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狗嵜ネムリ

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ブレイズ&フリーズ、真夏の大激闘祭

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 七月・最終日。
 炎天下、真っ白の砂浜、真っ青な海。カニ。ヤドカリ。入道雲。
「海だあぁー!」
 俺と潤歩と竜介は水着になるなり波打ち際へ駆けて行き、思い切りその中へと飛び込んだ。
「やっべ! 冷てぇ! やっべぇ!」
「最高のロケーションだな!」
 潤歩も竜介もハイテンションで、互いに海水をかけあったり大声で飛び跳ねたり、あげく俺は潤歩にブレーンバスターをかけられ、だいぶ海水を飲みこんでしまった。
「ちょっ、ちょっと! 気持ちは分かるけど落ち着いてくださいっ!」
「るっせえ! 野暮なこと言う奴はフルチンの刑だっ!」
「や、やめてえぇっ!」

 そんな俺達をパラソルの下から見ているのは、獅琉と大雅。二人ともビーチチェアで寛ぎながら、冷たいジュースを飲んでいる。
 待ちに待った、海での野外撮影。場所は車で約二時間、インヘルの社員さんが所有しているプライベートビーチだ。そこまで広くはないもののそんなことは関係なくて、東京では見られない真っ青な海が俺達の気持ちを解放的にさせていた。
「あまりはしゃいで怪我をするなよ!」
 普段はあまり見られない、Tシャツにハーフパンツという私服姿の山野さん。眼鏡のレンズを拭きながら「潮でべたつく」とぶつぶつ文句を言っている。
 撮影班の人達がワゴンから機材を下ろしている間、俺はまたもや潤歩に投げ飛ばされる羽目になった。
「逃げんじゃねえ亜利馬っ、待てコラ!」
「ひ、ひいぃっ……助けて、竜介さんっ!」
「悪い狼は俺が成敗だな!」
「うおっ──」
 逆に潤歩が竜介に担がれ、沖の方へと投げ飛ばされた。が、それでも潤歩はへっちゃらで、顔だけ海面に出して大笑いしている。

「あぁもう……撮影前に疲れた」
 びしょ濡れで浜に戻ると、獅琉がサイダーの瓶を俺に差し出してくれた。
「お疲れ、亜利馬。楽しそうで面白かったよ」
「獅琉さんも大雅も、日差し大丈夫ですか? 日焼け止め塗りましょうか?」
「来る前に塗ってきたから大丈夫だよ、ありがとう」
「俺も竜介が塗ってくれた……」
「あんまり無理しないでくださいね。日焼けだけじゃなくて、熱中症とかもあるし……」
 と、言いつつ。ビーチチェアに伸びる獅琉の綺麗な脚と、均整の取れた上半身を凝視してしまう俺。日焼け止めの話は決してやましい気持ちから言ったわけではないけれど、ちょっとだけ……触ってみたかったなと思う。この辺りは俺も男なのだ。

「大雅は? 竜介さんと遊ばないの?」
「……後で遊ぶ。どうせ撮影で疲れるから」
「……う、うん」
 そうなのだ。
 今日は、初めての海での撮影──それに加えて、初めてのフリーズとのコラボ撮影。
 フリーズのメンバーはまだ来ていないけれど、もう絡む相手も決まっている。

 獅琉と夕兎。これはリーダー同士だし、前に秋常から聞いていたために俺も知っていた。ちなみにどちらもタチウケ両方撮るらしく、夕兎はこれが撮影で初めてのバックウケとなるらしい。──もちろん、プライベートのことは知らないけれど。

 竜介と大雅と怜王。これは実をいうと今作一番楽しみというか、屈強な男二人とがっつり絡み合う美青年IN THE ビーチという、贅沢三昧なVになりそうだ。

 そして、潤歩と俺と秋常。潤歩と秋常がタチ役で、俺はお決まりのウケ役。例の倉庫での件もあって、この面子が決まってから今日まで俺は毎日悩んでいた。潤歩が秋常に何かしでかすのではとか、秋常が暴走するのではとか。最悪、喧嘩になってしまうんじゃないか、とか。

 ……せっかくのコラボ第一弾なのだから、良い思い出になればいいけど。
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