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アカツキは、あやかし学園の理事長をしているのだとか。

理事長の仕事に嫌気がさしていたところにカレンへの入学許可やら手続きの説明に部下が行くはずなのを自分が行くと言い出して様子を見に来て、話すうちに気に入ったようなのだが、一体全体何を気に入られたのかがカレンには全くわからない。

後見人となってはりきっているというか、物凄く嬉しそうにしているようにカレンには見えた。

それをアカツキの部下というか、秘書の1人のカゲツキに言うと彼は常時、無表情のままだったのが、少し驚いたように見えた。


「アカツキ様が恐ろしくはないのですか?」
「え? 後見人にまでなってくださって、よくしてもらってるのに?」
「いえ、鬼族は、元来、恐れられる者ですので」


カゲツキも、鬼族だ。角は2本だが、肌の色は人間のようだ。母親が人間らしい。なので、怖がられることは比較的少ない方なのだとか。

他にも秘書はいるが、人間の性質が多いところで暮らしていたと知って、配慮してくれているようで、生粋の鬼族たちはカレンの視界に入らないようにしてくれているようだ。人間の子供によく泣かれて、凹むのを回避しているのだとのちに知るのだが。まさか、カレンが全く気にしていないとは、この時まで思っていなかったようだ。

カレンは、ん~と考えるも、校長室に突然、呼び出された方が怖かったけど、大の大人たちが怯えきっているのを見ていたら、何やらおかしな話、彼らを守ってやらねばと思ってしまったら、普通に話せていると言うとじっと見つめられてしまった。


「カレン様」
「え?」


(花蓮様!? 急に何?)


「アカツキ様は、確かにはりきっておられます。あわよくば、養女に出来ないかと目論んでおられるのではないかと……」
「は? え? 養女?!」
「おい、カゲツキ! 段取りすっ飛ばして、暴露してんじゃねぇ。お前が、しゃしゃり出ることじゃねぇだろ!」


アカツキが鬼の形相でカゲツキを怒り、流石に殺気がヤバいと思ったのかカレン様が居られるのですから、少し抑えられた方がよろしいかと言えば、ハッ!としたアカツキが鬼の形相からいつもの顔に戻ってカレンを見た。

だが、カレンの方は、大きい声にびっくりして耳を塞いではいるが、怯えた様子は全くなかった。じっと見つめる鬼たちをきょとんとした顔をして見返した。


「……大丈夫そうだな」
「えぇ、末恐ろしい方ですね」
「???」

カレンは、何がそんなに慌てることがあるのかと思っていたのだが、自分が怒られたわけでもないのに部屋から出ると他の鬼族でアカツキの怒りに耐性のない者たちが怯えていた。

平然としているカレンに鬼族たちが尊敬の眼差しを向けるようになったのは、このあとからである。

ちなみにカレンはというと……。


(鬼族ってみんな美形ばっかり。そういえば、あやかしも、美男美女が多いんだっけ?)


鏡を見ても、平々凡々なカレンの顔。そこにあるのは、自慢の一つだった紫の瞳だ。

ここに来るまでにカゲツキに用意させた特殊な眼鏡をかけるように言われた。あやかしたちが多くいる居住区では、紫の瞳をしていることは隠しておいた方が得策ということだ。


(これを隠していたら、ますます目立つ外見じゃなくなるな)


眼鏡に慣れるべく、小学校でもかけるようにしたが、アカツキのことで一線を引かれてしまっていて、気軽に話しかけて来る友達もいなくなって、眼鏡のことやら話すこともなかった。

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