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番外編

春、う・ら・ら? その13

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エトルは、今日も長官室で佇んでいた。


「コンバル皇国、なあ……ミル嬢、さぞやがっかりしてるんだろうな……」


なんて、一人言て。


「そうでもなさそうですよ?ダリシアにもちょくちょく会いに来ますし、エマ様やシャロン様とも連絡のやり取りをしているようですし。精力的に活動しているように見受けられますが」


エトルの一人言に、今日は返す人がいる。副長官のルーエンだ。少し前にダリシアとの新婚旅行から帰って来たのだ。


魔道具輸出の第一便が出発し、そしてコンバル皇国行きが延期になった日から、一週間経っている。


「……そうなのか?」

「ええ」

「そうか、それは……良かった」

「始めは……やはりずいぶんと落ち込んで、他の国の便に同乗するのも辞退したそうですが、その次の日からは精力的に動いてるようですよ」

「……詳しいな」

「ええ。もちろんダリシア経由で聞いた話です」

「ああ、そうだな、そうか。まあ、元気なら良かった」


そんな事を言いながら、エトルは複雑だった。いや、もちろん、ミルに落ち込んでいて欲しい訳ではない。訳ではないのだが。


「……勝手だな」

「はい?何ですか?」

囁くような一人言は、ルーエンの耳にも届かなかった。


「何でもねーよ。さて、俺らも仕事頑張るか!」

「はいはい。と、言いましても、ここ何日かおかしいのはエトル様ですからね?私が戻る前から変だった、ってトーマス様も心配されてましたよ」

「そうか?疲れてるんかな?」

「こちらが聞いているのですがね」


ルーエンは、これ以上話す気がなさそうな上司にため息を吐きつつ、仕事を再開することした。


それから更に二日後。


「ミル嬢が?陛下に謁見希望?が通ったって?」

「はい。謁見は謁見ですが……会議のような感じです。詳細を申し上げれば、王妃様とエマ様、宰相閣下も同席されます。それとエトル様、あなたもです」

「俺も?」

「はい。魔道具絡みではないですか?予定は急ですが、三日後です」

「本当に急だな」

「そうですね。でも皆様ご都合をつけられたそうで。エトル様も可能ですので、お願いします」

「……分かった」


何だろう、とエトルは思う。まさか、コンバルに行くとか言い出さないよな?彼の国は思いの外穏健派が粘りを見せ、クーデターは失敗に追い込めそうな勢いがあるようだが、今が一番何が起こるか分からない時期で、危険だ。いや、ミル嬢なら有り得る?しかし、カリンも猛烈に反対していた。さすがの彼女もマーシル商会に逆らってまで強行はしないはず。

でもそれなら、なぜ陛下ジークまで?


「……まあ、三日後に分かるか」


考えるのを諦めた上司を見つめて、ルーエンは不思議な微笑みを浮かべていたが、エトルはそれに気づかなかった。



─────────────────────────


ミル達の出身国の間違いに、終盤に気づいてビックリです。訂正しました。

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