102 / 133
□初心に戻れ!編
【地雷カレーバトル】②
しおりを挟む
始まったカレー調理対決。
審査員の席に座るのはゼンス。
その彼の前に並ぶ調理人たちはもちろん──
ティア、ミモザ、そしてロゼン。
「タイムアウト」
試合が始まっていないのにゼンスは謎の宣言したあと、ロゼンの首根っこを捕まえて引きずってきた。
「な、なにも始まっていないのに貴重なタイムアウトを使うなんていったいなにを考えて……」
「それはこっちのセリフだ、なにを考えてそっち側に立ってやがる。てめえは鍋しか作れないんだからこっちにいないとおかしいだろ」
「なんだと……? お前も俺をただの鍋奉行しかできない男だと思っているのか?」
ロゼンの雰囲気が変わったため、ゼンスはたじろいだ。
「いいか俺は鍋だけの男じゃない。カレーだってパーティーナンバー1になるポテンシャルを秘めている。それを証明するのはいつなのか……今でっしゃろ!」
変な語尾はともかく、それはあまりにも熱い語りだったそうな。
「……そうか、頑張れよ」
とくにこれ以上言うこともなくなったゼンスは審査員席に戻ろうとする。
「待て、これをつけろ」
ロゼンがなにかを手渡してきたため、ゼンスはそれを受けとった。
それは目隠しだった。
つまり調理場面を見るな、見てしまうと絶対にティアが作ったカレーを選ぶから、そんなことは許さないといったことなのだろう。
ゼンスは物事をさらにめんどくさくしたリーダーをぶっとばそうとしたが、これを受けとるのを拒否するというのはズルしますというを認めることにもなる。
「面白れぇ……」
ゼンスは審査員席に座ってから目隠しをつけた。
ティアとの付き合いは一番長い。カレーの味ぐらいしっかり覚えている。
どうやら調理が開始したようだ。
聞こえてくるのは具材を切る音、煮込む音。カレーとすぐわかる匂い。
(……ぶっちゃけ味の違いを判断する自身はねぇ。隠し味とかさっぱりわからん。だがカレーで単純にわかりやすいのは甘い辛いの味付け。ティアのカレーは甘口。判断するのはそこだ)
甘くて旨い。これだけに絞り味を評価する。あとは運だめしだ。
「できました。目隠しをとってください」
ミモザの声に従い、ゼンスは視界を解放した。
目の前に並べられたカレーライスは3皿。正解の確率は3分の1。
「………!」
ゼンスは一番左に置かれたカレーを食べた。まろやかな甘さ。普通に旨い。
「………!」
次に真ん中のカレーを食べた。コクのある甘さ。普通に旨い。
「………!」
最後に右に置かれたカレーを食べた。柔らかな甘さ。普通に旨い。
結論、全部甘口カレーで旨かった。
(や、やべえ……わかんねえ……)
ゼンスはあせった。どのカレーが正解なのかという言ってみればつまらない地雷源に足を踏み込んだ程度の状況ではあるが、もうあと戻りはできないのだ。
(左、真ん中、右……どれだ、どれが正解だ……)
旨さは3つとも本物。地雷が混じっているとわかっているのに、どれを何口食べてもそれは変わらない。
「……ち、ちくしょう、全部うめえ……どれが正解だ……」
ゼンスは頭を抱えて悩んでいた。
そんな光景を見ながら、調理人3人はひそひそと話す。
「ほら俺が言った通り選ばないだろ? 2番なんてないんだって」
「同感です。結局、ゼンスはあなたのことをよくわかってないふりをしながらわかっているのですよ」
「うー……」
ロゼン、ミモザに言われ、ティアは顔を赤らめた。
「わ、わかんねぇ……全部マジで旨い……どうなってんだ!?」
ゼンスは、ティアが作った3つのカレーを何度も食べ比べながらずっと悩んでいたそうな。
審査員の席に座るのはゼンス。
その彼の前に並ぶ調理人たちはもちろん──
ティア、ミモザ、そしてロゼン。
「タイムアウト」
試合が始まっていないのにゼンスは謎の宣言したあと、ロゼンの首根っこを捕まえて引きずってきた。
