒼汰を抱きしめたままで目を閉じ、ひと時の、だけどかけがえのない快楽の余韻に浸った。
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