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失踪7〜8日目 夜間
30話
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「もう!3枚目なのになんで笑えないかな!?」
「ご、ごめんね」
和田に怒られながら、苦笑いのまま頭を下げる足立。昔からお化け屋敷や肝試しはなにより苦手だった。それなのに今、夜の遊園地に侵入して肝試しをしている足立。何度も苦手だとは言ったが、決定的な拒絶が出来ないまま、遂にこんな場所まで来てしまったのだ。
「心霊写真になってるか!?」
「おぉ!殺人ピエロ写ってんじゃね!?」
「写ってねえじゃん」
「あれじゃない?事件があった場所じゃないと駄目とか?ネットにはどこって書いてないのよね」
3人が盛り上がっているのを見ると、もう止めようなんて言えない足立。ここで言えるのならば、もっと早くに言っていただろう。この遊園地にだけは、遊び半分で立ち入りたくなんてなかったのだから。
そんな足立達から離れて、ひとりで空を見ている加藤。和田は若干それが気に入らない様子で、加藤に声を掛ける。
「ねえゆず!次どこ行く!?」
「知らね、好きにすれば?」
今日はとことん乗り気じゃない様子。最近3人からの足立への風当たりが強くなって来たあたりで、なんだか面白くなさそうな顔をすることが増えて来たのを和田は知っていた。
正直和田からすれば、虐めるのが嫌なら止めれば良いのに、黙ってるだけで自分は加担してないスタンスを取る加藤が気に入らなかった。
そもそも前々から和田は加藤のおまけとして扱われることが多く、コンプレックスを感じていた。しかしグループ内での発言権は加藤の方が上なので、直接文句を言ったり、攻撃したり出来なかった。
だから、加藤が連れて来た足立をサンドバックにすることにしたのだ。途中で止められないように少しずつエスカレートさせていき、男2人も楽しくなるように工夫もした。そして今、男2人は楽しい足立虐めに積極的じゃない加藤に不満を抱くまでになった。
「じゃあ次はお化け屋敷行こうか!」
このまま行けばこのグループから加藤を追い出せるかも知れない。和田は密かにそんなことを考えながら、男2人を引き連れてお化け屋敷へ向かう。
「入れそう?」
「これなら入れるな」
さて次はどうしようかと和田が考えていたら、先に加藤が仕切り出す。
「足立、一緒に行こ。3人はここで待ってて」
「え、なん──」
和田が止めようとした時には、すでに加藤は足立を連れて中へ入っていた。
「勝手過ぎじゃない?」
怒る和田に対し、なんとも言えない顔をする男2人。仕方ないので3人は少し離れたところにあるベンチに座って加藤達の帰りを待った。
その間加藤はどんどんと奥へ進んでいく。足立は離れないように薄目で必死に後をついていき、途中で加藤がピタリと足を止めたことでようやく目を開けた。
「えっと」
「足立さ、なんで嫌なのに言わないの?」
「え?」
背中を向けたまま話し出す加藤。足立はなんとも言えずにただ黙っていた。
「私がなんとかしてくれるって思ってるから?」
「ち、違っ!」
「ならなんで?」
「私のわがままで空気悪くしたくないし」
「嫌なこと嫌って言うのと、わがままは違うでしょ?」
足立は振り向いた加藤が怒っているのだと思った。しかし実際はなぜか加藤の方が泣きそうな顔をしていて。
「あんたさ、なんの為に私らと居るの?」
「そ、れは」
友達だから。足立はそう胸を張って言えない。そしてそれを言って貰えない加藤は、自分にも足立にも苛ついて、行き場のない怒りを込めて、足立の肩を強く掴んだ。
