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第18話 会長と頼寿と覚悟の夜
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翌朝、凄くすっきりとした気分で目が覚めた。窓から入る陽射し、緩く効いているエアコン、隣のリビングで頼寿が朝食を作る音。それに今朝は会長もいる。
「おはようございます、会長!」
「おお、おはよう玉雪。昨日は遅くまで付き合わせて悪かったな、ゆっくり眠れたか」
「はい!」
ダイニングテーブルの前に座り、コーヒー片手に新聞を広げている三上会長。頼寿と出会う前からお決まりとなっていた、会長の朝の姿だ。
「玉雪、手を洗ったら旦那と朝食をとれ」
「頼寿は?」
「作りながら食べた」
それならと、俺は洗面所へ行き洗顔と手洗いを済ませてから再びダイニングへ戻った。それと入れ替わるようにして、頼寿が廊下へ出て行く。
「どっか行くの?」
「ちょっとな。また後で合流だ、旦那とゆっくり過ごせ」
出掛けるなんて珍しいと思ったが、もしかしたら頼寿なりに気を遣っているのかもしれない。久しぶりに俺と会長水入らずで過ごせということだろうか。
「会長。頼寿が出掛けたみたいなんですけど、何か聞いてますか?」
「ああ、仕事のことで用があるらしいぞ。後で迎えが来るから、そしたら俺達も出よう」
「何だろ。何も聞いてないけど……」
「頼寿のすることだ、安心して任せられるじゃないか」
──まあ、それもそうか。
納得して会長の隣に座り、頼寿の作った分厚くて大きなサンドイッチに手を伸ばす。そういえば最近は快晴の手料理を食べていない。何だかんだと立て込んでいたからだ。頼寿の作る料理も文句なしに美味いけど、快晴のお洒落なランチやディナーも恋しい。
「玉雪はこれから忙しくなるな。頼寿が張り切っていたぞ」
会長に言われて、俺はサンドイッチを頬張りながら頷いた。
「何か始めるみたいですね。俺は口出しせずに任せようと思ってますけど……」
「それではいかんぞ。共同経営という形にするなら、玉雪も自分の意見を言っていいんだ。仕事というのは資産を増やす、金を生み出すことだからな。将来のことをしっかり考えて、後悔しないように頑張るんだ」
「将来か……」
来年のことすら考えられない俺に、五年十年先のビジョンが見えるだろうか。
でも、ショーセックスの仕事はずっと続けていられない。むしろ普通の職業よりも寿命は短い。
若者と呼ばれる年齢の間にしかできない仕事だからこそ計画を立てて挑まないと、失敗した時に取り返しがつかなくなる。頼政さんが画家になったのは、「将来のことを考えていた」からなのだろうか。
「俺達のスポンサーで、三上グループは何かいいことありますか?」
「もちろん、お前達が成功すればかなりの利益になる。不動産は人の住まいだけでなく、クラブやサロンなども扱っているからな。お前達がステージに上がるだけでも宣伝になるさ」
俺には想像もできないことばかりだ。
経営、仕事、利益、宣伝。それらはこの先きっと大事になってくることなのに、何も考えずステージに立っているだけじゃダメな気がする。
先日のサルベージでのロッソ君とローゼオさんのイベントも、きっと何か大きな理由と目的があって行なったことなのだろう。
利益を出すために仕事をする。
それって、大人なら誰しもが当たり前にやっていることだ。
「頼寿の言う『覚悟』って、こういうことだったんだ」
「初めは頼寿に多くを任せて、玉雪も少しずつ勉強しておくといい。利益はもちろん大事だが、働く上で重要なのは顧客を喜ばせること、だぞ」
誰かを喜ばせる。俺のすることが誰かのためになる。
そう考えるとわくわくするけれど、人に喜んでもらうために俺は何ができるだろう。
「おはようございます、会長!」
「おお、おはよう玉雪。昨日は遅くまで付き合わせて悪かったな、ゆっくり眠れたか」
「はい!」
ダイニングテーブルの前に座り、コーヒー片手に新聞を広げている三上会長。頼寿と出会う前からお決まりとなっていた、会長の朝の姿だ。
「玉雪、手を洗ったら旦那と朝食をとれ」
「頼寿は?」
「作りながら食べた」
それならと、俺は洗面所へ行き洗顔と手洗いを済ませてから再びダイニングへ戻った。それと入れ替わるようにして、頼寿が廊下へ出て行く。
「どっか行くの?」
「ちょっとな。また後で合流だ、旦那とゆっくり過ごせ」
出掛けるなんて珍しいと思ったが、もしかしたら頼寿なりに気を遣っているのかもしれない。久しぶりに俺と会長水入らずで過ごせということだろうか。
「会長。頼寿が出掛けたみたいなんですけど、何か聞いてますか?」
「ああ、仕事のことで用があるらしいぞ。後で迎えが来るから、そしたら俺達も出よう」
「何だろ。何も聞いてないけど……」
「頼寿のすることだ、安心して任せられるじゃないか」
──まあ、それもそうか。
納得して会長の隣に座り、頼寿の作った分厚くて大きなサンドイッチに手を伸ばす。そういえば最近は快晴の手料理を食べていない。何だかんだと立て込んでいたからだ。頼寿の作る料理も文句なしに美味いけど、快晴のお洒落なランチやディナーも恋しい。
「玉雪はこれから忙しくなるな。頼寿が張り切っていたぞ」
会長に言われて、俺はサンドイッチを頬張りながら頷いた。
「何か始めるみたいですね。俺は口出しせずに任せようと思ってますけど……」
「それではいかんぞ。共同経営という形にするなら、玉雪も自分の意見を言っていいんだ。仕事というのは資産を増やす、金を生み出すことだからな。将来のことをしっかり考えて、後悔しないように頑張るんだ」
「将来か……」
来年のことすら考えられない俺に、五年十年先のビジョンが見えるだろうか。
でも、ショーセックスの仕事はずっと続けていられない。むしろ普通の職業よりも寿命は短い。
若者と呼ばれる年齢の間にしかできない仕事だからこそ計画を立てて挑まないと、失敗した時に取り返しがつかなくなる。頼政さんが画家になったのは、「将来のことを考えていた」からなのだろうか。
「俺達のスポンサーで、三上グループは何かいいことありますか?」
「もちろん、お前達が成功すればかなりの利益になる。不動産は人の住まいだけでなく、クラブやサロンなども扱っているからな。お前達がステージに上がるだけでも宣伝になるさ」
俺には想像もできないことばかりだ。
経営、仕事、利益、宣伝。それらはこの先きっと大事になってくることなのに、何も考えずステージに立っているだけじゃダメな気がする。
先日のサルベージでのロッソ君とローゼオさんのイベントも、きっと何か大きな理由と目的があって行なったことなのだろう。
利益を出すために仕事をする。
それって、大人なら誰しもが当たり前にやっていることだ。
「頼寿の言う『覚悟』って、こういうことだったんだ」
「初めは頼寿に多くを任せて、玉雪も少しずつ勉強しておくといい。利益はもちろん大事だが、働く上で重要なのは顧客を喜ばせること、だぞ」
誰かを喜ばせる。俺のすることが誰かのためになる。
そう考えるとわくわくするけれど、人に喜んでもらうために俺は何ができるだろう。
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