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亜利馬、VSフリーズの「リーダー」
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「………」
そんな俺達を見て、夕兎だけが少し申し訳なさそうな目をしていた。──やっぱり夕兎は無理して「悪役キャラ」を演じている。心根は悪い奴じゃないのだ。
「仲良いんですね、皆さん」
秋常がニコニコ笑って手を合わせ、「ね?」と左右の夕兎と怜王の顔を見た。
「泣かせるつもりはなかったんです。ごめんなさい、亜利馬くん」
「……いえ、俺は……」
「DVDを送ったのは純粋に、皆さんに俺達のリーダーのことを知ってもらいたかっただけなんです。ウチの夕兎はちょっと暴走しちゃうところがあるので、結果ご迷惑になってしまいましたけど……」
そこでちらりと、秋常が夕兎に視線を向けた。
「後でお仕置きだね、夕兎」
「っ……」
自分よりも背が高い秋常に上から見下ろされ、夕兎はあうあうと固まっている。
俺はおぼつかない足取りで三人の方へ歩み寄り、恐る恐る秋常に言った。
「あの、……夕兎さんに悪気がないのは分かってるので、俺は怒ってないですよ。迷惑とも思ってませんから、許してあげてください」
「ブレイズの亜利馬……」
夕兎が見開いた目で俺を見つめる。その目を見つめ返し、俺は口元だけで笑って頷いた。
「なので改めてよろしくお願いします、フリーズの夕兎さん」
「………」
俺が差し出した右手を、頬を赤くさせた夕兎がぎこちなく握る。それをつまらなそうに眺めているのは秋常と怜王だった。
「秋常さんと怜王さんも、よろしくお願いします」
「……どうする? 怜王」
「俺には関係ない、好きにしろ」
そこで初めて怜王の声を聞いたというのに、実に素っ気ない態度を取られてしまった。無口な人だとは思っていたけど、どうやら彼は見たままの性格らしい。
「てめぇ、……」
怜王の態度を受けて身を乗り出した潤歩の肩を、獅琉が無言で引いている。
「好きにしていいなら、握手してください」
俺は半ば強引に怜王と手を繋ぎ、放されないようぎゅっと握りしめた。もう片方の手で秋常の手を取り、同じように強く握る。
「………」
「そっからどうすんだ、亜利馬」
三人でサークルを作った状態のままどうしようと考えている俺に、呆れたような声で潤歩が言った。
「えっと、これで俺達も仲間です! ライバルなのは企画の中だけ。俺達は仲間です!」
「………」
「……教祖様みたいだね」
しばしの沈黙の後で「ぷっ」と秋常が噴き出して、俺の背後の四人にも朗らかな笑顔を向け、言った。
「お騒がせしてすみません。亜利馬くんの熱意は充分伝わりましたから、これからは俺達も仲良くやっていきましょう。……怜王も、夕兎も、それでいいよね?」
「あ、ああ」
「………」
頷いた夕兎とは反対に、怜王はフンと鼻を鳴らして秋常から顔を逸らした。
「亜利馬くん」
「は、はい」
秋常が俺に耳打ちする。
「その子供みたいな素直さを、撮影でめちゃくちゃに出来る日を楽しみにしてますよ」
「っ……!」
「これからよろしくね」
そして、握っていた俺の手の甲に秋常が唇を押し付けた。
「あの秋常って奴が裏のリーダーなんじゃねえの。へらへらしてっけど、すっげえ腹黒さが滲み出てる」
会議室を出て廊下を歩きながら、まだ納得していない様子の潤歩が言った。
「確かにちょっと裏のありそうな人だよね。夕兎くんは言いなりって感じ」
獅琉もそれに同意している。竜介も頷いているし、俺もそうだと思った。あの朗らかな笑顔の裏に隠された本性がどれほどのものかは分からないけれど、何となくまだ「仲間」にはなれていないような気がする。