「嫌ならもう来なかったら良いじゃん」
「それは、でも、またひとりに──」
「ならなんで自分で居場所作らないの!?」
足立の身体を乱暴に揺らす。加藤がここまで感情的になるのは、友達が出来ない足立に、自分の姿を重ねていたからだ。
人付き合いが苦手な加藤は、自分を守る為に髪を染めて、自分を守る為に高圧的な態度を取る。高校に入ってから、運良く同じような爪弾き者達とグループになれたが、それだって自分の実力なんかじゃない。
その証拠に、今足立に言った言葉は、まるまる自分にも当てはまるのだ。足立が虐められているのが見てられないなら、自分が止めれば良い。だが加藤には、それが出来ない。
「加藤さんにはわかんないよ!」
だから足立が大きな声を出した瞬間、ただそれだけで加藤の心は揺れる。
「加藤さんみたいに強くて!自分の思ったことなんでも言える人には!私の気持ちなんかわかんないよ!」
「そん、なの」
違うのだ。全く違う。加藤はまるで自分が足立を騙しているような気さえしてきて。
「私が目障りなら、もう来ない。加藤さんが誘ってくれたんだもん。加藤さんに迷惑掛けてまで居たくないから」
足立はとことん、人に迷惑を掛けるのを嫌う。自分のことなんて二の次、三の次である。だから人に意見なんて出来ない。迷惑だったらどうしようと考えるだけで、動けなくなる。唯一それを違えたのが、親友との決別となった。
「お前!違うだろ!?なんで!なんで!」
「は!離して!痛いよっ!」
肩ではなく、今度は胸ぐらを強く掴んで乱暴に足立の身体を振り回す加藤。感情的になっていて力がコントロール出来ていない。そして加藤は、力強く足立を後方へ放り投げた。
「勝手にしろよ!」
思った以上に勢い良く飛んだことですぐに熱が下がり、起き上がって来ない様子を見て徐々に汗が噴き出てくる。
「え?おい、足立?」
お化け屋敷の狭い通路で、展示の大きな岩に背中を預けるようにして倒れる足立。坂上の身体が重力に引かれてズルッと横倒れになり、岩に付いた大量の血が見えた。
「な、んで?足立?嘘だろ?おい!」
駆け寄って触るも、ぴくりとも動かない。脈の測り方なんてわからないが、呼吸をしていないのは一目瞭然だった。
「おい、足立?」
どれだけの間、同じような問いを繰り返し、同じようなことを確かめていたのかわからないが、加藤は冷たくなっていく足立を見て、遂にその事実を認めた。
自分が足立奈々恵を殺したのだと。
「だから逃げた。怖くなって、泣きそうで、堪らなくて。和田達に、足立置いて帰ろうって言って。私は、逃げた」
あの日と同じ、お化け屋敷の井戸の展示の前。チープなお化け屋敷の他の演出とは違うと一目でわかる、本物の血痕がべったりと残った岩がそこにある。
「それから数日、家で震えて過ごしてたんだけど、和田達が足立を広場で見たって言ってきて。なんのことかわからないけど、もしかしたら足立は生きてたんじゃないかって!」
自分のせいじゃない、足立は死んでないと思いながらも、どこかで死んだ足立が自分を探してるんじゃないかとも妄想していた。
「そう、だったの」
「だから、私なんてやっぱり生きてる資格ない!殺人ピエロの彼女殺したのも私!足立を殺したのも私なの!罪を探せ!?それならもう見つけた!私よ!私が全部悪いの!殺すなら私を殺してよ!」
加藤がそう叫んだ瞬間。坂上のスマホから剣闘士の入場が流れる。
「ラッキーピエロ」
坂上がそう呟いた瞬間。ピエロの面を被った足立が通路の奥から歩いて来た。
「奈々恵」
「殺して、あんたを殺したのは、私なんだから」
加藤は真っ直ぐ足立を見て、進んでいく。しかしそれを見た坂上が声を上げた。
