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第3話 ROSSO
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「頼寿、玉雪くん、楽しんでる?」
ロッソ君がやってきて、ソファに座る俺達の前で片膝をつく。
「あの二人、なかなかステージ映えしていい感じでしょ。頼寿が手掛けてきた子達にも劣らないって、個人的には思うんだよね!」
「まあ、カオとカラダは申し分ねえな」
「リアルカップルだから演技もリアルなんだ。一応ステージではデカい方の炸良サクラがS役なんだけど、実生活だと美少年の椎那シイナの方が主導権握ってるんだって。バランス取れた二人でさ。ステージも真剣だし」
「へえぇ……カップルで!」
ロッソ君の説明に思わず目を丸めてしまう。カップル同士でエロティックなショーをしていると思うと何だかとても生々しく、まるで見てはいけないようなものを見ているような気がしてくる。
……だけど、自分の恋人の裸を知らない客達に見られるのって嫌じゃないのだろうか。
「玉雪くんも、いつかはああいうステージに乗るんでしょ。頑張って!」
「お、俺はっ……」
今もステージ上で絡み合い、口付け合い、大事な所を触わり合ってくっ付け合っている、本物のゲイカップル。
俺と頼寿が、いま彼らがしているのと同じことを……あのステージで。
「か、会長は何で俺にそんなことを……!」
「趣味なんだろ。ここにもそういう奴は大勢いる」
しれっと頼寿が言う足元で、ロッソ君が口元に手をあてて笑う。俺にはとても理解できない世界だ。彼らにとってはこのショーもAVを見るような軽い感覚なんだろうか。
「お、俺には無理だよ。絶対、ステージ上がっただけで緊張して何も動けなくなるし……」
「そこは頼寿の調教テクニック次第だから、心配することないよ。ある日突然やれっていうモンでもないから、ちゃんと心構えも練習もする期間があるしね」
そういう問題じゃないんだけれど……駄目だ、頼寿もロッソ君も俺とは価値観が違い過ぎて、絶対にお互い理解し合えない。
「……絶対無理だし……俺にはできねえし」
ぶつぶつ言いながらジュースを飲んでいると、頼寿が横から俺の肩を強く抱き寄せて囁いた。
「お前の『無理』は、初めの一回だけだ」
「は?」
「一回経験しちまえば、次からお前は自分でステージに上がりたくなる」
「そ、そんな……こと……!」
相変わらずの爆音と薄暗い照明の中、真正面から俺を見つめる頼寿の黒い目が妖しく光ったような気がした。
「それほどお前はモノを知らねえんだ。旦那以外の男と経験もねえし、そもそもセックスの経験もねえんだろ。更にいえば他人との関りも殆どなく生きてきた。世界ってのはな、お前の知らねえことがゴロゴロ転がってんだぞ」
「………」
俺の知らないこと。確かに俺はロクに学校も行っていないし、まともな人付き合いをしたこともない。心を許していたのは会長だけで、俺は友達も家族も世の中のことも、何も……何も知らなかった。
つづく!
ロッソ君がやってきて、ソファに座る俺達の前で片膝をつく。
「あの二人、なかなかステージ映えしていい感じでしょ。頼寿が手掛けてきた子達にも劣らないって、個人的には思うんだよね!」
「まあ、カオとカラダは申し分ねえな」
「リアルカップルだから演技もリアルなんだ。一応ステージではデカい方の炸良サクラがS役なんだけど、実生活だと美少年の椎那シイナの方が主導権握ってるんだって。バランス取れた二人でさ。ステージも真剣だし」
「へえぇ……カップルで!」
ロッソ君の説明に思わず目を丸めてしまう。カップル同士でエロティックなショーをしていると思うと何だかとても生々しく、まるで見てはいけないようなものを見ているような気がしてくる。
……だけど、自分の恋人の裸を知らない客達に見られるのって嫌じゃないのだろうか。
「玉雪くんも、いつかはああいうステージに乗るんでしょ。頑張って!」
「お、俺はっ……」
今もステージ上で絡み合い、口付け合い、大事な所を触わり合ってくっ付け合っている、本物のゲイカップル。
俺と頼寿が、いま彼らがしているのと同じことを……あのステージで。
「か、会長は何で俺にそんなことを……!」
「趣味なんだろ。ここにもそういう奴は大勢いる」
しれっと頼寿が言う足元で、ロッソ君が口元に手をあてて笑う。俺にはとても理解できない世界だ。彼らにとってはこのショーもAVを見るような軽い感覚なんだろうか。
「お、俺には無理だよ。絶対、ステージ上がっただけで緊張して何も動けなくなるし……」
「そこは頼寿の調教テクニック次第だから、心配することないよ。ある日突然やれっていうモンでもないから、ちゃんと心構えも練習もする期間があるしね」
そういう問題じゃないんだけれど……駄目だ、頼寿もロッソ君も俺とは価値観が違い過ぎて、絶対にお互い理解し合えない。
「……絶対無理だし……俺にはできねえし」
ぶつぶつ言いながらジュースを飲んでいると、頼寿が横から俺の肩を強く抱き寄せて囁いた。
「お前の『無理』は、初めの一回だけだ」
「は?」
「一回経験しちまえば、次からお前は自分でステージに上がりたくなる」
「そ、そんな……こと……!」
相変わらずの爆音と薄暗い照明の中、真正面から俺を見つめる頼寿の黒い目が妖しく光ったような気がした。
「それほどお前はモノを知らねえんだ。旦那以外の男と経験もねえし、そもそもセックスの経験もねえんだろ。更にいえば他人との関りも殆どなく生きてきた。世界ってのはな、お前の知らねえことがゴロゴロ転がってんだぞ」
「………」
俺の知らないこと。確かに俺はロクに学校も行っていないし、まともな人付き合いをしたこともない。心を許していたのは会長だけで、俺は友達も家族も世の中のことも、何も……何も知らなかった。
つづく!
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