上 下
4 / 37
プロローグ

4.過去とこれから

しおりを挟む
クズとの婚約が破棄されて何日か経ち、私はシスと共に街へ出ていた。バカヤーニ公爵がクズの関わっていた事業を見直すと聞いたからだ。

「本当にお嬢様はお人好しです」

シスがやれやれと言った感じで馬車内でそう溢す。私がその事業を引き継ぐことにしたからだ。

「だって、アウダーシア公爵家うちの調べで、やっぱりみんな騙されていたのが分かったじゃないの。バカヤーニ公爵からも好きにしていいと言われたし、公爵家との関わりを無くすとなると……彼女たちだって、大変でしょう?しかもクズのくせに、ちゃんと仕事もしていたじゃない。もったいないもの」

「……それはそうですが」

そう、クズはこれから伸びるであろう業界にしっかり手を出していた。いや、女性だけにじゃなくね、事業にもね。私が和博と呼んだら反応していたから、前世の知恵でもあったのだろうと推測できる。

そして今日は、きっかけ……今回の婚約破棄の原因になった形になってしまったアズさんのお家から挨拶巡りだ。

ワイズ家は今頃緊張しているだろうなあ。大袈裟ではなく断頭台にに上がるくらいの気持ちで。……可哀想に。うちもあっちも公爵家だもんねぇ。

「お嬢様、到着したようです」

馬車が一軒の大きな商会の前で停まる。ワイズ家に着いたようだ。ワイズ家の皆様ほどではないのは重々承知だが、私も緊張している。

そう、女性たちは皆あのクズに騙されていた。……いい子達なのだろうと思う。けどやはり、前回のように浮気相手に上から目線でクスクス笑われたり、見せびらかされたり開き直られたりいろいろしたことが過ってしまう。クズにも自分にも腹が立つ嫌な思い出。

ダメダメ。過ぎたことよ。今は考えない。

「お嬢様?」

はっ、いけない、シスに心配をかけてしまうわ。

「ごめん、大丈夫よ。行きましょうか」

従者にエスコートされ、馬車から降りる。すると。

「アウダーシア公爵令嬢、お待ちしておりました。此度は大変なご迷惑をお掛けしました。申し訳ございません」

何と、エントランスの手前でアズさんが待っていた。緊張しているのだろう、顔色は青白いし、手足も小刻みに震えるのをぐっと我慢しているのが分かる。なのに、自分の責任とでも言うようにシャンと立とうとしている。

何て潔い子なのかしら。

やっぱり私の勘の通り、あのクズにはもったいない子だわ。


「アズさん、先日は……」
「ーーーっリア!良かった、会えた!!」

乙女の緊迫したやり取りが始まろうとしたその時、聞き慣れたロイエ羽虫の声がした。

「あら?何故かうるさい羽虫の声が私の名前を呼んだような。気のせいかしら?」
「気のせいですわ、お嬢様。アズ様。中へご案内をお願いします」
「え、あ、はい!」

アズさんも気付いたようだが、ガン無視している私達の様子を見て、屋敷内に案内しようとしてくれた。……のだが。

「リア、待って!探していたんだよ、家に行っても取り合って貰えないし!婚約破棄なんて、何かの間違いだろう?だって僕たちは運命で結ばれている!今だって会えた!だから……!」

羽虫が騒ぎながら私の腕を掴もうとしてきた。

その刹那。

シスがクズの腕をくるりと捻って身体ごと回転させ、地面に叩きつけた。

そうだった。シスのお家は武功を挙げて男爵家になったお家柄だった。私の護衛も兼ねてくれていたのだったわ。しばらく平和で忘れていたけれど。あれ、それに確か、前世の玲子のお家も合気道の師範のお家だったような……?

「お嬢様に触ることは許しません」

きゃー!かっこよ!ロイエも剣術なかなかなのに、ものともしないのね!うちの侍女、かっこよ!!

「なっ……!侍女ごときが!僕を誰だと」
「バカヤーニ公爵令息なのは認識しております。が、お嬢様の為に貴方を蹴散らす許可を、バカヤーニ公爵様から頂いておりますので。『……今回は私の勝ちね、和博』」

あっ、最後日本語だ。阿呆ロイエもびっくりしてるわ。

『……日本語、なぜ』
『お嬢様を……彼女を泣かせたら只じゃおかないと、私、何度も何度も言ったわよね?』

シスのその言葉に、ロイエがハッとした顔をする。

『……まさか、玲子、か?』
『ご名答。あんたに馴れ馴れしく呼ばれるのは不愉快極まりないけれど』

シスがロイエを地面にがっちり固めたまま、心底嫌そうな顔をして答える。

『何だよ!それなら分かるだろ?今回は学園も仕事もちゃんとしたじゃないか!全てリアのために……リアと結婚するために!今生で会えたのだって、運命的だろ?僕は前世から祈っていたんだ、次も会いたいって!それが叶ったんだ、リアと僕は結ばれるはずなんだ……』

