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8.仲直り計画
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「では、ひまりとパパの仲直り作戦を考えましょ~!」
「優真、楽しそうだな。あ、ひまり、今日もお見舞いありがとうな。ひとみも喜んでた。『ひまりちゃんといると、体が楽なかんじなの』って」
「ほんとに?よかった!」
初夏の、まだ爽やかな土曜の午後。
多くの家族連れが遊んでいる。
そして俺たちは昨日の約束通り、公園に集合して話を始めたのだけれど。
「何だか、視線が痛いな……?」
「妹いても、男三人は目立つのかなあ?」
「今、変なの多いしね」
三人で話し合った結果、うちのアパートに招待することにした。
「ひまり、うちで大丈夫か?お手伝いさんは?」
「今日は一人で来たの!だいじょうぶだよ」
「そうなのか?ひまりは一人じゃ危ないんじゃないか?帰りは送るからな!」
「うん、ありがとう」
ひまりは一瞬きょとんとしてから笑顔になる。
そこできょとんとしたらダメだろうが、お嬢様!
親父さんにも不穏な影がチラついているのだし。
「ちゃんと分かってるのか?」
ここは、ちゃんと説明を……。
「兄ちゃん、兄ちゃん、早く行こう」
「うん、何だかますます見られてる」
えっ、と思って振り返ると、何人かに不思議そうな顔をされていた。
(俺たち、そんなに目立つ?ひとみも連れて来たりしたけどな……)
何だか変な感じだが、悪目立ちはしたくない。
「よし、帰ろう」
俺らはそそくさと公園を後にして、アパートに戻ったのだった。もちろん帰りながら、ひまりにはきちんと注意した。ひまりはそれを、とても嬉しそうに聞いていた。
◇
「じゃ、改めて作戦会議だね!」
「本当に張り切ってるな、優真」
「話し合いはやっぱり家がいいな。麦茶も飲めるし。ほい、ひまり」
「ありがとう、翔兄ちゃん」
アパートに帰り、さっそく話し合いの再開だ。
「うーんと、まず、ひまりは何か考えているのか?」
まずは本人にやりたいことがあるかだな。
「うんとね、来週ね、私誕生日なの」
「そうなんだ!おめでとう」
「ふふっ、ありがとう優兄ちゃん。でね、次の日1日ちがいで次の日パパなんだ。その日に、プレゼントをわたせたらいいなあって」
「へぇ!いいんじゃない?誕生日に仲直り!」
「ほんと?翔兄ちゃん」
「俺もいいと思うぞ~」
エヘヘと照れ笑いのひまりもかわいい。
「それでね、前にパパにお守りを作ってあげるって言ったから、作りたいと思って。あと、お手紙」
「いいね!あ、それと折り紙で金メダルとかは?それと、花束!」
「あー、ひとみとも作ったな、母の日に。どう?ひまり」
ひとみが折り紙が好きで、俺たち兄弟もずいぶんと付き合わされたもんな。俺たちも自然と腕が上がっている。
「いいかもな。枯れないし、結構キレイにできるもんだぞ。ほら、これ、母の日に四人で作ったんだ」
俺は今年の母の日に、四人で作った花束を見せる。……あの時は、まさかこんな状況に陥るなんて考えてもいなかったな。今思えば、穏やかで楽しい日常だった。
「うわあ、きれい!チューリップに、バラもある!いろいろなお花でかわいい。紙で作れるんだね。これ、みんなで作ったの?すごい!だけど、わたしにできるかなあ」
ひまりの元気な声に、沈んだ思考から我に帰る。
今は、ひまりパパのためにだ。
「ちょっと難しいけど、大丈夫だよ。僕たちも手伝うから」
「ありがとう!優兄ちゃん」
「さっそく1個作ってみようか」
「うん、翔兄ちゃん」
いっぱい作るぞー、と、さっそく折り紙を出してきて折り始める。ひとみが好きだから、たくさんストックがあるのだ。このご時世、100均でもいろんな種類がたくさん売っているので、ありがたい。
うん、今は、ひとみの病院と、ひまりの計画に集中だ。
「優真、楽しそうだな。あ、ひまり、今日もお見舞いありがとうな。ひとみも喜んでた。『ひまりちゃんといると、体が楽なかんじなの』って」
「ほんとに?よかった!」
初夏の、まだ爽やかな土曜の午後。
多くの家族連れが遊んでいる。
そして俺たちは昨日の約束通り、公園に集合して話を始めたのだけれど。
「何だか、視線が痛いな……?」
「妹いても、男三人は目立つのかなあ?」
「今、変なの多いしね」
三人で話し合った結果、うちのアパートに招待することにした。
「ひまり、うちで大丈夫か?お手伝いさんは?」
「今日は一人で来たの!だいじょうぶだよ」
「そうなのか?ひまりは一人じゃ危ないんじゃないか?帰りは送るからな!」
「うん、ありがとう」
ひまりは一瞬きょとんとしてから笑顔になる。
そこできょとんとしたらダメだろうが、お嬢様!
