上 下
35 / 59
ぜんぶ初めての夜

5

しおりを挟む
「……俺のこと、信じてくれてるってことか。抱かれてもいいくらいにはよ」
「んぅ、やっ、あ……!」
 俺のそれを握った蒼汰の手が、激しく前後する。卑猥な音をたてて擦られる。耳に感じる蒼汰の息遣いは荒く、声は低く、熱かった。
「本当にいいのかよ。前みたいに途中で止めてやれねえんだぜ」
「あぁ、っ……、蒼汰、やっ……!」
 俺を横に寝かせた状態で、蒼汰が背後から指を突き立ててくる。
「翼の狭いここに」
 そうしながら、もう片方の手は俺の猛ったそれを握ったままだ。
「俺の勃起したやつをさ、……何度も出したり突っ込んだりして、最後には翼の中で射精する」
「あ、う……。やめろ、そういうの卑怯だろっ……」
「そういうのって?」
「そ、そんな耳元で、エッチなこと言うなってば……!」
 蒼汰が噴き出し、俺を背後から強く抱きしめてきた。
「翼くん可愛い。家事もできるし、お嫁さんに貰ってやる」
「馬鹿なこと言うなって……」
 内心ドキドキしていたが、顔を見られていないから動揺もバレていないだろう。
 可愛いなんて言われたのは子供の頃以来だし、嫁に貰うなんて言われたのはもちろん初めてだ。
 だけどまだ、一番言いたいことと言ってもらいたいことは、互いの口から出ていない。
「蒼汰」
「うん?」
 ──好き、とか。付き合おう、とか。
 今どき馬鹿げているかもしれないが、実際、俺にとっては重要だったりする。何しろ初めての経験なのだ。男とセックスをするより以前に、こういう色恋そのものが。
 だから、この場限りでもいいから好きだと言ってもらいたかった。そんな漠然とした少女漫画のような恋愛に、ずっと憧れていた。
「蒼汰は、その……どういう奴がタイプなの」
「それ、今聞くか?」
「だ、だから。今まで蒼汰の相手をしてた男達は、俺と違ってこういうの慣れてるだろ。でも俺は初めてで、勝手も何も分からなくて、全部蒼汰に任せるしかないんだ」
「まあな」
「初めての男を相手にするのって、蒼汰的にどうなのかなって……。今まで相手してきた男とは、違う?」
「そりゃあ、違うよ」
 俺は体を反転させ、蒼汰に向き合って言った。
「やっぱ面倒臭いって思ってる? 往生際が悪いとか、前置きが長すぎるとか、思ってる?」
 不安で必死になってしまう俺を見て、蒼汰はしばし呆然としていた。だけどやがてその顔に堪え切れなくなった笑みが浮かび、ついに俺から視線を逸らして「ぶはっ」と噴き出す。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

前略、これから世界滅ぼします

キザキ ケイ
BL
不公平で不平等で、優しくない世界にはもううんざりだ。 俺、これから世界滅ぼします。   職場、上司、同僚、恋人、親、仕事と周囲を取り巻く環境に恵まれない下っ端魔術師ヴェナは、ついに病を得て余命宣告までされてしまう。 悪夢のような現実への恨みを晴らすべく、やけくそ気味に破壊を司る「闇の精霊」を呼び出し、世界を壊してもらおうと目論んだ。 召喚された精霊はとんでもない美丈夫。 人間そっくりの見た目で、しかもヴェナ好みの超美形がいつも近くにいる。 それだけでもドキドキしてしまうのに、なんと精霊は助力の対価にとんでもない要求をしてきたのだった────。

【完結】我が国はもうダメかもしれない。

みやこ嬢
BL
【2024年11月26日 完結、既婚子持ち国王総受BL】 ロトム王国の若き国王ジークヴァルトは死後女神アスティレイアから託宣を受ける。このままでは国が滅んでしまう、と。生き返るためには滅亡の原因を把握せねばならない。 幼馴染みの宰相、人見知り王宮医師、胡散臭い大司教、つらい過去持ち諜報部員、チャラい王宮警備隊員、幽閉中の従兄弟、死んだはずの隣国の王子などなど、その他多数の家臣から異様に慕われている事実に幽霊になってから気付いたジークヴァルトは滅亡回避ルートを求めて奔走する。 既婚子持ち国王総受けBLです。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

処理中です...