「逃げよう!」
「もう良いの。あんたは違うでしょ?あんたには罪なんてない。逃げるならあんたが1人で逃げて」
「でも私だって!奈々恵を傷付けた!」
「この子は、そんなことであんたを怨んだりしないでしょ」
加藤のその言葉を聞いて、坂上は彼女が本当の意味で足立の友達だったのだと確信した。だからこそ、声を荒げる。
「お願い奈々恵!思い出して!ゆずさんとの思い出を!楽しかった思い出を!嬉しかったことを!」
その瞬間、足立の足が確かに止まった。
「あんたさ、ひとりで飯食って美味い?」
「え?」
「私昼飯忘れちゃってさ、一緒に食べてやるからわけてよ」
それは産まれて初めて、加藤ゆずが勇気を振り絞って自分から誰かを誘った瞬間だった。
足立は立ち止まったまま、その手を胸に当て、しっかりと加藤を見た。そして加藤の顔を後ろから伸びた手が掴み、そのまま力任せに血塗れの岩に後頭部を打ち付けた。
「え……?」
坂上が一瞬のことでなにが起こったのか把握出来ないでいる間、いつの間にかそこに居た殺人ピエロが、加藤の顔をボールのように掴んだまま、もう一度持ち上げてから岩叩き付ける。
ガッ。
ゴン。
ガン。
ガン。
ゴッ。
ガゴッガッガッガッゴンガッガンゴンゴッガッガンガンガンゴッゴンガン。
まるで音楽に合わせるように、演奏するように。手に持ったそれはもう、元がなんだかわからなくて。ただ茫然とそれを見ていた坂上は、気付けばボロボロと涙を流していた。あまりの恐怖に身体は震えることすら忘れ、息苦しくなる程に呼吸すら停止していた。
「は、はあはあ。はっはっははっ」
自分の荒い呼吸音だけが聞こえる。音楽はいつの間にか終わっていた。ただ目の前に加藤ゆずだった物が転がっていて、それを殺人ピエロが掴んだまま、ゆっくりとこっちを見た。
「キャハハ」
最後に殺人ピエロが持ち上げた加藤だったものの後頭部から、なにかがずるりと抜け落ちたのを見て、坂上は無言で走り出した。
「ご、ごめんね」
和田に怒られながら、苦笑いのまま頭を下げる足立。昔からお化け屋敷や肝試しはなにより苦手だった。それなのに今、夜の遊園地に侵入して肝試しをしている足立。何度も苦手だとは言ったが、決定的な拒絶が出来ないまま、遂にこんな場所まで来てしまったのだ。
「心霊写真になってるか!?」
「おぉ!殺人ピエロ写ってんじゃね!?」
「写ってねえじゃん」
「あれじゃない?事件があった場所じゃないと駄目とか?ネットにはどこって書いてないのよね」
3人が盛り上がっているのを見ると、もう止めようなんて言えない足立。ここで言えるのならば、もっと早くに言っていただろう。この遊園地にだけは、遊び半分で立ち入りたくなんてなかったのだから。
そんな足立達から離れて、ひとりで空を見ている加藤。和田は若干それが気に入らない様子で、加藤に声を掛ける。
「ねえゆず!次どこ行く!?」
「知らね、好きにすれば?」
今日はとことん乗り気じゃない様子。最近3人からの足立への風当たりが強くなって来たあたりで、なんだか面白くなさそうな顔をすることが増えて来たのを和田は知っていた。
正直和田からすれば、虐めるのが嫌なら止めれば良いのに、黙ってるだけで自分は加担してないスタンスを取る加藤が気に入らなかった。
そもそも前々から和田は加藤のおまけとして扱われることが多く、コンプレックスを感じていた。しかしグループ内での発言権は加藤の方が上なので、直接文句を言ったり、攻撃したり出来なかった。
だから、加藤が連れて来た足立をサンドバックにすることにしたのだ。途中で止められないように少しずつエスカレートさせていき、男2人も楽しくなるように工夫もした。そして今、男2人は楽しい足立虐めに積極的じゃない加藤に不満を抱くまでになった。
