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亜利馬、恋愛について少し考える
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「亜利馬!」
その日の仕事を終えてビルを出ると、大雅と竜介がちょうど目の前のコンビニから出てきた所に遭遇した。
「お疲れ様です、竜介さん、大雅。今日は二人で仕事だったんでしたっけ?」
「いや、今日は休みだ。大雅の寮に行く予定があって、たまたまコンビニに出てきた所だよ」
「仲良しだなぁ、ほんと」
大雅はそっぽを向いて照れているけど、竜介は満面の笑みを浮かべている。俺の冷やかしの意味に気付いていないからだ。
「何だったら、亜利馬も来るか? 別に何をするわけでもないが、人数は多い方が楽しいだろう」
「いえいえ、俺はいいですよ。つい最近までずっとみんなで竜介さんの家に居候させてもらっちゃってたし、たまには大雅と二人で、……あ、えっと……違くて、たまには後輩と二人で話を聞いてあげてくださいと思って……」
「そうか。でも同じマンションだからな、いつでも来てくれ。獅琉達を誘ってもいいし」
「はい!」
と言ったものの、とても行けないなぁと思う。最近は大雅も竜介と二人になれる時が少なかったから、せっかくの機会を邪魔したら悪い。
「俺、コンビニ寄ったら買い物して帰るんで。気にせず先に帰ってくださいね」
「そうか? それじゃあ、気を付けて帰れよ」
「……またね、亜利馬」
「じゃあね大雅。竜介さんも。また仕事で!」
まだ明るい陽の下を、踵を返して歩き出す二人。少しだけ大雅が俺を振り返り、口の動きだけで「ありがと」と言って手を振ってくれた。
……何だか、心がほっこりする。俺まで幸せな気分をもらったみたいだ。
*
「はあぁ、恋人かぁ……!」
「恋人っ? 亜利馬にっ?」
自室のドアを開けながら溜息交じりに大きな声を出したら、中から獅琉が飛び出して来た。
「えっ、し、獅琉さんっ! 何でここに! か、鍵は……」
「鍵が開けっ放しだったよ。俺が留守番してあげた。夕飯も作っておいたよ!」
「うわ、またやっちゃった。俺よく鍵忘れるんです、すみません……ごはんもありがとうございます!」
エプロンの似合う獅琉を見ていると、先日の「家族劇」を思い出して赤くなってしまう。
「わ、野菜炒め美味しそう。涎出そうになる……!」
「ピーマンの肉詰めもあるよ。餃子と、ご飯も買ってきたし」
「獅琉さんなら、どこにお嫁に行っても上手くいきそうですねぇ」
「お嫁? 企画の話?」
「いやいや、実際の話です」
よく分かっていない様子の獅琉が、首を傾げて「そうかな?」と笑った。優しいしハンサムだし料理上手の床上手で、少しワガママな所も可愛いし……こんな人が、どういう男を好きになるのか凄く気になる。
獅琉の場合はタチでもウケでも相手が想像できてしまうから、また凄い。
そんなことを考えていたら、玄関で勢い良くドアが開いた。
「帰ったぞー、飯ー!」
「う、潤歩さんっ?」
また鍵を閉め忘れていたのか、潤歩がずかずかと上がり込んでくる。
「潤歩さんの部屋は三階でしょ。ここじゃないですよ」
「美味い飯の匂いを嗅ぎつけてきたんだ。食わせろ!」
「えー、潤歩さん大食いだからな……」
「まだいっぱい作れるよ。潤歩も食べて行きなよ。って、ここ亜利馬の部屋だけど」
「おう、大雅も呼ぶか?」
「ダメダメ! ダメです、今日は竜介さんと一緒ですから」
「あっそ、よろしくやってんのかあのバカップル」
出来上がった皿をローテーブルに並べて、三人で狭い食卓を囲む。
「そろそろダイニングテーブル買えや、食い辛い」
「文句が多いな潤歩さんは……」
「あはは。いっぱい食べてよ、二人とも」
「いただきます!」
食感最高の野菜炒めに白飯がどんどん進む。羽根つき餃子もパリパリで美味しいし、ピーマンも中の肉も大好きだ。
「はあ、美味しい。毎日獅琉さんの手料理食べられるなら、お嫁さんに欲しいです」
「さっきも何か言ってたね、亜利馬。何かあったの?」
「うーん、特に悩んでるわけじゃないんですけど……今日の動画で雄二さんと庵治さんのカップルについてをテーマに撮ったんです。それで何か、恋人がいるのっていいなぁ……って思ったんですけど、なかなか作り辛いだろうなってのも同時に思ってて」
「………」
獅琉と潤歩が目を丸くさせている。
「あ、別に今すぐどうこうとか、好きな人がいるんじゃないですよ? ていうか恋愛とかあんまり経験ないから、どういうのかもよく分かってないし」
「はぁん。お前、庵治と雄二にあてられたな」
