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しおりを挟む卒業式に両親が出席するのが、夢だったカレンだが、アカツキが一般的に恐れられる赤鬼であり、生粋の鬼族の御曹司だと言うことをすっかり失念していた。
(校長先生やら保護者の人たちだけでなく、卒業生も在校生にも、申し訳なかったな)
どんなに存在感を消そうとも、生粋の赤鬼と人間とでは、こうも違うのだとカレンは嫌というほど痛感してしまった。
(私は、全然平気なのに)
司会者が、震える声で司会進行をしていた。
アカツキが義父となったことを伝えたのは、数日前のことだ。卒業生代表は別の人だったのだが、カレンがやることになってしまったのだ。断れるはずがなく、この状況下で震えることなく、普通に代表挨拶しているだけでも立派に見えたようだ。
無事に式典が終わり、友達たちと写真を撮ったりしたかったが、赤鬼の義娘となったことで更に遠巻きにされてしまい、怖がられているように思えた。
気に入らないことをしたら、大変だとでも親たちは思ったのかも知れない。挨拶もそこそこに、カレンの側から娘を引き離して、大して話も出来なかったのだ。
(寂しいな)
「カレン」
「義父さま」
「っ、おう、挨拶、急に頼まれたにしては、随分と立派だったじゃねぇか」
「そうかな」
(ちゃんと聞いててくれたの義父さまだけだと思うけどね)
「どうした?」
「ううん。何でもない」
「なら、写真撮って帰るぞ」
「え? また?」
「卒業証書持ってるのは、まだだろ?」
カゲツキが、カメラマンとして控えていた。
式が始まる前から、アカツキは父親として誰に教えられたのか。それとも、リサーチしたのか。やたらと記念写真を撮らせまくっていた。
「人間の風習には疎くてな」
「鬼族では、写真撮ったりしないの?」
「いつも見てる野郎ばっかで、何が面白ぇて言うんだよ」
「そうじゃなくて……」
(あ、そうか。義父さまも、天涯孤独なんだ)
「家族写真なんざ、一生縁のねぇもんだと思っていたが……、悪くねぇな」
「うん。私も写真、苦手だけど、家族写真はいいね」
にっこりとアカツキに笑うと向こうも笑顔だった。
美形のスマイルに奥様方と娘たちから黄色い声があがったことは言うまでもない。
その意味がアカツキには全くわからなかったらしく、怪訝な顔をしていたのをカゲツキは無表情をほんの少し崩して苦笑していたのを見ていたのは、カレンだけだった。
(ふふっ、こんなに楽しいの初めてだ)
アカツキの本宅では、卒業式の写真が飾られ、アカツキの仕事場にも飾られているのを見てカレンが照れることになるのは別の話だ。
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