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しおりを挟む王太子に婚約者ができたことは、瞬く間に知れ渡っていた。
だが、中々お披露目されないこともあり、王妃が気に入らないと思っている者が多かった。
それでも、王宮の庭を仲良さげに散策しているとも噂されていたが、それを鵜呑みにする者は少なかったのは、紹介されないからだった。
それが、王妃主催の女性だけのお茶会にジャスミンを連れて来たのだ。それに会場の中が、ざわついた。
「本来なら、もっと早く紹介したかったのですが、遅れたことは私の落ち度です。彼女には何の落ち度もありません。私は、このジャスミン姫が王太子と婚約したことを心から喜ばしく思っています。皆さんも、ジャスミン姫をよく知れば同じように思うことでしょう」
王妃が、そんなことを言ったことに益々ざわついた。王妃が小娘を褒めることなどなかったのだ。それどころか、落ち度があったのは自分だとまで言ってジャスミンをたてたのだ。
「王妃様が気に入らないって話だったのに」
「そんな情報、古いわ。すっかり気に入って、王太子様とジャスミンを取り合って仲良くなさっているそうよ」
そんな会話がなされ、ならばジャスミンに媚を売ろうとする者は多かった。
王妃は、丁寧に招待客をジャスミンに紹介した。その多さに表情筋を総動員することになった。
(こんな目立ち方をしたら、絶対に一人や二人は現れそうよね)
案の定、紹介が終わり挨拶が済むとジャスミンは年の頃の近しい面々と談笑することになった。その中にジャスミンをよく思わない令嬢がいた。
居たというか。ジャスミンが親の敵を見つけたような顔をしないようにするのが大変だった。
(こんなところで会うとは思わなかったわ。ミアにそっくりな令嬢。もう、ここには居ないものと思っていたのに)
その令嬢は、ジャスミンに何かと言って来ていた。隣国から来たから、言葉が通じないとでも思ったのかも知れない。もっぱら王妃が話していて、ジャスミンは大したことを言わなかったから勘違いしたのかも知れない。
更には、ジャスミンがブチ切れてアーロのそっくりな姿形だけでなく、中身までもそっくりな元婚約者に当たり散らしたのだ。その後、寝ている間に制裁が加えられていて、ジャスミンは殆どやることはなかったのだ。
(このお茶会は、王妃殿下の主催なのよ。ぶち壊すわけにはいかないわ。中身もそっくりな嫌な女だろうとも、ここはわからない顔をしてやり過ごすのよ)
ジャスミンは、そんなことに一生懸命になっていたとも知らず、ミアは王太子の婚約者には自分のようなのが選ばれるべきだと言いたいようだ。
「ちょっと、ミア。そんなこと言って、婚約しているじゃない」
「そうよ。あなたにメロメロな婚約者が、そんなこと聞いたら幻滅するわよ?」
「平気よ」
どうやら、ここの彼女も婚約者に惚れられているから何をしてもいいと思っているようだ。
そんな彼女が、他に呼ばれて、そちらに行くと残った令嬢たちは、ため息をついていた。ジャスミンも付きたかったが、言葉が通じないふりを続行するのにきょとんとした顔をしていた。
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