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第二章 夢と魔法の国

15.運命の?お茶会。now.2

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「おや、もう隣のテーブルにフィス来ているね。ねぇ、ひとつ聞いてもいい?マリーア嬢、リリアンナ嬢、イデアーレ嬢は、フィスの婚約者になりたいと思う?」


女子会のちょっとした間に、ヒンター様がさらりと割り込み、自然とちょっとした爆弾を落とす。


「ヒンター兄さま?先ほどわたくしに何かおっしゃいませんでしたっけ?」

を目的にしろと言っている訳じゃないだろ。純粋な興味だよ。どうもお三方はそちらにあまり興味がなさそうだから」


「ね?」と、首をこてんと横に倒して、イケメンが可愛い子ぶっているけれど……いや、確かに可愛いのだろうけれど、何だろう、この胡散臭い感じは。

隣のマリーアを見ると、もはや怪訝な顔を隠そうともしていない。さすがにちょっと、と思い、指でツンツンして『姉さま、顔、顔!』とこそっと伝える。意識を取り戻したらしいマリーアは、慌てて笑顔固定に戻す。


イデアーレ様も困惑気味だったが、意を決したようにヒンター様を見て、口を開いた。


「このような場にお呼びいただき、誠に光栄なのですが…………わたくしは、魔法の研究に人生を捧げたく思っております。その、没頭してしまうと、えっと、周りに迷惑をかけてしまうことも多々あり……つまり、本当に分不相応でして、お妃様など、烏滸がましすぎて無理なのです」

「……なるほどね。研究者にありがちな感じなのかな?」

「お恥ずかしながら」

「いや、女性には珍しいけれど、研究者の日々の努力の結果で我々は便利に暮らしている訳だからね。素晴らしいと思うよ」

「あ、ありがとう、ございます!」


二人は笑顔を交わし会う。うんうん、自分の研究とか好きな事を認めてもらえるって、嬉しいよね。


………………って、ちがぁーう!違わないけど、違う!乗り遅れたじゃん、私!


いや、落ち着け私、ヒンター様は殿下ではない。まだ間に合うはずだ。


「わたくしも、できればいただいた魔力を最大限に使えるよう……そうですね、理想は冒険者ですけれど、さすがに無理だと思うので、魔物討伐騎士団の魔術師でも目指そうかしら……」


何とも思い付きのようだが、せっかく大量の魔力量を授かったのなら、それを活用してみたい。国も護れるしね?決して魔法をあれこれ試して使いたい訳じゃないぞ、うん。


「リリー!何を危険な事を言ってるの!」

「大丈夫じゃないですか?基本、魔術師は後方支援ですし。お給料も良いので、生活も安泰です!」

「ぷっ。危険より給金なんだ?」

「何を仰っているのですか。お金は大事じゃないですか。わたくし、侯爵令嬢の生活水準は落としたくありませんの。なら、自分でも稼がないとでしょう?働かざるもの食うべからずです!魔物も減れば、国民も助かる。強い魔術師が協力すれば、騎士団も助かる。Win-Winです!」


話しているうちに、何だか一番良いような気がしてきた。これ、本気で目指そうかな?

マリーア以下四人は呆気にとられているし、ヒンター様は明らか笑いを堪えているけれど、私は一気に捲し立てた。ここまできたら言ったもん勝ちよ!


「……王妃になって、王様を支えるのも大きな仕事だよ?生活水準も上がるんじゃない?」

「いえ、わたくし、ここからここまで下さる?って、セレブ買いをしたいんですよね。王妃様だと無理でしょう?税金をそんな無駄に使えないし、自分では働けないし。だから、魔術師で!もし結婚をしなくてはならなくなったら、お父様にわがままを言って、仕事を続けさせてくれる人でお願いします!」


そうよ、せっかくのファンタジー世界!満喫したい(結局の本音ココ)!!そして贅沢もしたい!魔法の才能を生かすのは、今でしょ!


「もう、本当に何を言ってるのよ、リリー」

「いや、結構本気で考え始めました。お姉さま、侯爵家を宜しくお願いいたします」


動転し過ぎて、先ほどからすっかりリリー呼びになってしまっているが、そこはスルーしてキリリとマリーアを見つめる。


「そんな顔をして、お願いしますじゃないでしょう!侯爵家の後継は貴女よ、リリー!」

「?長女はお姉さまですよ?」

「~~~だって、わたくしは!」

「ええ?お姉さまだって、お父様の血を受け継がれているではないですか。わたくしと同じです。それとも何ですか、誰かに何か言われましたか。言ってくだされば、魔法を覚えてわたくしが!」


私の言葉に、ビクッとグローリア様の肩が上がる。やっぱりこの人、それらしいことをちょっと考えたな!


「違うわ、そんな人はいないけれど、わたくしの気持ちの問題で……。……分かりました、リリーがどうしてもと言うなら、わたくしも聖魔法をしっかりと習得して大怪我くらい治せるようにして、リリーと共に治癒魔法師として騎士団に入ります!」

「なっ~~~、にを、仰います、お姉さま?危険です!」

「なぜ?先ほど貴女が大丈夫って言ったのよ?それこそ治癒魔法師は後方でしょ?リリーが心配でヤキモキするより全然いいもの」

「お姉さま……」


と、私たち姉妹の話し合い(?)が佳境に入った所で、


「ぶっ。何この姉妹おもしろ、ぶぶっ、ダメだ!」


アーッハッハッハと、ヒンター様が一人大爆笑を始めてしまった。


余りの笑い声に他のテーブルの子達も振り返ってこちらを見る。マリーアと私はその視線に気付き、さすがに小さくなる。


「……ヒンター。笑いすぎだ」

「だって、おま、王太子を完全無視だぞ」


マークス様も肩が震えていますけどね。でも、さすがに調子に乗りすぎた。というか、楽しみになりすぎてお茶会であることを忘れてしまっていた。これじゃ、完全に子どもだ。いや、子どもだけどさ。10歳だし。


「申し訳ございません。はしたない真似を」


マリーアが謝罪を始めたので、私も慌てて後に続く。


「……申し訳ございません、決して、殿下を蔑ろにですとか、そう言ったことではなく……」

「大丈夫、大丈夫。フィスには言わないよ。……オレが気に入ったし」

「えっ?」


後半部分が聞こえなかった。


「何でもない!それより笑いすぎてごめん、夢としてはすごいと思うぞ」

「ありがとう、ございます……」


いい笑顔だ。いい笑顔で言ってくれてるのだけれど、何だろう、この違和感は?悪いような嫌な感じとは違った、違和感。


(まだ検索魔法とか使えないし。考えても仕方ないか。王宮なんだから、危ないことはないだろうし)


と、私が一人考えつつ、グローリア様とイデアーレ様にも謝っていた時。




「……ヒンター様」

「なんだい?」

「あの子を……わたくしの大事な大事な妹を望むのであるならば、正面からでお願いします」

「マリーア嬢、君は……気づいて……?」

「でないと絶対、認めませんから。不敬だろうと、何だろうと」


怪訝さを隠さないマリーアと、驚きを隠せないヒンター様の、何やら不穏な会話がされていたことに、私は気づかなかった。

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