親父さんにも不穏な影がチラついているのだし。
「ちゃんと分かってるのか?」
ここは、ちゃんと説明を……。
「兄ちゃん、兄ちゃん、早く行こう」
「うん、何だかますます見られてる」
えっ、と思って振り返ると、何人かに不思議そうな顔をされていた。
(俺たち、そんなに目立つ?ひとみも連れて来たりしたけどな……)
何だか変な感じだが、悪目立ちはしたくない。
「よし、帰ろう」
俺らはそそくさと公園を後にして、アパートに戻ったのだった。もちろん帰りながら、ひまりにはきちんと注意した。ひまりはそれを、とても嬉しそうに聞いていた。
◇
「じゃ、改めて作戦会議だね!」
「本当に張り切ってるな、優真」
「話し合いはやっぱり家がいいな。麦茶も飲めるし。ほい、ひまり」
「ありがとう、翔兄ちゃん」
アパートに帰り、さっそく話し合いの再開だ。
「うーんと、まず、ひまりは何か考えているのか?」
まずは本人にやりたいことがあるかだな。
「うんとね、来週ね、私誕生日なの」
「そうなんだ!おめでとう」
「ふふっ、ありがとう優兄ちゃん。でね、次の日1日ちがいで次の日パパなんだ。その日に、プレゼントをわたせたらいいなあって」
「へぇ!いいんじゃない?誕生日に仲直り!」
「ほんと?翔兄ちゃん」
「俺もいいと思うぞ~」
エヘヘと照れ笑いのひまりもかわいい。
「それでね、前にパパにお守りを作ってあげるって言ったから、作りたいと思って。あと、お手紙」
「いいね!あ、それと折り紙で金メダルとかは?それと、花束!」
「あー、ひとみとも作ったな、母の日に。どう?ひまり」
ひとみが折り紙が好きで、俺たち兄弟もずいぶんと付き合わされたもんな。俺たちも自然と腕が上がっている。
「いいかもな。枯れないし、結構キレイにできるもんだぞ。ほら、これ、母の日に四人で作ったんだ」
俺は今年の母の日に、四人で作った花束を見せる。……あの時は、まさかこんな状況に陥るなんて考えてもいなかったな。今思えば、穏やかで楽しい日常だった。
「うわあ、きれい!チューリップに、バラもある!いろいろなお花でかわいい。紙で作れるんだね。これ、みんなで作ったの?すごい!だけど、わたしにできるかなあ」
ひまりの元気な声に、沈んだ思考から我に帰る。
今は、ひまりパパのためにだ。
「ちょっと難しいけど、大丈夫だよ。僕たちも手伝うから」
「ありがとう!優兄ちゃん」
「さっそく1個作ってみようか」
「うん、翔兄ちゃん」
いっぱい作るぞー、と、さっそく折り紙を出してきて折り始める。ひとみが好きだから、たくさんストックがあるのだ。このご時世、100均でもいろんな種類がたくさん売っているので、ありがたい。
うん、今は、ひとみの病院と、ひまりの計画に集中だ。
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