おかしでおかしな話

Natsu

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おかしな谷底

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「………うっ」

 ポッキーは目を覚ましました。

「こ、ココア?」

 起き上がった彼女は妙なことを口に出します。どうやら「こ、ここは?」と言いたいらしいです。

 ポッキーは洞窟の中にいました。
 近くを見ると滝が降り注いでいます。川の終点はこの洞窟に繋がっていたようですね。

「気が付いたかえ?」

「―――」

 不気味な声に驚き、ポッキーは慌てて顔を振り向けます。
 そこには、髪が薄らーで、頭部の真ん中から一本だけ黒く滑らかな髪の毛が生えている、一人のおばあさんがいました。

「安心なされ。この洞窟はわしの家じゃ。滝と一緒に落ちてきたから驚いたぞい」

「お、鬼ばばだぁ!」

 ポッキーは鬼ばばの顔に恐怖しました。
 なんて醜く歪んだ顔なんだ。しわくちゃくちゃくちゃでまさに鬼ばばな顔。

「鬼ばばとは失礼な。わしの名前は、マンジュウ。お前さんの命の恩」

「ひゃああぁぁあぁ!」

 ポッキーは棍棒を握ると、鬼ばばに向かって振り落としました。

「危ねええっ!」

 マンジュウは可憐なアクロバットで回避します。

「わしは人間じゃボケ! 命の恩人になんてことするんじゃ!」

「え、嘘? に、人間?」

 ポッキーは棍棒を構えたまま聞き返しました。

「そう言って……ぇぁあぁぁ!?」

 マンジュウは床に光った黒い一本の毛を見ました。
 急いで自分の頭を触ると、

「な、ない……? わしのラストヘヤーが……」

 マンジュウは床に落ちた自分のラストヘヤーを震える手でゆっくりと掴みました。
 どうやら棍棒がかすったらしく、ラストヘヤーはちょっとパンチパーマになっていました。

「111年間……。共に人生を歩んできた髪の毛だったのに……」

 髪の毛を見つめて泣きだしたマンジュウを見て、ポッキーは罪悪感に襲われました。

「えっ…と……今、村で流行のハッスルカツラ買ってくるから許して」

「え、ハッスルカツラ!?」

 マンジュウは顔を上げました。

「お前さんの村、ハッスルカツラ売ってんの!?」

「え? う、うん」

「ひゃっほおおおい!」

 マンジュウは踊りながら洞窟から出ていきました。

「………」

 い、いったいなんだったんだ。ポッキーはあらゆる疑問を振り払い洞窟から出ていきました。
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