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第9話 バブル&スイート
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そんな訳で今日は久し振りに「何もしなくて良い日」だ。明日からは快晴も戻ってくるみたいだし、今日一日はステージも頼寿のことも忘れてダラダラしていよう。
……と、思っていたのだけど。
「買い物に行くぞ、タマ」
「え、何で……一人で行けばいいじゃん」
頼寿がソファで寝転んでいた俺の腕を引っ張って体を起こさせ、「物事を面倒臭がるな」と熱血教師みたいなことを言った。
*
「買い物って何? いつも通販で済ませてるのに、何で今日に限って……」
「現物を見て買った方がいいと思ってな」
そうしてお馴染みの頼寿の車の中、俺は不機嫌さを隠そうともせず気だるげにシートにもたれ、窓の外に顔を向けた。
「何買うの」
「お前が好きそうな物だ。正直言って俺は、お前以上に乗り気じゃねえ」
「ん……?」
乗り気じゃないのにわざわざ行くということは、単なる暇潰しではなく「仕事」に必要な物を買いに行くのだろう。
一体何を買うのか。衣装なら会長の趣味に合わせたオーダーメイドの品を注文することになっているし、小道具なんかも向こうで用意されてるはず。全く見当がつかなくて、俺は窓に向けていた視線を頼寿の方へと移動させた。
「勿体ぶらないで言えよ」
「簡単に言えば、……風呂で使う物だ。泡の素だとか、風呂に入れるオイルだとか……それをお前に選んでもらう」
「えっ、めちゃくちゃ意外なんだけど。それって仕事に関係してんの?」
赤信号で車を停めた頼寿が、ハンドルを握ったまま項垂れて溜息をつく。
「正式デビューの場は、旦那が張り切って用意したらしいからな。ふんだんにお前ら好みの設定が盛り込まれてるらしい」
「そういえば会長とはよく泡風呂で遊んでたかも……。花びらとかスパンコールが浮かぶお湯とか、いい匂いのアロマオイルとか」
「男の癖に何やってんだお前ら、気色悪い」
「う、うるさいな。実際楽しいんだからいいだろ!」
だけどそういうことなら納得だ。正式デビューとやらがホテルの部屋で行なわれる理由も分かった気がする。
お風呂を使ったステージというのは妙だけど、未知への不安と比べれば少しでも前情報がある方が心の準備もしておきやすい。次回はお風呂。これが分かっているだけでも有難かった。
「じゃあ俺が欲しいやつ買っていいんだ?」
「ああ。ある程度はステージ映えしそうな物をチョイスしてくれると助かるがな。俺には全く分からねえ分野だ」
「任せろ!」
別に風呂ステージを是非やりたいというわけじゃない。ていうかむしろ憂鬱だけど、何となく……。
「頼りにしてるぜ、タマ」
「……ん!」
何となく頼寿が仕事のことで俺に頼ってくれているということが、ほんの少し嬉しかった。
……と、思っていたのだけど。
「買い物に行くぞ、タマ」
「え、何で……一人で行けばいいじゃん」
頼寿がソファで寝転んでいた俺の腕を引っ張って体を起こさせ、「物事を面倒臭がるな」と熱血教師みたいなことを言った。
*
「買い物って何? いつも通販で済ませてるのに、何で今日に限って……」
「現物を見て買った方がいいと思ってな」
そうしてお馴染みの頼寿の車の中、俺は不機嫌さを隠そうともせず気だるげにシートにもたれ、窓の外に顔を向けた。
「何買うの」
「お前が好きそうな物だ。正直言って俺は、お前以上に乗り気じゃねえ」
「ん……?」
乗り気じゃないのにわざわざ行くということは、単なる暇潰しではなく「仕事」に必要な物を買いに行くのだろう。
一体何を買うのか。衣装なら会長の趣味に合わせたオーダーメイドの品を注文することになっているし、小道具なんかも向こうで用意されてるはず。全く見当がつかなくて、俺は窓に向けていた視線を頼寿の方へと移動させた。
「勿体ぶらないで言えよ」
「簡単に言えば、……風呂で使う物だ。泡の素だとか、風呂に入れるオイルだとか……それをお前に選んでもらう」
「えっ、めちゃくちゃ意外なんだけど。それって仕事に関係してんの?」
赤信号で車を停めた頼寿が、ハンドルを握ったまま項垂れて溜息をつく。
「正式デビューの場は、旦那が張り切って用意したらしいからな。ふんだんにお前ら好みの設定が盛り込まれてるらしい」
「そういえば会長とはよく泡風呂で遊んでたかも……。花びらとかスパンコールが浮かぶお湯とか、いい匂いのアロマオイルとか」
「男の癖に何やってんだお前ら、気色悪い」
「う、うるさいな。実際楽しいんだからいいだろ!」
だけどそういうことなら納得だ。正式デビューとやらがホテルの部屋で行なわれる理由も分かった気がする。
お風呂を使ったステージというのは妙だけど、未知への不安と比べれば少しでも前情報がある方が心の準備もしておきやすい。次回はお風呂。これが分かっているだけでも有難かった。
「じゃあ俺が欲しいやつ買っていいんだ?」
「ああ。ある程度はステージ映えしそうな物をチョイスしてくれると助かるがな。俺には全く分からねえ分野だ」
「任せろ!」
別に風呂ステージを是非やりたいというわけじゃない。ていうかむしろ憂鬱だけど、何となく……。
「頼りにしてるぜ、タマ」
「……ん!」
何となく頼寿が仕事のことで俺に頼ってくれているということが、ほんの少し嬉しかった。
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