「な、なにも始まっていないのに貴重なタイムアウトを使うなんていったいなにを考えて……」
「それはこっちのセリフだ、なにを考えてそっち側に立ってやがる。てめえは鍋しか作れないんだからこっちにいないとおかしいだろ」
「なんだと……? お前も俺をただの鍋奉行しかできない男だと思っているのか?」
ロゼンの雰囲気が変わったため、ゼンスはたじろいだ。
「いいか俺は鍋だけの男じゃない。カレーだってパーティーナンバー1になるポテンシャルを秘めている。それを証明するのはいつなのか……今でっしゃろ!」
変な語尾はともかく、それはあまりにも熱い語りだったそうな。
「……そうか、頑張れよ」
とくにこれ以上言うこともなくなったゼンスは審査員席に戻ろうとする。
「待て、これをつけろ」
ロゼンがなにかを手渡してきたため、ゼンスはそれを受けとった。
それは目隠しだった。
つまり調理場面を見るな、見てしまうと絶対にティアが作ったカレーを選ぶから、そんなことは許さないといったことなのだろう。
ゼンスは物事をさらにめんどくさくしたリーダーをぶっとばそうとしたが、これを受けとるのを拒否するというのはズルしますというを認めることにもなる。
「面白れぇ……」
ゼンスは審査員席に座ってから目隠しをつけた。
ティアとの付き合いは一番長い。カレーの味ぐらいしっかり覚えている。
どうやら調理が開始したようだ。
聞こえてくるのは具材を切る音、煮込む音。カレーとすぐわかる匂い。
(……ぶっちゃけ味の違いを判断する自身はねぇ。隠し味とかさっぱりわからん。だがカレーで単純にわかりやすいのは甘い辛いの味付け。ティアのカレーは甘口。判断するのはそこだ)
甘くて旨い。これだけに絞り味を評価する。あとは運だめしだ。
「できました。目隠しをとってください」
ミモザの声に従い、ゼンスは視界を解放した。
目の前に並べられたカレーライスは3皿。正解の確率は3分の1。
「………!」
ゼンスは一番左に置かれたカレーを食べた。まろやかな甘さ。普通に旨い。
「………!」
次に真ん中のカレーを食べた。コクのある甘さ。普通に旨い。
「………!」
最後に右に置かれたカレーを食べた。柔らかな甘さ。普通に旨い。
結論、全部甘口カレーで旨かった。
(や、やべえ……わかんねえ……)
ゼンスはあせった。どのカレーが正解なのかという言ってみればつまらない地雷源に足を踏み込んだ程度の状況ではあるが、もうあと戻りはできないのだ。
(左、真ん中、右……どれだ、どれが正解だ……)
旨さは3つとも本物。地雷が混じっているとわかっているのに、どれを何口食べてもそれは変わらない。
「……ち、ちくしょう、全部うめえ……どれが正解だ……」
ゼンスは頭を抱えて悩んでいた。
そんな光景を見ながら、調理人3人はひそひそと話す。
「ほら俺が言った通り選ばないだろ? 2番なんてないんだって」
「同感です。結局、ゼンスはあなたのことをよくわかってないふりをしながらわかっているのですよ」
「うー……」
ロゼン、ミモザに言われ、ティアは顔を赤らめた。
「わ、わかんねぇ……全部マジで旨い……どうなってんだ!?」
ゼンスは、ティアが作った3つのカレーを何度も食べ比べながらずっと悩んでいたそうな。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~
ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉
攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。
私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。
美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~!
