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しおりを挟むゼノス公爵家では、夫が妻と次男を呼びつけていた。そこにパーシヴァルもいた。
「メーヴィスよ。お前、ナヴァル子爵家に何かしたか?」
「何か、したかですって? 旦那様が、恥をかくようなことをしようとなさるからいけないのですよ」
自分はこの家を救ったかのようにしていて、それにゼノス公爵は眉を顰めた。かくようなことをしているのは、常に妻のメーヴィスと次男のトバイアスが主なのだが、その自覚が未だにないようだ。
「恥だと?」
「パーシヴァルと猿まがいの令嬢をまじえてお茶しようとするなんて、恥以外の何だと言うのですか!」
「そうです! この家が、これ以上、笑われるようなことはおやめください。ただですら、兄上のせいで、母上と私が、どれだけ人に笑われて来たことか。それ以上に猿女なんかと、兄上を婚約させるなど、恥の上塗りになるだけです!」
「黙れ」
「「っ、」」
そこには、殺気立つパーシヴァルがいた。ゼノス公爵は、その殺気に甥を思い出させた。大事な物を侮辱されると殺気立つのは、血筋のようだ。
「彼女を侮辱するな」
「黙れですって!? 親に向かって、なんてことを言うのよ!」
「そうです。兄上、謝ってください」
「必要ない」
「旦那様!」
「父上!」
「必要ない。私がしたことを邪魔するなといつも言っているはずだ。そうではないか? メーヴィス」
「っ、そんな、邪魔だなんて、私は……」
「できないなら、出て行け」
「っ、」
邪魔をするなと言われても、邪魔をした覚えはないという顔をしていた。
「そんな、父上。あんまりです」
「初めから、そう言う約束だ。そうだな?」
「っ、」
「次に邪魔をすれば、問答無用で、それと一緒にこの家から出す」
「なっ、何を言うのですか!? この子は、この家の跡継ぎになる子ですよ!」
ゼノス公爵の言葉に一緒に追い出すと言われて、慌てていた。そのせいで、夫人は思わず、そんなことを言ってしまった。
「誰が決めた? 私は、パーシヴァルに継がせると言ったいるはずだが?」
「そんなことをしたら……」
「父上は、この家を潰すおつもりですか!?」
「何だと?」
「兄上のようなのが、この家を次いだら馬鹿にされて、そのうち潰れてしまいます!」
「……だから、自分が継ぐと? お前には、無理だ」
「父上」
トバイアスは、父親にはっきり言われて悔しそうにした。それを見ていられなかったのは、夫人だ。
「……あんまりですわ。この子の何がそんなに気に入らないかはわかりませんが、この子ばかりに酷くあたって。もう、我慢なりません! この子を連れて実家に帰ります」
「は、母上?!」
「そうか。好きにしろ」
「っ、そうします! 行きますよ」
「え、あ、ですが、母上の実家は……」
「行きますよ」
「……はい」
トバイアスは、母方の実家が苦手だった。隣国にあるのだが、あちらには自分よりも優秀な従兄妹たちがいるのだ。
それにあちらの学園には、ラヴェンドラより遥かに頭がいい連中がいる。そこについて行くには、寝る間も惜しんで勉強しなくてはならなくなる。
その例外の1人のようなのが、母親だ。だから、ラヴェンドラのゼノス公爵家に嫁ぐことになったようなものだった。
ゼノス公爵の結婚の条件は、いくつかあるが、邪魔しないことが一番だった。
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