上 下
10 / 31

10

しおりを挟む

元婚約者となった子息が勘当され、あの家の爵位を返上したのを知ったのも、ジャスミンが目覚めて元気
になってからだった。

ジャスミンが目覚めるまでの間と元気になるまでの間に
ジャスミンの父親が何があったかを耳にしてしまったようで、それを止められるのはジャスミンしかいないと海を渡って来た外交官に見舞いに来たと言われて会って見れば泣きつかれてしまい、ようやく知ることになったのだ。


(それこそ、私ごときのために長年の友好関係を壊してほしくないのでしょうね。この国と喧嘩をして、ほくそ笑むのは別の国になるのだもの)


王太子と彼の姉上や義兄上にも、ジャスミンは戦争になるのを回避したいからと直接言われなくとも、ジャスミンはすぐさま動いていた。

それこそ、そんな国からさっさと戻って来いと言わんばかりの父にジャスミンは困ってすらいた。


(なんか、こっちに居るようになって、この世界のことが現実になってしまっているのよね。……ここは、私の前世? それとも、並行世界とか? なんか、ここにいる私の方が私らしいのよね。我慢なんてらしくないことせずに過ごしていればよかったわ)


ジャスミンはもうすぐ結婚する子息と浮気していた親友だと思っていた令嬢のミアと彼女と婚約していたジャスミンの初恋の人に似た人には、未だに会わずにいることにホッとしていた。

この世界に来てから、ジャスミンが死んで抗議をしようとしていたことに色々と思うことが出始めていた。


(そんなをことしても、私は幸せになれない。もし帰れるなら、死ぬより、泣くか。お互い愛していないから誓えないとでも言ってやろうかな。それに何より、みんなが結婚式を上げる教会で死のうなんてことをしようだなんて、罰当たりもいいところよね。あの場を私のような自分のことしか考えず復讐できれば、それでいいと血で汚そうだなんて駄目よね。ウェディングドレスも、そうよ。私のために仕上げてくれたんだもの。あれを死に衣装になんてできないわ。あれを着て勇気をもらえていたんだもの。戦うべきだったわ)


それこそ、浮気を知った時に両親に話していたら、違っていたかも知れない。

初恋相手に婚約者の浮気現場を見せてもよかったかも知れない。


(あれだけ、証拠集めに必死になったのを利用して、私は知らぬ存ぜぬで、それぞれの家にリークでもすればよかったかも。……どうして、それを思いつかなかったのかしらね)


そんなことを次々と思い浮かぶ自分にジャスミンは、笑っていた。


(ここが夢でも、あの世でもいいわ。それでも、悔いのない生き方をしよう。それこそ、浮気相手となった元親友に似ているのにあっても、本人じゃないんだから、元婚約者みたいなことはしないようにしなきゃ。それで、国同士が戦争になるとこだったし、私の感情で周りを巻き込めないわ。気をつけなきゃ)


ジャスミンは、密かにそう思って、心から反省していた。

だが、実際に思っていても、姿形が似ているだけの人間ではなくて、中身までもそっくりだと難しかったようだ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

義妹がすぐに被害者面をしてくるので、本当に被害者にしてあげましょう!

新野乃花(大舟)
恋愛
「フランツお兄様ぁ〜、またソフィアお姉様が私の事を…」「大丈夫だよエリーゼ、僕がちゃんと注意しておくからね」…これまでにこのような会話が、幾千回も繰り返されれきた。その度にソフィアは夫であるフランツから「エリーゼは繊細なんだから、言葉や態度には気をつけてくれと、何度も言っているだろう!!」と責められていた…。そしてついにソフィアが鬱気味になっていたある日の事、ソフィアの脳裏にあるアイディアが浮かんだのだった…! ※過去に投稿していた「孤独で虐げられる気弱令嬢は次期皇帝と出会い、溺愛を受け妃となる」のIFストーリーになります! ※カクヨムにも投稿しています!

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。

ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。 即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。 そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。 国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。 ⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎ ※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星河由乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈 
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす

リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」  夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。  後に夫から聞かされた衝撃の事実。  アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。 ※シリアスです。 ※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。 (さて、さっさと逃げ出すわよ) 公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。 リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。 どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。 結婚を申し込まれても・・ 「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」 「「はあ? そこ?」」 ーーーーーー 設定かなりゆるゆる? 第一章完結

処理中です...