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第5話 絶対服従ゲーム
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半泣きになってパンツを穿き、急いでドアのチェーンロックを外す。
「すいません、お待たせして……」
「………」
開いたドアの先にはモニターで見た男が立っていた。モニターでは確認できなかったが思ったよりも若くて、背が高く、そして――ハンサムだった。配送員のユニフォームではなくスーツを着ている。メンズエステか高級化粧品のセールスだろうか。それにしては手ぶらなのが気になる。
「え、えっと……」
彼は俺の姿を見て、どこか視線を泳がせながら立ち尽くしていた。途端に自分がパンツ一丁なのが恥ずかしくなり、ひとまず頼寿に対応させようと背後を振り返る。
すると──
「よう、早かったな快晴」
「よ、頼寿さん。流石です……素人の坊ちゃんをパンいちで応対させるなんて……」
「いや、完全に失敗だ。本当は全裸で出すつもりだった。三日で慣らすつもりだったが急ぎ過ぎたみてえだな」
「そんな。いつもは調教に十日はかける頼寿さんが、三日でなんて……。坊ちゃん、相当の素質があるんですね……!」
「な、何言ってんのお前達っ──!?」
話が全く飲み込めず、俺は目を回しながら二人の男の間で喚いた。
「ていうか誰だよあんたっ、頼寿の部下っ?」
俺に唾を飛ばされても嫌な顔一つせずに、ハンサムが栗色の綺麗な髪をかきあげて笑う。
「申し遅れました。僕は個人的に頼寿さんのサポートや雑用をやらせて頂いてます、園田快晴と申します。頼寿さんとは昔とあるSMバーで知り合って、その神がかった鞭捌きと冷酷な目に心を奪われてしまい、その場で奴隷志願を──」
「……そんなエピソードはいいから、何しに来たのかだけ教えてくれ。俺はあんたのためにゲームに負けてやったんだからな」
「頼寿さんに呼ばれて来たんですよ。週末まで坊ちゃんに集中したいとのことでしたので、今週は雑用や家のことは僕が請け負います」
「………」
頼寿が呼んだということは、今日彼が来ることを頼寿は知っていたということだ。
初めから来訪者が身内の人間だと分かっていたから、あの恰好のままの俺に対応させようとして──。
「……よ、頼寿」
「何だ」
「今からパンツ脱いでもいい?」
「脱ぐのは構わねえが、服従ゲームは終わったぞ。お前は明日一日、俺に『ご奉仕』決定だ」
「ぐうぅ……めちゃくちゃ悔しい……! ちくしょう、ちくしょう!」
やり場のない怒りから片足で何度も床を踏みしめる俺を見て、快晴が目を丸くさせている。
「坊ちゃんはまるで子供のように純粋な方なんですねぇ……」
「感情を体で表すタイプだ。動物みてえで面白いだろ」
「馬鹿にするなぁ!」
何が調教だ。何がSMだ。俺を馬鹿丸出しの子供扱いして、いきなり現れておきながら勝手に自分が上に立とうとして。
俺は絶対にこいつらの──頼寿の言いなりになんかならない。今後会長の望み通りSMパフォーマンスの仕事をするにしても、絶対に心までは頼寿に委ねない。
「そろそろ服着てもいいぜ。風邪ひくぞ、タマちゃん」
……大嫌いだ、この男。
今すぐ俺の目の前から消えてなくなればいいのに。
つづく!
「すいません、お待たせして……」
「………」
開いたドアの先にはモニターで見た男が立っていた。モニターでは確認できなかったが思ったよりも若くて、背が高く、そして――ハンサムだった。配送員のユニフォームではなくスーツを着ている。メンズエステか高級化粧品のセールスだろうか。それにしては手ぶらなのが気になる。
「え、えっと……」
彼は俺の姿を見て、どこか視線を泳がせながら立ち尽くしていた。途端に自分がパンツ一丁なのが恥ずかしくなり、ひとまず頼寿に対応させようと背後を振り返る。
すると──
「よう、早かったな快晴」
「よ、頼寿さん。流石です……素人の坊ちゃんをパンいちで応対させるなんて……」
「いや、完全に失敗だ。本当は全裸で出すつもりだった。三日で慣らすつもりだったが急ぎ過ぎたみてえだな」
「そんな。いつもは調教に十日はかける頼寿さんが、三日でなんて……。坊ちゃん、相当の素質があるんですね……!」
「な、何言ってんのお前達っ──!?」
話が全く飲み込めず、俺は目を回しながら二人の男の間で喚いた。
「ていうか誰だよあんたっ、頼寿の部下っ?」
俺に唾を飛ばされても嫌な顔一つせずに、ハンサムが栗色の綺麗な髪をかきあげて笑う。
「申し遅れました。僕は個人的に頼寿さんのサポートや雑用をやらせて頂いてます、園田快晴と申します。頼寿さんとは昔とあるSMバーで知り合って、その神がかった鞭捌きと冷酷な目に心を奪われてしまい、その場で奴隷志願を──」
「……そんなエピソードはいいから、何しに来たのかだけ教えてくれ。俺はあんたのためにゲームに負けてやったんだからな」
「頼寿さんに呼ばれて来たんですよ。週末まで坊ちゃんに集中したいとのことでしたので、今週は雑用や家のことは僕が請け負います」
「………」
頼寿が呼んだということは、今日彼が来ることを頼寿は知っていたということだ。
初めから来訪者が身内の人間だと分かっていたから、あの恰好のままの俺に対応させようとして──。
「……よ、頼寿」
「何だ」
「今からパンツ脱いでもいい?」
「脱ぐのは構わねえが、服従ゲームは終わったぞ。お前は明日一日、俺に『ご奉仕』決定だ」
「ぐうぅ……めちゃくちゃ悔しい……! ちくしょう、ちくしょう!」
やり場のない怒りから片足で何度も床を踏みしめる俺を見て、快晴が目を丸くさせている。
「坊ちゃんはまるで子供のように純粋な方なんですねぇ……」
「感情を体で表すタイプだ。動物みてえで面白いだろ」
「馬鹿にするなぁ!」
何が調教だ。何がSMだ。俺を馬鹿丸出しの子供扱いして、いきなり現れておきながら勝手に自分が上に立とうとして。
俺は絶対にこいつらの──頼寿の言いなりになんかならない。今後会長の望み通りSMパフォーマンスの仕事をするにしても、絶対に心までは頼寿に委ねない。
「そろそろ服着てもいいぜ。風邪ひくぞ、タマちゃん」
……大嫌いだ、この男。
今すぐ俺の目の前から消えてなくなればいいのに。
つづく!
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