人間に慈悲深い捨てられ聖女はその慈悲を捨てた

とある国には、珍しくも聖女が二人も誕生してしまった。
一人は歴代最高の聖女、もう一人は力は極僅かだったが絶世の美女だとされていた。

歴代最高の聖女は普段表には出ず、協会で仕事を淡々とこなす機械のようだと。
美人聖女は暇を弄び、お金を散財し、さも自分が偉いかのように振る舞っている。
住人は聖女の魅力に魅了された。

「もう一人の聖女なんて、聖女じゃないだろ」

それが住人達の口癖になるほど、そのもう一人の聖女は頭を抱えた。
七色輝く金髪に、白い肌、宝石眼のルビーの瞳。
白く透明なレースが施されていて神のような姿。

ーーー無理ですね、これ。

ノルン・ディースは悟った。

ノルンはやがて歴代最高の力とすら言われなくなり、別のあだ名、金食い虫がついた。
怒る?呆れる?普通の人なら発狂する。だが、ノルンは違った。

自由に、生きたい。

彼女のその願いは神に届いたのか、はたまた彼女の力なのか。
とうとう捨てられた彼女は、魔王に拾われ魔界に。

けれど、そこで待っていたのは優しい魔物達。生まれてから一度も優しくされてもらったことがない彼女はいつしか魔界を発展させるように。
魔界の味方をする彼女、王国はその重要さに気づきなんとか取り戻そうとするがーーーー?

「貴方達への慈悲は捨てました」
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