……秋常に口付けられた手の甲が、じわりと熱くなった。
そんな俺達を見て、夕兎だけが少し申し訳なさそうな目をしていた。──やっぱり夕兎は無理して「悪役キャラ」を演じている。心根は悪い奴じゃないのだ。
「仲良いんですね、皆さん」
秋常がニコニコ笑って手を合わせ、「ね?」と左右の夕兎と怜王の顔を見た。
「泣かせるつもりはなかったんです。ごめんなさい、亜利馬くん」
「……いえ、俺は……」
「DVDを送ったのは純粋に、皆さんに俺達のリーダーのことを知ってもらいたかっただけなんです。ウチの夕兎はちょっと暴走しちゃうところがあるので、結果ご迷惑になってしまいましたけど……」
そこでちらりと、秋常が夕兎に視線を向けた。
「後でお仕置きだね、夕兎」
「っ……」
自分よりも背が高い秋常に上から見下ろされ、夕兎はあうあうと固まっている。
俺はおぼつかない足取りで三人の方へ歩み寄り、恐る恐る秋常に言った。
「あの、……夕兎さんに悪気がないのは分かってるので、俺は怒ってないですよ。迷惑とも思ってませんから、許してあげてください」
「ブレイズの亜利馬……」
夕兎が見開いた目で俺を見つめる。その目を見つめ返し、俺は口元だけで笑って頷いた。
「なので改めてよろしくお願いします、フリーズの夕兎さん」
「………」
俺が差し出した右手を、頬を赤くさせた夕兎がぎこちなく握る。それをつまらなそうに眺めているのは秋常と怜王だった。
「秋常さんと怜王さんも、よろしくお願いします」
「……どうする? 怜王」
「俺には関係ない、好きにしろ」
そこで初めて怜王の声を聞いたというのに、実に素っ気ない態度を取られてしまった。無口な人だとは思っていたけど、どうやら彼は見たままの性格らしい。
「てめぇ、……」
怜王の態度を受けて身を乗り出した潤歩の肩を、獅琉が無言で引いている。
「好きにしていいなら、握手してください」
俺は半ば強引に怜王と手を繋ぎ、放されないようぎゅっと握りしめた。もう片方の手で秋常の手を取り、同じように強く握る。
「………」
「そっからどうすんだ、亜利馬」
三人でサークルを作った状態のままどうしようと考えている俺に、呆れたような声で潤歩が言った。
「えっと、これで俺達も仲間です! ライバルなのは企画の中だけ。俺達は仲間です!」
「………」
「……教祖様みたいだね」
しばしの沈黙の後で「ぷっ」と秋常が噴き出して、俺の背後の四人にも朗らかな笑顔を向け、言った。
「お騒がせしてすみません。亜利馬くんの熱意は充分伝わりましたから、これからは俺達も仲良くやっていきましょう。……怜王も、夕兎も、それでいいよね?」
「あ、ああ」
「………」
頷いた夕兎とは反対に、怜王はフンと鼻を鳴らして秋常から顔を逸らした。
「亜利馬くん」
「は、はい」
秋常が俺に耳打ちする。
「その子供みたいな素直さを、撮影でめちゃくちゃに出来る日を楽しみにしてますよ」
「っ……!」
「これからよろしくね」
そして、握っていた俺の手の甲に秋常が唇を押し付けた。
「あの秋常って奴が裏のリーダーなんじゃねえの。へらへらしてっけど、すっげえ腹黒さが滲み出てる」
会議室を出て廊下を歩きながら、まだ納得していない様子の潤歩が言った。
「確かにちょっと裏のありそうな人だよね。夕兎くんは言いなりって感じ」
獅琉もそれに同意している。竜介も頷いているし、俺もそうだと思った。あの朗らかな笑顔の裏に隠された本性がどれほどのものかは分からないけれど、何となくまだ「仲間」にはなれていないような気がする。
……秋常に口付けられた手の甲が、じわりと熱くなった。
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