ロイエはシスに向かって叫んだ後、一人言のように言葉を続けて、私の方を見る。


『リア、リアも思い出してくれたんだろう?リアも会いたいと思っていてくれたんだろ?ねぇ、今回の僕は違うよね?リアの為に頑張ったんだ。この前だって、許してくれたからああ言ってくれたんだろう?の子達はいい子ばかりだよ!リアに嫌なことをする子はいないって!だから大丈夫だよ。愛しているんだ、戻って来てよ、リア!』

ロイエが悲痛な顔をして、私に懇願してくる。ああ、よくあったなあ、このシチュエーション。

「……シス、腕を離していいわ。彼を立たせてくれる?」
「お嬢様、でも」
「大丈夫よ」
「……承知致しました」

シスが渋々拘束を緩め、ロイエの首根っこを掴むようにして立たせる。ロイエは不満そうな顔をしながら乱れた服を直して、満面の笑顔で私の方を向く。

私も、満面の笑顔でロイエを見る。

「リア、やっぱり分かって……!」

そして、その笑顔のまま、ロイエの横っ面を思いっきり振り抜いて引っ叩いた。

油断していたであろうロイエは、なかなかな勢いで横に倒れた。

「リ、リア……?」

ロイエが今起きた事が信じられないと言った顔で、倒れ込んだ状態のまま、叩かれた頬を触りながら私を見つめる。

「いった~い!叩かれるのって、叩く方も痛いのよって本当なのね!」

「そうですよ。大丈夫ですか、お嬢様。お嬢様の大切な手が赤くなってしまったじゃないですか。馬鹿のためにもったいないことを。言っていただければ、私がやりましたのに」

シスが私の手を擦りながら心配そうに話す。もう、過保護なんだから。

「ん~、そうかもしれないけれど、すっきりしたわ!前はできなかった事だしね!はっ、そうか、私はこれがしたかったのかもしれないわね!」

「り、りあ……?」

まだ呆然としているロイエを、私はまた満面の笑顔で見遣る。

『何を勘違いしているのか分からないけれど。私は貴方に会いたいと思ったことなんて、ただの一度もないわ。愛してる?あんたが愛してるのは自分だけでしょう?しかもこっちはいい子達とか……最低!!本当に馬鹿なの?馬鹿なのね?』

『え……』

『ああ、もう、本当に黒歴史!こんな馬鹿に馬鹿にさろれてるってことよね!あり得ないわ……昔の私にすぐ目を覚ませと肩を揺すりまくりたい……』

『気持ちは分かりますが、無理ですよ、お嬢様』

『分かってるわよ。でも思うじゃない。このクズにこんなにナメられてるのよ?』

『り、あ……?』

ロイエの間抜けな呼び掛けに、私はイラっとしながら奴の方を向いた。その顔を見て、ロイエはビクッと肩を上げる。

「愛称呼びもするなと言ったでしょ?前から思っていたけれど、どうすれば言葉が通じるの?

「りあ……そんな……」

何度言っても愛称呼びを止めない馬鹿に、人前なのを忘れて深いため息を吐く。

『運命なんて冗談じゃないわ。再会したのだって不愉快極まりないくらいよ。思い出したのだって……ああ!あんたの顔を見てすぐじゃなくて、あのシチュエーションで思い出したのだから、私の危機管理能力?生存本能?が働いたのでしょうね、きっと。同じ目に合わないように』

『きっとそうです。さすがお嬢様です』

『そうよね。シスを見ても思い出せなかったのは、前の記憶があまりにも嫌な記憶だったから、防衛本能が働いていたのではないかしら』

『なるほど。そして危機に反応して思い出したと……ええ、納得できます。さすが私のお嬢様』

『シスったら、褒めすぎよ!』


私たちがキャッキャと盛り上がるのを、呆然と見ているロイエ。


「あ、あの、アウダーシア公爵令嬢……」

控えめに声を掛けてきた、アズさんの言葉にハッと我に返る。しまったわ、放置してしまった。周りを見てみると遠巻きに人が増えてきている。

あら、ちょっと良くないかしら。でもここまで来たら、彼女も当事者だ。

「アズさん。失礼しましたわ。貴女からも何かありましたらどうぞ?安心なさって、何を言っても不敬にはならないように当家が取り計らいますから」
「公爵令嬢……」
「どうぞ、私のことはシャルリアと」
「シャルリア様。わ、私……」
「アズ……?」

ロイエが驚いた顔でアズさんの方を向く。いや、今気付いたんかい!