「じゃあ次はお化け屋敷行こうか!」
このまま行けばこのグループから加藤を追い出せるかも知れない。和田は密かにそんなことを考えながら、男2人を引き連れてお化け屋敷へ向かう。
「入れそう?」
「これなら入れるな」
さて次はどうしようかと和田が考えていたら、先に加藤が仕切り出す。
「足立、一緒に行こ。3人はここで待ってて」
「え、なん──」
和田が止めようとした時には、すでに加藤は足立を連れて中へ入っていた。
「勝手過ぎじゃない?」
怒る和田に対し、なんとも言えない顔をする男2人。仕方ないので3人は少し離れたところにあるベンチに座って加藤達の帰りを待った。
その間加藤はどんどんと奥へ進んでいく。足立は離れないように薄目で必死に後をついていき、途中で加藤がピタリと足を止めたことでようやく目を開けた。
「えっと」
「足立さ、なんで嫌なのに言わないの?」
「え?」
背中を向けたまま話し出す加藤。足立はなんとも言えずにただ黙っていた。
「私がなんとかしてくれるって思ってるから?」
「ち、違っ!」
「ならなんで?」
「私のわがままで空気悪くしたくないし」
「嫌なこと嫌って言うのと、わがままは違うでしょ?」
足立は振り向いた加藤が怒っているのだと思った。しかし実際はなぜか加藤の方が泣きそうな顔をしていて。
「あんたさ、なんの為に私らと居るの?」
「そ、れは」
友達だから。足立はそう胸を張って言えない。そしてそれを言って貰えない加藤は、自分にも足立にも苛ついて、行き場のない怒りを込めて、足立の肩を強く掴んだ。
「嫌ならもう来なかったら良いじゃん」
「それは、でも、またひとりに──」
「ならなんで自分で居場所作らないの!?」
足立の身体を乱暴に揺らす。加藤がここまで感情的になるのは、友達が出来ない足立に、自分の姿を重ねていたからだ。
人付き合いが苦手な加藤は、自分を守る為に髪を染めて、自分を守る為に高圧的な態度を取る。高校に入ってから、運良く同じような爪弾き者達とグループになれたが、それだって自分の実力なんかじゃない。
その証拠に、今足立に言った言葉は、まるまる自分にも当てはまるのだ。足立が虐められているのが見てられないなら、自分が止めれば良い。だが加藤には、それが出来ない。
「加藤さんにはわかんないよ!」
だから足立が大きな声を出した瞬間、ただそれだけで加藤の心は揺れる。
「加藤さんみたいに強くて!自分の思ったことなんでも言える人には!私の気持ちなんかわかんないよ!」
「そん、なの」
違うのだ。全く違う。加藤はまるで自分が足立を騙しているような気さえしてきて。
「私が目障りなら、もう来ない。加藤さんが誘ってくれたんだもん。加藤さんに迷惑掛けてまで居たくないから」
足立はとことん、人に迷惑を掛けるのを嫌う。自分のことなんて二の次、三の次である。だから人に意見なんて出来ない。迷惑だったらどうしようと考えるだけで、動けなくなる。唯一それを違えたのが、親友との決別となった。
「お前!違うだろ!?なんで!なんで!」
「は!離して!痛いよっ!」
肩ではなく、今度は胸ぐらを強く掴んで乱暴に足立の身体を振り回す加藤。感情的になっていて力がコントロール出来ていない。そして加藤は、力強く足立を後方へ放り投げた。
「勝手にしろよ!」
思った以上に勢い良く飛んだことですぐに熱が下がり、起き上がって来ない様子を見て徐々に汗が噴き出てくる。
「え?おい、足立?」
お化け屋敷の狭い通路で、展示の大きな岩に背中を預けるようにして倒れる足立。坂上の身体が重力に引かれてズルッと横倒れになり、岩に付いた大量の血が見えた。
