【BL】Real Kiss

狗嵜ネムリ

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第14話 サルベージの一夜

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 そんなわけで俺達は急遽今夜のステージに立つことになった。テーマは特になく、完全なフリーステージだ。とはいえ俺には何も思い浮かばないから、頼寿に全部任せることになるんだけれど。

「頼寿、何か必要なものはあるかい」
 ロッソ君がスタッフ達と開店準備をしている中で、ローゼオさんが俺達に話しかけてきた。
「玉雪の衣装は何かあるのか」
 頼寿の質問に、ローゼオさんの目が輝き始める。
「一応色々と揃えてあるが、オススメはエドワード・マックスが好色の王子を誘惑した時に着ていた衣装だな」
「誰だよそのふざけた野郎は」
「俺が考えたコミックのキャラクターだ。手描きで10巻まであるぞ」
 ローゼオさんの趣味は漫画を描くことなのか。ごつい見た目からは想像できないな。

「……なるべく無難な衣装を頼む」
「頼寿は何を着るんだい? 玉雪くんの衣装によっては頼寿もそれに合わせた方がいいんじゃないのかな」
「それも任せる。信用してるからな、ふざけたモン選ぶんじゃねえぞ」
 頼寿はとにかく酒が飲みたいようで、俺達を放置し勝手にキッチンへと入って行ってしまった。

「……あの、ローゼオさん。衣装もですけど、今日ってどんなことすればいいんですか」
「その前に、受けてくれたことに礼を言わせてくれ。こんな急で悪かったね」
 スタッフルームに向かって歩きながら、俺は「いえいえ」と小さく首を振った。見上げるほど大柄なローゼオさんだけど、笑うと子供みたいだ。その笑顔や口調から内面の優しさが滲み出ていて、会うのは二度目だけど俺はすっかり彼のことが好きになっていた。

「内容は頼寿とロッソに任せるよ。俺はオーナーだが、サルベージのことは全面的にロッソに任せているんだ」
「ロッソ君とはいつから?」
「四年前にバーで出会ってな。一夜の関係で終わるはずが、ついつい飼い慣らされてしまったよ。相性が良かったんだ」
 少しも照れた様子なく恋人のことを語るローゼオさんに、何だか俺の方が赤くなりそうだった。こんな風に誰のことも気にせず人を愛せるって、いいなと思う。

「ローゼオさん、あんまりMっぽく見えないですね。カッコいいし、ロッソ君よりずっと大きいし。あ、でもMだけどタチなんでしょ? それってどんな感じなんですか?」
「はぁっ、玉雪くん……そんなことを訊かれると興奮してしまうよ……!」
「ど、どこに興奮する要素がっ?」

 そんな話をしながらスタッフルームに入り、奥のクロゼットの前に立つ。

 デビュー前もここで、初めての衣装を見せてもらったっけ。あの時はこんな未来、想像もしていなかった。

「さあ玉雪くん、好きなものを選んでくれ」
 奇抜なものからカッコいいもの、綺麗なものも可愛いものも──本当にたくさん揃っている。
 俺は服屋で洋服を選ぶ時のように、ハンガーをスライドさせながら一枚ずつ見ていった。

「殆どがフリーサイズだから、玉雪くんでも着れると思うぞ」
「さっき言ってた、ローゼオさんのコミックのキャラクターのは?」
「エドワード・マックスだな。これだ」
 嬉々としてローゼオさんが見せてくれたそれは、単なる学生服って感じだった。白いシャツにグリーンチェックのネクタイ、ダークグレーのズボン。

「普通の服じゃないですか、こういうのもあるんですね」
「ああ。エドワードは王子の趣向をリサーチして、学生のコスプレで誘惑したんだ。王宮で教師と生徒ごっこをしている最中、民間レジスタンスチームが奴隷解放のために攻めてくる」

 何だろうその不思議な世界観のストーリーは……後で漫画読ませてもらおう。

「それじゃあ、頼寿には誘惑される王子になってもらおうかな」
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