「あの二人を基準に考えたら駄目だよ。社内で一番ラブラブなんだから」
「そ、そうなんですか?」
その日の仕事を終えてビルを出ると、大雅と竜介がちょうど目の前のコンビニから出てきた所に遭遇した。
「お疲れ様です、竜介さん、大雅。今日は二人で仕事だったんでしたっけ?」
「いや、今日は休みだ。大雅の寮に行く予定があって、たまたまコンビニに出てきた所だよ」
「仲良しだなぁ、ほんと」
大雅はそっぽを向いて照れているけど、竜介は満面の笑みを浮かべている。俺の冷やかしの意味に気付いていないからだ。
「何だったら、亜利馬も来るか? 別に何をするわけでもないが、人数は多い方が楽しいだろう」
「いえいえ、俺はいいですよ。つい最近までずっとみんなで竜介さんの家に居候させてもらっちゃってたし、たまには大雅と二人で、……あ、えっと……違くて、たまには後輩と二人で話を聞いてあげてくださいと思って……」
「そうか。でも同じマンションだからな、いつでも来てくれ。獅琉達を誘ってもいいし」
「はい!」
と言ったものの、とても行けないなぁと思う。最近は大雅も竜介と二人になれる時が少なかったから、せっかくの機会を邪魔したら悪い。
「俺、コンビニ寄ったら買い物して帰るんで。気にせず先に帰ってくださいね」
「そうか? それじゃあ、気を付けて帰れよ」
「……またね、亜利馬」
「じゃあね大雅。竜介さんも。また仕事で!」
まだ明るい陽の下を、踵を返して歩き出す二人。少しだけ大雅が俺を振り返り、口の動きだけで「ありがと」と言って手を振ってくれた。
……何だか、心がほっこりする。俺まで幸せな気分をもらったみたいだ。
*
「はあぁ、恋人かぁ……!」
「恋人っ? 亜利馬にっ?」
自室のドアを開けながら溜息交じりに大きな声を出したら、中から獅琉が飛び出して来た。
「えっ、し、獅琉さんっ! 何でここに! か、鍵は……」
「鍵が開けっ放しだったよ。俺が留守番してあげた。夕飯も作っておいたよ!」
「うわ、またやっちゃった。俺よく鍵忘れるんです、すみません……ごはんもありがとうございます!」
エプロンの似合う獅琉を見ていると、先日の「家族劇」を思い出して赤くなってしまう。
「わ、野菜炒め美味しそう。涎出そうになる……!」
「ピーマンの肉詰めもあるよ。餃子と、ご飯も買ってきたし」
「獅琉さんなら、どこにお嫁に行っても上手くいきそうですねぇ」
「お嫁? 企画の話?」
「いやいや、実際の話です」
よく分かっていない様子の獅琉が、首を傾げて「そうかな?」と笑った。優しいしハンサムだし料理上手の床上手で、少しワガママな所も可愛いし……こんな人が、どういう男を好きになるのか凄く気になる。
獅琉の場合はタチでもウケでも相手が想像できてしまうから、また凄い。
そんなことを考えていたら、玄関で勢い良くドアが開いた。
「帰ったぞー、飯ー!」
「う、潤歩さんっ?」
また鍵を閉め忘れていたのか、潤歩がずかずかと上がり込んでくる。
「潤歩さんの部屋は三階でしょ。ここじゃないですよ」
「美味い飯の匂いを嗅ぎつけてきたんだ。食わせろ!」
「えー、潤歩さん大食いだからな……」
「まだいっぱい作れるよ。潤歩も食べて行きなよ。って、ここ亜利馬の部屋だけど」
「おう、大雅も呼ぶか?」
「ダメダメ! ダメです、今日は竜介さんと一緒ですから」
「あっそ、よろしくやってんのかあのバカップル」
出来上がった皿をローテーブルに並べて、三人で狭い食卓を囲む。
「そろそろダイニングテーブル買えや、食い辛い」
「文句が多いな潤歩さんは……」
「あはは。いっぱい食べてよ、二人とも」
「いただきます!」
食感最高の野菜炒めに白飯がどんどん進む。羽根つき餃子もパリパリで美味しいし、ピーマンも中の肉も大好きだ。
「はあ、美味しい。毎日獅琉さんの手料理食べられるなら、お嫁さんに欲しいです」
「さっきも何か言ってたね、亜利馬。何かあったの?」
「うーん、特に悩んでるわけじゃないんですけど……今日の動画で雄二さんと庵治さんのカップルについてをテーマに撮ったんです。それで何か、恋人がいるのっていいなぁ……って思ったんですけど、なかなか作り辛いだろうなってのも同時に思ってて」
「………」
獅琉と潤歩が目を丸くさせている。
「あ、別に今すぐどうこうとか、好きな人がいるんじゃないですよ? ていうか恋愛とかあんまり経験ないから、どういうのかもよく分かってないし」
「はぁん。お前、庵治と雄二にあてられたな」
「あの二人を基準に考えたら駄目だよ。社内で一番ラブラブなんだから」
「そ、そうなんですか?」
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