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しおりを挟むそんなマーセイディズが、いつものように余計なことをして、それに即座に反応したのがパーシヴァルの弟だった。
「母上! 父上と兄上が、また良からぬことを考えているようです!!」
「良からぬこと?」
次男は、母にマーセイディズから聞かれたことから、父たちがナヴァル子爵家の王太子が猿と呼ぶ令嬢とお茶をしようとしていることを知って、帰宅するなり自分がこう考えるものも含んで母親に話したのだ。そこまで、マーセイディズは言っていなかったというのにここに来るまでに彼は、妄想を膨らませてしまっていて、どこまでを聞いたかを覚えてはいなかった。
そして、2人で怒り心頭になった。
「なんてことなの。そんなのとお茶をしようだなんて、ゼノス公爵家がまたも馬鹿にされるわ」
「そうです。何とかしなくては」
「そうね。ナヴァル子爵夫人に会って、釘をさすことにするわ。あちらの令嬢より、まだ、パーシヴァルの方がマシのはずだけど、そんなのと婚約させようとするなんて、この家が潰れてしまうわ。何としても阻止しなくては」
こうして、ゼノス公爵夫人はトレイシーの母親に会うなり、お宅の頭のおかしな令嬢と夫と息子が、お茶をするわけがないことやそっちの猿まがいなのを嫁にするわけがない。少し考えればわかる等などを言葉にした。
まぁ、そんなようなことを散々言い、トレイシーの母親は怒り心頭のまま、家に帰って夫を見ると大声を出した。
「旦那様!!」
「なんだ? 騒がしいな」
「ゼノス公爵夫人に散々、嫌味を言われて来ました」
「嫌味?」
子爵は、わけがわからず首を傾げた。妻が何を怒っているのかが全くわからなかった。
「あちらは、トレイシーと長男を婚約させようとしているとか」
「は? 長男だと? 次男の方ではなくてか?」
「えぇ、まともじゃない方とお茶をさせる誘いだったようです。それなのに夫人は、自分の息子の方がまだマシだとか、もう散々に言われてきましたとも! 学園にも滅多に行かない子息とトレイシーを比べて、まともじゃないなんてよく言える。思い出しただけでも、腹が立つ」
「そんな、トレイシーは次男と婚約させるとばかり思っていたのに。なんてことだ」
トレイシーの両親が、そんなことで頭を悩ませているとも知らず、トレイシーはお茶の誘いに乗ろうと両親のところに姿を見せた。
「行かんでいい!」
「え? ですが」
「頭のおかしな方となんぞ、お茶をしたら、お前が更に笑われるだけだ」
「頭のおかしな方……?」
トレイシーは、その言葉に眉をしかめずにはいられなかった。
(まともじゃない人たちには、言われたくない言葉よね。自分たちが、まともに分類されているってことね。それにびっくりだわ)
「そうですよ。あなたは、何もしなくていいわ」
「すぐに返事をしなくて良かった」
「……」
トレイシーは、1日で意見を変えた両親に怪訝な顔をしながら、怒りの収まらない母親に矛先を向けられないようにトレイシーは部屋に戻った。
(何があったにしろ。あの家には、他にも子息がいたのね。……両親が、やっと広い視野で見てくれるようになったのかと思ったけれど。誤解していただけみたい)
トレイシーは、そんなことを思ったが、激怒している両親にどうしてもとは言わなかった。今は家の中で両親を相手にする気にはなれなかった。
学園で、マーセイディズとその取り巻きが毎日のように絡んで来るのだ。それに付き合わされるだけで、トレイシーは疲れ切っていた。
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