そしてすっくと立ち上がり、妙に表情を輝かせてズンズンとアズさんに近づいて行く。

「アズ!君からも言ってくれないか?僕と本気で結婚しようなんて思ってなかったろ?お互いに楽しかっただけだって!君の家の事業だって、僕が……!」

ロイエはアズさんの両腕を掴んでそんな事を言い出した。

はあああああ?!なんて、なんてクズなの!そこは謝るところじゃないの?本当にどんな思考回路?

「シス」
「はい」

このままだとアズさんも危険と、シスに指示を出そうとした時だった。


アズさんが意を決した顔で、ロイエの腕を振りほどいて奴を突き飛ばした。

「ア、アズ……?」

アズさんの可愛い力では倒れ込まなかったものの、拒否されると思っていなかったであろうロイエは、また呆然としている。

「わ、私は、ロイエ様を本当にお慕いしておりました!信じておりました!きっと他の皆さまもそうです!……夢、みたいでしたけれど……夢のように幸せな日々でしたけれど……シャルリア様のような素敵で格好いいご婚約者様がいらしたなんて……!!私……なんて事を……!」

アズさんはポロポロと泣きながら必死で言葉を続ける。

「シャルリア様。みんな、皆、騙されていたんです。私、どんな罰でも受けます。他の方のことは助けてあげてください!お願いします!」

「アズさん……」

なんていい子~~~!!なぜだろう、前回の馬鹿より今回の馬鹿の方が何百倍もムカつく~!!

「しゅ、修道院でもは、入りますし、い、命が必要なら」

わあああああ、やっぱり深刻になってる!そりゃそうか!もう、いつまでも馬鹿に構っている暇はないわ。本当に人に無駄な時間を過ごさせるわね、このクズ。

「アズさん。そのような心配はなさらないで。本日は、私がこのクズの事業を引き継ぐためのお話に参りましたのよ。貴女たち被害者が罰を受ける必要はございません。ご両親もいらっしゃるのでしょう?だいぶお待たせしましたよね。申し訳ないわ。案内してくださる?」

「っ、はい!」

私は威圧感を与えないように、努めて優しげな笑顔でアズさんに言葉をかける。アズさんは顔を赤らめて、嬉しそうに返事をしてくれる。可愛いわ。クズが気に入るのも分かるわ。

私たちが踵を返してアズさんの家に入ろうとすると、クズがまた叫んで来た。

「リア!待って、まだ……!」


「まだ、何?もうこれ以上、私に無駄な時間を使わせないで。あなたと違って、私はあなたに拘る必要はないのよ。『だって私はもう、男が全てあなたのようなクズじゃないことを知っているのだから。あなたと別れてから、私はずっと幸せだったのよ?』今度私に近付いたら、然るべき所に相談するわ。……では、ごきげんよう」

「リ……!っつ!」

懲りずに私の肩を掴もうとしたロイエの腕をシスがまた締め上げる。

『ここまで言われてもまだ分からない?本当にどうしようもない男……。そうか、馬鹿にはわからないか……じゃあ、体に分からせるしかないわね?このまま帰らないなら、両手両足の骨を折るわよ?』

「なっ、そんなこと……」

「出来ないとお思いですか?」

締めを更にきつくするシス。怖い~!けど格好いい~!

「わ、分かった、帰る、帰るよ!」

「お嬢様に近付くことも禁止です」

「そ、れは……!ぐっ、わ、分かった……」

無表情なシスにかなりキツく締め上げられ、ようやくロイエは諦めてトボトボと帰って行った。やれやれ。

「さて、ようやく邪魔者がいなくなった所で!前向きな話を始めましょう、アズさん!」


そうよ、私たちはまだまだこれから。


あんな奴の為に人生を狂わせる必要なんてないのよ。


「一緒に進みましょう」


楽しくねっ!





─────────────────────────



次回、アネシス視点で終了予定です。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

婚約を正式に決める日に、大好きなあなたは姿を現しませんでした──。

Nao*
恋愛
私にはただ一人、昔からずっと好きな人が居た。 そして親同士の約束とは言え、そんな彼との間に婚約と言う話が出て私はとても嬉しかった。 だが彼は王都への留学を望み、正式に婚約するのは彼が戻ってからと言う事に…。 ところが私達の婚約を正式に決める日、彼は何故か一向に姿を現さず─? (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ

水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。 ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。 なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。 アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。 ※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います ☆HOTランキング20位(2021.6.21) 感謝です*.* HOTランキング5位(2021.6.22)

今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~

コトミ
恋愛
 結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。  そしてその飛び出した先で出会った人とは? (できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです) hotランキング1位入りしました。ありがとうございます

妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。  マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。

処理中です...