「な、んで?足立?嘘だろ?おい!」
駆け寄って触るも、ぴくりとも動かない。脈の測り方なんてわからないが、呼吸をしていないのは一目瞭然だった。
「おい、足立?」
どれだけの間、同じような問いを繰り返し、同じようなことを確かめていたのかわからないが、加藤は冷たくなっていく足立を見て、遂にその事実を認めた。
自分が足立奈々恵を殺したのだと。
「だから逃げた。怖くなって、泣きそうで、堪らなくて。和田達に、足立置いて帰ろうって言って。私は、逃げた」
あの日と同じ、お化け屋敷の井戸の展示の前。チープなお化け屋敷の他の演出とは違うと一目でわかる、本物の血痕がべったりと残った岩がそこにある。
「それから数日、家で震えて過ごしてたんだけど、和田達が足立を広場で見たって言ってきて。なんのことかわからないけど、もしかしたら足立は生きてたんじゃないかって!」
自分のせいじゃない、足立は死んでないと思いながらも、どこかで死んだ足立が自分を探してるんじゃないかとも妄想していた。
「そう、だったの」
「だから、私なんてやっぱり生きてる資格ない!殺人ピエロの彼女殺したのも私!足立を殺したのも私なの!罪を探せ!?それならもう見つけた!私よ!私が全部悪いの!殺すなら私を殺してよ!」
加藤がそう叫んだ瞬間。坂上のスマホから剣闘士の入場が流れる。
「ラッキーピエロ」
坂上がそう呟いた瞬間。ピエロの面を被った足立が通路の奥から歩いて来た。
「奈々恵」
「殺して、あんたを殺したのは、私なんだから」
加藤は真っ直ぐ足立を見て、進んでいく。しかしそれを見た坂上が声を上げた。
「逃げよう!」
「もう良いの。あんたは違うでしょ?あんたには罪なんてない。逃げるならあんたが1人で逃げて」
「でも私だって!奈々恵を傷付けた!」
「この子は、そんなことであんたを怨んだりしないでしょ」
加藤のその言葉を聞いて、坂上は彼女が本当の意味で足立の友達だったのだと確信した。だからこそ、声を荒げる。
「お願い奈々恵!思い出して!ゆずさんとの思い出を!楽しかった思い出を!嬉しかったことを!」
その瞬間、足立の足が確かに止まった。
「あんたさ、ひとりで飯食って美味い?」
「え?」
「私昼飯忘れちゃってさ、一緒に食べてやるからわけてよ」
それは産まれて初めて、加藤ゆずが勇気を振り絞って自分から誰かを誘った瞬間だった。
足立は立ち止まったまま、その手を胸に当て、しっかりと加藤を見た。そして加藤の顔を後ろから伸びた手が掴み、そのまま力任せに血塗れの岩に後頭部を打ち付けた。
「え……?」
坂上が一瞬のことでなにが起こったのか把握出来ないでいる間、いつの間にかそこに居た殺人ピエロが、加藤の顔をボールのように掴んだまま、もう一度持ち上げてから岩叩き付ける。
ガッ。
ゴン。
ガン。
ガン。
ゴッ。
ガゴッガッガッガッゴンガッガンゴンゴッガッガンガンガンゴッゴンガン。
まるで音楽に合わせるように、演奏するように。手に持ったそれはもう、元がなんだかわからなくて。ただ茫然とそれを見ていた坂上は、気付けばボロボロと涙を流していた。あまりの恐怖に身体は震えることすら忘れ、息苦しくなる程に呼吸すら停止していた。
「は、はあはあ。はっはっははっ」
自分の荒い呼吸音だけが聞こえる。音楽はいつの間にか終わっていた。ただ目の前に加藤ゆずだった物が転がっていて、それを殺人ピエロが掴んだまま、ゆっくりとこっちを見た。
「キャハハ」
最後に殺人ピエロが持ち上げた加藤だったものの後頭部から、なにかがずるりと抜け落ちたのを見て、坂上は無言で走り出した。
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