【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避
【2章】王国発展・vs.ヒロイン
【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。
※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。
※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差)
ブログ https://tenseioujo.blogspot.com/
Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/
※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。
【完結】異世界でお花屋さんの店員を募集したら、美しくて高貴なエルフが応募しに来ました。異世界の巨大な町にある僕の小さなお花屋さんの運命は?
みみにゃん出版社
ファンタジー
異世界で念願のお花屋さんを開業した僕、
ハナヤ・アオイ。
ある日、店員さんを募集する張り紙をしたら応募してきたのはとてつもなく美しく高貴なエルフだった…。
その日から、破天荒なエルフに振り回される僕の日々が始まった。
異世界の巨大な町にある僕の小さなお花屋さんの運命は?
ほのぼの(?)日常ファンタジーのはじまりです(=^x^=)
※完結しました! ありがとうございました!
※宜しければ、お気に入りにご登録いただけたら嬉しいです。
※ご感想をお待ちしています。
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
望まれない結婚〜相手は前妻を忘れられない初恋の人でした
結城芙由奈
恋愛
【忘れるな、憎い君と結婚するのは亡き妻の遺言だということを】
男爵家令嬢、ジェニファーは薄幸な少女だった。両親を早くに亡くし、意地悪な叔母と叔父に育てられた彼女には忘れられない初恋があった。それは少女時代、病弱な従姉妹の話し相手として滞在した避暑地で偶然出会った少年。年が近かった2人は頻繁に会っては楽しい日々を過ごしているうちに、ジェニファーは少年に好意を抱くようになっていった。
少年に恋したジェニファーは今の生活が長く続くことを祈った。
けれど従姉妹の体調が悪化し、遠くの病院に入院することになり、ジェニファーの役目は終わった。
少年に別れを告げる事もできずに、元の生活に戻ることになってしまったのだ。
それから十数年の時が流れ、音信不通になっていた従姉妹が自分の初恋の男性と結婚したことを知る。その事実にショックを受けたものの、ジェニファーは2人の結婚を心から祝うことにした。
その2年後、従姉妹は病で亡くなってしまう。それから1年の歳月が流れ、突然彼から求婚状が届けられた。ずっと彼のことが忘れられなかったジェニファーは、喜んで後妻に入ることにしたのだが……。
そこには残酷な現実が待っていた――
*他サイトでも投稿中
夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。
window
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。
三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。
だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。
レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。
イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。
子供の親権も放棄しろと言われてイリスは戸惑うことばかりでどうすればいいのか分からなくて混乱した。
お母さん冒険者、ログインボーナスでスキル【主婦】に目覚めました。週一貰えるチラシで冒険者生活頑張ります!
林優子
ファンタジー
二人の子持ち27歳のカチュア(主婦)は家計を助けるためダンジョンの荷物運びの仕事(パート)をしている。危険が少なく手軽なため、迷宮都市ロアでは若者や主婦には人気の仕事だ。
夢は100万ゴールドの貯金。それだけあれば三人揃って国境警備の任務についているパパに会いに行けるのだ。
そんなカチュアがダンジョン内の女神像から百回ログインボーナスで貰ったのは、オシャレながま口とポイントカード、そして一枚のチラシ?
「モンスターポイント三倍デーって何?」
「4の付く日は薬草デー?」
「お肉の日とお魚の日があるのねー」
神様からスキル【主婦/主夫】を授かった最弱の冒険者ママ、カチュアさんがワンオペ育児と冒険者生活頑張る話。
※他サイトにも投稿してます
追放された?異世界転生第三王子と魔境の森の魔女の村
陸奥 霧風
ファンタジー
とある小学1年生の少年が川に落ちた幼馴染を助ける為になりふり構わず川に飛び込んだ。不運なことに助けるつもりが自分まで溺れてしまった。意識が途切れ目覚めたところ、フロンシニアス王国の第三王子ロッシュウは転生してしまった。文明の違いに困惑しながらも生きようとするが…… そして、魔女との運命的な出会いがロッシュウの運命を変える……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる