60 / 80
亜利馬、昇った先はセクハラ天国?
8
しおりを挟む*
「うんうん、昨日のは良い感じだったよね! もう少しパパママの呼び方も徹底すれば、良い企画になるかも」
翌朝になって、あちこち痛む体を引きずりながらリビングへ行くと、テーブルの前に座った獅琉がパソコンのキーを叩いていた。
「おはようございます……何してるんですか?」
「おはよ亜利馬。忘れないうちに昨日の一部始終を文字にしておこうと思ってさ。そのまま山野さんにメールしないと」
「えっ、昨日のアレを……? や、やですよそんなの恥ずかしいっ」
「じゃないと、何のために練習したか分かんないじゃん。ちゃんと買い物行った時のことからレポートにしないとね」
そうだ、と獅琉が手を叩く。
「昨日は竜介の衣装でやったけど、今度は俺が買ったワンピース着てやらないと。二パターンのデータを取って、どっちがいいか決めてもらおう!」
「嫌ですってばあぁ!」
……そうして俺は心に決めた。もう二度と家族モノをやりたいなんて言わないと。
「亜利馬!」
翌日、久し振りに動画の生配信に出演することが決まって台本を読んでいたら、山野さんに声をかけられた。場所はビル八階の社員食堂だ。モデルはあまり利用しない場所だけど、最近はここのプリンが美味しくてこれだけを食べに通っている。
「山野さん、どうしたんですか?」
「獅琉からメールを受け取ったぞ。画像も添付されていたが……」
「げっ、あ、あれ見たんですか? 体液で妖怪みたいになってるやつ」
「ああ、確かに……あの姿は酷いモンだと思ったが……。なかなか見応えのある企画だと思ったんだ」
「そ、うですか……?」
山野さんが俺の隣に椅子を引き、腰を下ろす。それから眼鏡を外してレンズ部分を拭き、もう一度かけ直して言った。
「あんな無残な姿にされたということは、相当なことをされたんだろう」
「えっ、ま、まあ……はい」
「それでもお前はやり遂げた。鼻血一つ垂らさなかったそうじゃないか? 成長したな」
……あ、そういえば。
少し前までは、ちょっとのことですぐ鼻血を出していた。慣れてきたとはいえ、こないだのアレは俺史上最強のプレイだったはずなのに。鼻血や失神をしなかったどころか、二度の射精をした後ですぐにみんなを追いかけ回すほどの余裕もあった。
「亜利馬もだいぶ耐性がついてきたか。そろそろもう一段階レベルを上げてもいいかもしれないな」
「もう一段階って……?」
山野さんが不敵に笑い、スマホ画面を見せながら説明した。
「見てみろ。AVの企画はただセックスを魅せるだけではないんだ。例えば連続二十人フェラとか、公園で十人と野外プレイとか、少し難解なプレイも……」
「むっ、無理ですそんなの! 死んじゃいます!」
「そうか? 残念だな……」
冗談ではなく本当に肩を落とす山野さん。俺は台本を閉じてプリンを食べながら、「俺をキワモノ扱いしないでください」と山野さんをジト目で睨んだ。
「それに……俺が鼻血出さなかったのって、多分、ブレイズのメンバーが相手だったからだと思います。心から信頼できる先輩達だから、……どんな凄いプレイでも……安心して挑めたっていうか……」
「亜利馬……」
「だ、だからもし俺を信用して次からハードな企画やらせても、鼻血出さない保証はできませんよ」
「自慢げに言うことか」
「……あは、確かに!」
でも実際、そうだ。ブレイズのメンバーは今の俺にとって何よりも大切な存在。それこそ家族同然の存在だ。俺を支え、俺を愛し、俺を大事にしてくれている四人。俺だけじゃない。みんながみんな、お互いをそう思い合っている。
それって血の繋がりはなくても……もう、家族って呼んでも良いのかも。
「ま、家族はセックスしませんけど……」
「何か言ったか?」
「いえいえ、別に。社食のプリン美味しいんですよ、山野さんもどうですか?」
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
────妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの高校一年生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の主人公への好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる