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18.エピローグ

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一樹たちが帰った後の森山邸ーーー詳しい手続きは、また連絡するとなってーーーは、まだまだ不思議な空気に包まれていた。不思議、というよりは、久しぶりのふわふわ感というか、そわそわ感というか。

「良かったな、壮介。話を受けてもらえて」
「ああ、そうだな……」

壮介は、反省真っ最中だ。

「もう、五年経つんだよな……ずっと、二人に心配を……」

そう一人言を言い、改めて飾ってある折り紙メダルと花束を見て、目を細める。形がまちまちの花たちが愛おしい。お守りは、既に鞄に装着済みだ。
手紙はもう、何十回も読んだ。『パパと直接話せるか不安だから、お手紙も書きました』というくだりには少し心が削られるが、大切な宝物だ。

(明日にでも、額縁を買ってこよう)

自分でも驚くくらいに晴れやかな気持ちだ。それと共に、罪悪感というのか、何と言えば言いのか、闇落ちしていた自分に対する羞恥心もすごいのだが。

今日は間違いなく、自分の人生で一番幸せな誕生日だった。

その幸福を運んでくれた子どもたちを、絶対に幸せにしようと心に誓う。

そうだ、それと。

「頼。お前の結婚の話も聞かせてくれ」

珍しく動揺して、お茶を入れようと持ったカップを落としそうになった、従兄弟の幸せも見守らなくては。



◇◇◇


『ひとみちゃん、ひとみちゃん』
「ん……?ひまりちゃん……?」
『ごめんね、起こしちゃって』
「大丈夫~。今日も来てくれたの?」

そう言って、ひとみは目を開けた。もう病院は消灯時間で、病室は真っ暗だ。でも、不思議とひまりの姿は良く見えた。

ああ、そうか。と、ひとみは気づく。

「ひまりちゃん、かえっちゃうのね?」
『えっ、ひとみちゃん気づいてたの?私が、もう……』
「うん。わたしね、まえからたちが見えるの。お母さんはしってたの。でも、人に話しちゃダメって。兄ちゃんたちもしらないの」
『そっか……』
「こわい人もいるけど、ひまりちゃんはあったかくて優しくて、天使さまかな?と思ってたの。兄ちゃんたちにも見えてたし」
『そっか……』

(知っていたのに友だちって……本当にお人好し兄妹だなあ)

自分で頼んだことを棚に上げて、ひまりはそんなことを思う。そして、そんな兄妹だからこそ、ギフトを贈ることができるのだけれど、と、一人言る。

『ひとみちゃん。今まで仲良くしてくれて、ありがとう。最後のプレゼントを受け取って』

ひまりはそう言って、ひとみを優しく抱きしめる。ひとみは自分の中に、優しい優しい何かが入ってくるのを感じた。

「なんだか……。あったかくて、気持ちいいな……」
『良かった。ゆっくり休んでね。おやすみ、ひとみちゃん』
「う、ん……、おや、す……」

挨拶の途中で、ひとみはすーっと眠りについた。その顔は、とても穏やかだ。

『バイバイ。また、ずーっと後で、会おうね』

(優しい優しい、私の、私たちの新しい家族)

ひまりは、待っていてくれた母と共に、今度こそ上へ上へと帰って行った。


次の日、お見舞いに来た兄たちが、ひとみがひまりの正体を知っていたことに驚くのだが。

その数週間後、なぜかひとみの病状がぐんぐん良くなり、退院の見通しが立つという、更に驚くことになるとは、まだ誰も知らないのであった。
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