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しおりを挟むズキズキと痛むのに目が覚めた。ぼやけた視界にジャスミンは、こんなことを思ってしまった。
(飲みすぎた次の日みたいだわ。お酒が飲めるとなって、友達と飲んでしまって加減を知らずに飲み過ぎてしまったことを思い出させるわ。……ううん、それより、気持ち悪いかも。頭と腕がジンジンする)
ジャスミンは、そんなことを思いながら、知らない部屋に寝かされているのに気づいて、不思議に思っていた。
何か、この世界に来た時に似ている気がしたが、痛みに眉を顰めたくなったが、それをするだけで頭の傷が痛い。
何があったのかを思い出そうとしても、すんなり思い出すことができずにぼんやりしながら、何があったかを必死に思い出そうと記憶を探った。
(頭の包帯は……。投げつけられたんだったわね。あら、腕にも包帯がある。しばらく、動かすのが大変そうだわ。それと見目麗しい青年に会った気がするわ。確か、その人は……)
そんなことを思い出そうとしているところだった。部屋の扉があいて、そちらに視線を向けるとばっちりと入ろうとした女官と目があった。
「ジャスミン様?! お目覚めになられたのですか?」
「……」
「わ、私が、おわかりになりますか?」
なぜ、そんなことを聞くのかと思ったが、ジャスミンは10日近く眠っていたようだ。
(そんなに寝ていたのね。通りで思考が定まらないわけだわ。それにみんなが、心配するわけよね)
ジャスミンが、女官たちの名前を呼ぶとそれだけで、泣きそうになっていた。騒ぎを聞いて、ジャスミンのところにみんながやって来たようだ。いや、実際にみんな名前を呼ばれただけで感激して泣いていた。それも、号泣だ。
(盛り上がっているところ、申し訳ないけれど、ここはどこなのかしらね)
ジャスミンは、自分の心配をしてくれる女官たちにどうしたものかと思って、そんなことを思っていた。説明をしてほしいところなのだが、それをいつもしてくれる女官が一番取り乱してしまっているのだ。そんな姿をジャスミンは初めて見てしまい、落ち着けなんて言える雰囲気ではなかったのだ。
すると、控え目なノックがなされた。そちらを見ると美しい女性が立っていた。その顔立ちが、誰かに似ている気がした。
「あらあら、目が覚めたのね。気分は、どうかしら?」
「……」
「ジャスミン様、このお屋敷の奥方様で、王太子殿下の姉上様です」
「色々とお世話になってしまったようで……」
そう言いながらも、横になったままでは失礼だと身体を起こして挨拶しようとするも、頭痛がしてよろけてしまった。
それをすぐさま駆け寄って支えてくれた。
「駄目よ。無理はしないで。すぐに医者を呼ぶわ。診てもらいましょう。あなた、額と腕を何針も縫ったのよ。……全く、女性に物を投げつけて怪我をさせるなんて、とんでもないわ」
傷が残るかも知れないと気遣ってくれて怒ってもいたが、ジャスミンはあまり気にしていなかった。傷よりも痛みが、落ち着けばいいと思うくらいだった。
それから、しばらくして医者に診察されることになり、頭痛と目眩がおさまるのにしばらくはかかると言われ、薬も処方された。
それだけで、ジャスミンは物凄く疲れてしまい、何があったかを把握しきるまでにここから数日が必要となったが、10日の間に色々とあったようだ。
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