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亜利馬、昇った先はセクハラ天国?
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しおりを挟む……気が重い。ここから出たくない。
俺は竜介の家の広い広い脱衣所で立ち尽くし、巨大な姿見に自分の姿を写していた。
猫の耳が生えたカチューシャ。乳首と股間しか隠れていないぴちぴちのマイクロビキニ、尻尾付き。そして膝までのソックス──全部、トラ柄。テレビで見たバブル時代のお姉さん達だって、こんな珍妙な衣装は着ないだろう。
我ながら顔が死んでいる。これから俺は一晩近くかけて、四人の「家族」にサービスしなければならない。なまじ悪意のないプレゼントを沢山もらってしまったから断わり辛いし、俺自身、みんなのお陰で今日を楽しめたことは事実なのだ。
「……だけど!」
獅琉が買ったピンクのワンピースもアレだけど、この衣装も相当恥ずかしい。獅琉と竜介が「着せるのはコレだ!」と言い合うのを見ていられなくて、くじ引きでビキニに決まったのだけど……やっぱり布の面積が多い分、ワンピースの方が良かったかもしれない。
「亜利馬、着れた?」
「あ、……は、はい。もうちょっと待っててください!」
これだけ広い家だからどこか逃げられる小窓があるのではと思ったが、その考えはすぐに打ち消されることとなる。だってこんな格好で外に出られるわけがない。服は没収されて、裸で脱衣所に放り込まれてしまったのだし。
「もう、腹をくくるしかないか……」
呟いて、俺は脱衣所のドアを開けた。
「お待たせ……しました」
竜介の寝室で待っていた四人が、変態的な格好をした俺を見てパッと顔を輝かせる。
「可愛い! 亜利馬、すっごく似合ってるよ!」
「う、嘘つかないでくださいっ」
「嘘じゃないさ。俺も自分で選んでおいてなんだが、こんなに似合うと思っていなかった。亜利馬、完璧だぞ!」
獅琉と竜介にべた褒めされ、俺は頭をかいて俯いた。例え似合いたくない衣装でも、それを褒められると悪い気がしない。
床にヤンキー座りをしていた潤歩が、まじまじと俺の体を見上げて不敵に笑う。
「いいんじゃねえの。食い甲斐ありそうだし」
「亜利馬、猫みたいで可愛い」
大雅が尻尾を握って、毛質の良さを楽しんでいる。
喜んで頂けて何より。もう着替えてもいいだろうか。駄目なのは分かってるけど。
「よし、それじゃあまずは一家の大黒柱からだな!」
竜介が俺を横抱きにしてベッドへ向かう。
「えー、そこは夫婦仲良く分け合おうよ!」
「はっはっは、それもそうか。よし、来い獅琉」
「やった!」
「……もう好きにしてください」
シロとクロはリビングのソファで夢の中だ。同じ時間に主人がこんなことをしていると知ったら、二匹はどう思うだろう。
「なあ、お前らが終わるまで俺と大雅はオアズケか?」
口を尖らせて、フットボードの向こうから顔を覗かせている潤歩と大雅。
「見ていてもいいし、休憩していてもいいぞ。タイミングを狙って混ざってもいいしな」
「でもあくまでも企画のためだから、『もっとこうした方がいい』とかのアドバイスはどんどん言ってね!」
どうするよ大雅、と潤歩が問いかける。
「竜介にヤられる亜利馬が見たいから、取り敢えず見学する」
「んじゃ俺も」
肌触りの良い清潔なシーツに身を横たえた俺は、何だかもう心底から開き直っていた。恥ずかしいのなんて今に始まったことじゃないし、四人が喜んでくれるならそれに越したことはないし、気持ち良いのだって嫌いじゃないし。
それに、相手が知らない人達ならいざ知らず、この四人は俺の大事な仲間だ。無条件で信頼できる彼らだから、俺が本気で嫌がるようなことは絶対にしないと安心できる。痛い思いも辛い思いもしない。それこそ家族のように大好きな人達なんだから──
「亜利馬」
寝転がった俺のヘソから上、竜介の指先が滑るように直線を描く。そう言えば竜介に触れられるのって久し振りかもしれない……。撮影ではまだ一度しか絡んでないし、普段は大雅の物という認識がある上に本人もエロいタイプじゃないから、「そういうこと」には絶対ならないし。
ブレイズでは最年長で、ガチムチ系からオネエ系まで多くの人に愛されている竜介。そのテクニックは俺も知っている。だって竜介は、俺に初めて「尻だけでイく」感覚を教えてくれた男なのだ。
「亜利馬の大きい目、凄い可愛い。舐めて愛撫したい」
「獅琉さん……怖い」
獅琉とは何度か絡んだことがあるけれど、その度にこの人は本当に綺麗なんだなと思っていた。セックスを楽しんでやっていると言う割には仕事もプライベートもきっちりしていて真面目だし、場合によってはタチウケどころかSとMどちらにもなれるというのはただただ尊敬だ。
こんな風に綺麗な見た目の男にはなれないけれど、中身の方は見習いたい部分が沢山ある。俺達のリーダー。
「……ん?」
ひょっとしてそんな竜介と獅琉にサンドイッチされている今の俺は、めちゃくちゃ贅沢なんじゃないだろうかっ?
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