136 / 157
第20話 しっかり玉雪と余裕の平日
3
しおりを挟む
それからああだこうだと長いこと喋って、時刻が昼の十二時を過ぎた頃──
「おい、生きてるか」
「はひ……」
俺は半開きになった目を頼寿に向け、口を開けてふらふらと頭を揺らしていた。かろうじて目が開いているだけで、もう今にも寝てしまいそうだ。柄にもなく早起きをして、慣れない会議をして、脳が疲れてしまったのか……とにかく眠くて仕方がない。
「すげえツラになってんぞ」
「わかってる……。でもへいき、つづけて……」
へろへろ声で何とか返事をすると、頼寿が露骨に呆れた顔をしてソファから腰を上げた。
「一服するか。昼飯食ったらまた再開だ」
「た、たすかる……」
そのままソファに体を倒し、横になって目を閉じる。心地好い陽射しに包まれて幸せいっぱいの昼寝タイム──と思ったその時。
「あら、坊ちゃんはおねむですか。早いですね」
「早起きに慣れてねえんだ。腹いっぱい朝飯食って少し喋ったらすぐに眠くなる」
「小さい子供みたいですねぇ」
「実際、小さい子供だ」
聞き捨てならない会話が聞こえるが、それさえも少しずつ遠くなって、聞こえなくなって……
「玉雪」
「──うわあぁっ!」
突然体が揺さぶられて、俺はソファから飛び起きた。せっかく良い気持ちで寝ていたのに、見上げれば頼寿がため息をついて俺を見ている。
「何だよ、昼飯?」
「もう四時だぞ。何時間寝てんだ」
「うそっ!」
見れば窓の外は陽が翳り、部屋の中は電気が点いていた。
「か、快晴は?」
「晩飯の買い物に出ている」
「何で起こしてくれなかったんだよ!」
「何度も起こしたが起きなかっただけだ」
最悪だ。一日の一番無駄な過ごし方をしてしまった。しっかりすると誓ったのに、このザマだ。
昼飯を食べていないから腹が減っている。でも今何か食べたら、今度は夕飯が入らなくなる。そうなると夜中の変な時間に腹が減って眠れなくなって──悪循環の出来上がりだ。
「夕飯まであと二時間、絶対我慢する。ゲームして気を紛らせておけば何とか……」
「仕事の話はどうすんだ」
「ごめん、それがあるんだった。ええと、それじゃ夕飯の後でお風呂入って、アイス食べ終わったら再開ってことで……。ちゃんと寝る時間まで頑張るから」
俺がそう言うと、頼寿が腕組みをして「ほぉん」と意地悪な声を出した。
「そんじゃ今夜は、セックスはナシってことか」
「えっ? な、何だよ急に!」
「しっかりした男になるんだろ。それなら自分の都合だけでなく、相手への思いやりを持つんだな。お前は今夜、お前を抱く気満々だった旦那の気持ちを自分の都合で踏みにじるということか」
ゴーンと頭を殴られたようなショックが走り、俺はその場に膝をついて頼寿を見上げた。
思いやりナシ。自分勝手。まさにそんな自分から卒業しようと思っていたのに、ちょっと早起きしただけで……ちょっと仕事の話をしただけで、大人になった気分になっていたなんて。とんだ笑い話だ!
「……分かったよ、頼寿……」
「ん?」
俺は床に伏せたまま、キッと頼寿を睨んで言い放った。
「今夜は俺の『思いやり』を、お前に見せつけてやる!」
「おい、生きてるか」
「はひ……」
俺は半開きになった目を頼寿に向け、口を開けてふらふらと頭を揺らしていた。かろうじて目が開いているだけで、もう今にも寝てしまいそうだ。柄にもなく早起きをして、慣れない会議をして、脳が疲れてしまったのか……とにかく眠くて仕方がない。
「すげえツラになってんぞ」
「わかってる……。でもへいき、つづけて……」
へろへろ声で何とか返事をすると、頼寿が露骨に呆れた顔をしてソファから腰を上げた。
「一服するか。昼飯食ったらまた再開だ」
「た、たすかる……」
そのままソファに体を倒し、横になって目を閉じる。心地好い陽射しに包まれて幸せいっぱいの昼寝タイム──と思ったその時。
「あら、坊ちゃんはおねむですか。早いですね」
「早起きに慣れてねえんだ。腹いっぱい朝飯食って少し喋ったらすぐに眠くなる」
「小さい子供みたいですねぇ」
「実際、小さい子供だ」
聞き捨てならない会話が聞こえるが、それさえも少しずつ遠くなって、聞こえなくなって……
「玉雪」
「──うわあぁっ!」
突然体が揺さぶられて、俺はソファから飛び起きた。せっかく良い気持ちで寝ていたのに、見上げれば頼寿がため息をついて俺を見ている。
「何だよ、昼飯?」
「もう四時だぞ。何時間寝てんだ」
「うそっ!」
見れば窓の外は陽が翳り、部屋の中は電気が点いていた。
「か、快晴は?」
「晩飯の買い物に出ている」
「何で起こしてくれなかったんだよ!」
「何度も起こしたが起きなかっただけだ」
最悪だ。一日の一番無駄な過ごし方をしてしまった。しっかりすると誓ったのに、このザマだ。
昼飯を食べていないから腹が減っている。でも今何か食べたら、今度は夕飯が入らなくなる。そうなると夜中の変な時間に腹が減って眠れなくなって──悪循環の出来上がりだ。
「夕飯まであと二時間、絶対我慢する。ゲームして気を紛らせておけば何とか……」
「仕事の話はどうすんだ」
「ごめん、それがあるんだった。ええと、それじゃ夕飯の後でお風呂入って、アイス食べ終わったら再開ってことで……。ちゃんと寝る時間まで頑張るから」
俺がそう言うと、頼寿が腕組みをして「ほぉん」と意地悪な声を出した。
「そんじゃ今夜は、セックスはナシってことか」
「えっ? な、何だよ急に!」
「しっかりした男になるんだろ。それなら自分の都合だけでなく、相手への思いやりを持つんだな。お前は今夜、お前を抱く気満々だった旦那の気持ちを自分の都合で踏みにじるということか」
ゴーンと頭を殴られたようなショックが走り、俺はその場に膝をついて頼寿を見上げた。
思いやりナシ。自分勝手。まさにそんな自分から卒業しようと思っていたのに、ちょっと早起きしただけで……ちょっと仕事の話をしただけで、大人になった気分になっていたなんて。とんだ笑い話だ!
「……分かったよ、頼寿……」
「ん?」
俺は床に伏せたまま、キッと頼寿を睨んで言い放った。
「今夜は俺の『思いやり』を、お前に見せつけてやる!」
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
首輪 〜性奴隷 律の調教〜
M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。
R18です。
ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。
孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。
幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。
それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。
新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる