【BL】Real Kiss

狗嵜ネムリ

文字の大きさ
上 下
111 / 157
第16話 ヒミツのブラザーフッド

7

しおりを挟む
 翌日、午前十時。

「ハーレー、ゴー!」
 俺が投げたカラーボールを一直線に追いかけ、口に咥えて戻ってくるハーレー。早く次を投げてくれとせがむように、芝生に落としたボールの前でぶんぶんと尻尾を振っている。
「よし、もう一回、ゴー!」
 何度投げても正確に戻ってくるし、何度やっても楽しそうで、ハーレーの純粋で元気いっぱいな姿を見ていると俺までパワーをもらっている気分になる。

「よし、次は転がりごっこだ!」
 ローリング! と指示を出せば、ハーレーが芝の上で腹を見せて転がり、手で円を描くとその通りの方向に回転しながらゴロンゴロンと移動した。
「グッド! ハーレー、グッド!」
 めちゃくちゃに体を撫でて褒めてやるたび、ハーレーとの間に絆ができてゆくのを感じる。一生こうしてたい。

「おい、そろそろお前の訓練もするぞ」
 頼寿がプールの中から俺を呼ぶ。聞こえなかったことにして遊んでいようと思ったら、頼寿の声に反応したハーレーがプールの方へ駆けて行ってしまった。
「あっ、ハーレー! 危ないって……!」
 勢い良くジャンプしたハーレーが、プールの中へダイブする。一瞬焦ったが何てことはなく、ハーレーは優雅な犬かきで頼寿の方へとスイスイ泳いで行った。

「お前は頭の良さも泳ぎも従順さもパーフェクトだな」
 完全に俺へのあてつけだ。

 仕方なくシャツを脱いでプールサイドに座り、足の先からゆっくりと水に入ってゆく。プールのバーに掴まって恐る恐る腰から胸まで浸かる俺を、頼寿とハーレーがじっと見つめているのが恥ずかしかった。

「ああ、足が付かない……怖い……」
「コイツも足は付いてないが怖がってねえぞ」
「ハーレー、何て命知らずなんだ……」

 すると頼寿の腕から抜け出たハーレーが、俺の方へ泳いできた。悲しそうな目。恐らく俺が溺れかけているというか、危険な目に遭っていると思っているのだろう。俺を助けようとして来てくれたのだ。
「ハーレー……」
 くうぅ、と悲しげに鼻を鳴らしている姿が健気過ぎて、俺の方が泣きそうになってしまう。

「わ、分かった。分かったよ、大丈夫だから……」
 思い切ってプールの壁を蹴り、バタ足で頼寿の方へと泳いで行く──が、底無しの恐怖に一瞬意識を取られてしまい、呼吸が乱れたと思った時には体が水の中へ沈んでしまった。

「う、うわあぁっ!」

 水に呑まれてゆく──。恐怖で筋肉が強ばり、もがいても上に上がれない。

「玉雪!」
「ぷはっ……!」

 腕を掴まれ、思い切り水面へと引き上げられる。肺に空気が入ってきたのが分かり、俺は頼寿の腕に抱きついて大きく深呼吸をした。

「焦ったぁ……」
 頬を舐められて横を見れば、頼寿がもう片方の腕に頭までびしょ濡れのハーレーを抱いていた。
「俺より早くお前を助けようと潜ったんだ。お前のことを兄弟だと思ってる証拠だな」
「ハーレー」
 感極まって目を潤ませていると、頼寿がそのまま泳いでプールサイドにハーレーを上げ、ついでに俺の手にバーを掴ませてくれた。

「……訓練でも本番でも、お前に何かあればすぐに助ける。俺を信用しろ」
「頼寿……あ、ありがとう……」
「ハーレーにも兄弟認定されたし、兄貴もお前を気に入ってるし、お前が堂島家の人間になる日も近いかもな」
「あ……」

 頼寿のそれは冗談ぽい口調だったけれど、俺はその言葉に胸が高鳴るのを抑えることができなかった。
 頼寿とパートナーになるってことは、頼寿の家族とも繋がりができるってことだ。

 ──家族なんていなかった俺に。

「まあ、そうなる前に俺らのことを旦那に言わねえとだが」
「………」

 覚悟を決めて頷いた俺の頭を、頼寿が強く撫でる。その傍でハーレーが「ワン!」と鳴き、尻尾を振って駆け出した。その先にいたのは頼政さんだ。

「お、ハーレー、遊んでもらったか。──おおい玉雪。クリームソーダでも飲まないか」
「やった! 飲みたいです、今行きます!」
「……ったく、俺への甘やかしがタマにも伝染しつつあるな」

 ある意味では海外リゾートよりも最高な強化合宿だ。

 新しい出会いと、挑戦と、青空とクリームソーダ。

 俺と頼寿の夏休みは、まだ始まったばかり。


 つづく!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

壁穴奴隷No.19 麻袋の男

猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。 麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は? シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。 前編・後編+後日談の全3話 SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。 ※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。 ※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。

水球部顧問の体育教師

熊次郎
BL
スポーツで有名な公明学園高等部。新人体育教師の谷口健太は水球部の顧問だ。水球部の生徒と先輩教師の間で、谷口は違う顔を見せる。

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

首輪 〜性奴隷 律の調教〜

M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。 R18です。 ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。 孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。 幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。 それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。 新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

穴奴隷調教ショー

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 穴奴隷調教済の捜査官が怪しい店で見世物になって陵辱される話です。

処理中です...