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亜利馬、18歳のお仕事
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しおりを挟む「亜利馬くんお疲れ様。今回も凄く良かったよ!」
「本当ですか? 前半ちょっと焦っちゃって、どうしようかと思ったんですけど……」
「相手のモデルさん、初めてだったんだってね。緊張してたから勃ちにくかったのかもね」
撮影が終わり、シャワーを浴びた後。ヘアメイク担当の雄二さんにドライヤーをあててもらいながら、俺は自分が初めての時の撮影を思い返した。
殆どの人がそうであるように、俺もガチガチに緊張していた。本番直前まで吐きそうなほど悩んで怯えて、半ば自棄になって下着を下ろした──あの日。あれからまだ半年も経っていないのに、何だか遠い過去のことのようだ。
きっかけは今から約四か月前。渋谷でスカウトを受けて入った世界は想像していた芸能界でなく、まさかのゲイ向けAV業界だった。それを知った時にはもう契約書にサインをしていて、先輩まで紹介され、逃げにくい状況だったこともあるけれど──俺自身AVというものに単純に興味を持って、取り敢えずという軽い気持ちで始めることになったのだった。
男はおろか女の子とも付き合ったことのない俺にとって、AVの撮影というものは本当に大変だった。一本撮るごとにNGを出したり鼻血を出したりで、撮影の中断も多く、恥ずかしがったり悔しがったり毎日がドタバタしていた。
そんな俺がこれまで頑張れたのは全て、周りの人達のお陰だ。先輩やマネージャーの山野さんはもちろん、二階堂監督を始め一度の撮影に関わる人達、メーカーの動画班、宣伝部、写真撮影時のフォトグラファーさん、その他スタッフ、そしてファンの人達からのコメント。
それが良いのか悪いのかは分からないけど、俺は今現在「AVモデル」という仕事を楽しんでやっている。セックスが得意とか好きとかではない。ただ平凡な人生を送ってきた俺にとって、形はどうあれ「認められる」ということ、自分の作品が誰かの需要を満たしているということを思うと、何だか嬉しくなるのだ。
もちろんベテラン勢の先輩達と比べたら売上げも人気もまだまだ敵わない……というか足元にも及ばないけれど、俺は俺なりに少しずつ前へ進んでいる。と、思う。
カメラの前で裸になり、その時々で色んなキャラクターを演じる。映像の中でも俺は「亜利馬」と呼ばれているけれど、その中身は「俺」じゃない。
企画によってはSになったりMになったりもするし、恥ずかしい思いをすることもあればノリノリで乗っかって行くこともある。俺はまだDVDの本数も少ないけれど、人の性癖というものは数限りなくあるわけだから、これから何だって新しいことに挑戦して行かなければならない。
憧れていたドラマや映画ではないものの、カメラの前で演技をするというのはやっぱり楽しかった。台詞も前戯も本番も射精のタイミングも全て流れが決まっていて、その中でどう自分を「魅せるか」──AVというものは、ただカメラの前でセックスをしていれば良いというものではないのだ。
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