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日、月、暇なし

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 その後も食料品売り場で魚や惣菜を選んだり、お菓子コーナーに行く武虎を引き留めたり、迷子になりかけた武虎に人混みの中で大声で名前を叫ばれたり、始めの約束をしっかり覚えていた武虎にアイスを買ってやったり、色々あってやっと地元の駅まで戻って来ることができた。
「ああ、疲れた。本当に疲れた、荷物重いし……」
「つばさ平気か? 荷物、おれが持った方がいい?」
「大丈夫。武虎はミイラしっかり持っとけ」
 駅の駐輪場に停めておいた自転車に荷物を乗せ、ようやく安堵の息が洩れる。やはり駅まで自転車で来て良かった。
「おれも早く自転車ほしいな。つばさ、クリスマスには自転車買ってくれる?」
「そうだなぁ。武虎が良い子だったら、それよりもう少し早く買ってもらえるかもな」
「やった! やった、やった!」
「楽しみだな」
 この先もずっと、武虎には楽しいことが山ほど待っている。未来は希望に満ち溢れ、これから何でもできるし、何にでもなれる。少しだけ羨ましく思いながら、俺は自転車を押して家路を急いだ。
「あぁっ!」
 横断歩道を渡ったところで、突然、武虎が前方を指して大声を上げた。
「蒼汰先生だ!」
「えっ、嘘?」
 見ると、丁度コンビニから出てきたらしい蒼汰が灰皿の前で煙草を咥えている。猛然と走り出した武虎の後を慌てて追うと、向こうも俺達に気付いて片手を挙げた。
「先生!」
「おっ、武虎……どうした、お兄ちゃんとお出掛けか?」
「あの、おれ、あのな! ミイラの服買ってもらって、それで……!」
 興奮した武虎が袋を地面に置き、説明するより早いと中から取り出したミイラの衣装を蒼汰に見せる。
「おお、すごいかっこいいじゃん。それ着てくるの、楽しみにしてるからな」
「こ、こんにちは」
 心臓が破裂しそうなほど高鳴っているものの、俺は蒼汰に向かってできるだけ自然に笑ってみせた。赤くなった頬は今にも火を噴きそうだ。
 そんな俺とは反対に、蒼汰は相変わらずの人の良さそうな笑みを浮かべてこちらを見ている。
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