3 / 7
3
しおりを挟むアカツキは、あやかし学園の理事長をしているのだとか。
理事長の仕事に嫌気がさしていたところにカレンへの入学許可やら手続きの説明に部下が行くはずなのを自分が行くと言い出して様子を見に来て、話すうちに気に入ったようなのだが、一体全体何を気に入られたのかがカレンには全くわからない。
後見人となってはりきっているというか、物凄く嬉しそうにしているようにカレンには見えた。
それをアカツキの部下というか、秘書の1人のカゲツキに言うと彼は常時、無表情のままだったのが、少し驚いたように見えた。
「アカツキ様が恐ろしくはないのですか?」
「え? 後見人にまでなってくださって、よくしてもらってるのに?」
「いえ、鬼族は、元来、恐れられる者ですので」
カゲツキも、鬼族だ。角は2本だが、肌の色は人間のようだ。母親が人間らしい。なので、怖がられることは比較的少ない方なのだとか。
他にも秘書はいるが、人間の性質が多いところで暮らしていたと知って、配慮してくれているようで、生粋の鬼族たちはカレンの視界に入らないようにしてくれているようだ。人間の子供によく泣かれて、凹むのを回避しているのだとのちに知るのだが。まさか、カレンが全く気にしていないとは、この時まで思っていなかったようだ。
カレンは、ん~と考えるも、校長室に突然、呼び出された方が怖かったけど、大の大人たちが怯えきっているのを見ていたら、何やらおかしな話、彼らを守ってやらねばと思ってしまったら、普通に話せていると言うとじっと見つめられてしまった。
「カレン様」
「え?」
(花蓮様!? 急に何?)
「アカツキ様は、確かにはりきっておられます。あわよくば、養女に出来ないかと目論んでおられるのではないかと……」
「は? え? 養女?!」
「おい、カゲツキ! 段取りすっ飛ばして、暴露してんじゃねぇ。お前が、しゃしゃり出ることじゃねぇだろ!」
アカツキが鬼の形相でカゲツキを怒り、流石に殺気がヤバいと思ったのかカレン様が居られるのですから、少し抑えられた方がよろしいかと言えば、ハッ!としたアカツキが鬼の形相からいつもの顔に戻ってカレンを見た。
だが、カレンの方は、大きい声にびっくりして耳を塞いではいるが、怯えた様子は全くなかった。じっと見つめる鬼たちをきょとんとした顔をして見返した。
「……大丈夫そうだな」
「えぇ、末恐ろしい方ですね」
「???」
カレンは、何がそんなに慌てることがあるのかと思っていたのだが、自分が怒られたわけでもないのに部屋から出ると他の鬼族でアカツキの怒りに耐性のない者たちが怯えていた。
平然としているカレンに鬼族たちが尊敬の眼差しを向けるようになったのは、このあとからである。
ちなみにカレンはというと……。
(鬼族ってみんな美形ばっかり。そういえば、あやかしも、美男美女が多いんだっけ?)
鏡を見ても、平々凡々なカレンの顔。そこにあるのは、自慢の一つだった紫の瞳だ。
ここに来るまでにカゲツキに用意させた特殊な眼鏡をかけるように言われた。あやかしたちが多くいる居住区では、紫の瞳をしていることは隠しておいた方が得策ということだ。
(これを隠していたら、ますます目立つ外見じゃなくなるな)
眼鏡に慣れるべく、小学校でもかけるようにしたが、アカツキのことで一線を引かれてしまっていて、気軽に話しかけて来る友達もいなくなって、眼鏡のことやら話すこともなかった。
1
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
あやかしと付喪神のことをずっと親戚と勘違いしていたようです。みんなが笑顔でいられるのなら、身内に気味悪がられても気にしません
珠宮さくら
キャラ文芸
付喪神やあやかしたちと一緒に暮らすこととなった星蘭。
自分に特別な力や才能があるとは、これっぽっちも思っていないが、母親と妹からは気味悪いと思われ続けていたことが、役に立つことを知ることになる。
そんな星蘭が、千年近く受け継いできた生業を受け継ぎ、付喪神やあやかしたちを幸せにしようとして、逆にたくさんのものをもらって幸せになるお話。
※全6話。2、3日おきに更新。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あやかしの花嫁になることが、私の運命だったようです
珠宮さくら
キャラ文芸
あやかしの花嫁になるのは、双子の妹の陽芽子だと本人も周りも思っていた。
だが、実際に選ばれることになったのが、姉の日菜子の方になるとは本人も思っていなかった。
全10話。
転校先は着ぐるみ美少女学級? 楽しい全寮制高校生活ダイアリー
ジャン・幸田
キャラ文芸
いじめられ引きこもりになっていた高校生・安野徹治。誰かよくわからない教育カウンセラーの勧めで全寮制の高校に転校した。しかし、そこの生徒はみんなコスプレをしていた?
徹治は卒業まで一般生徒でいられるのか? それにしてもなんで普通のかっこうしないのだろう、みんな!
あやかしのシッターに選ばれたことで、美形に囲まれることになりました
珠宮さくら
キャラ文芸
美形の男性と自分が知り合うことはないと花宮珠紀は思っていたが、ある日を境にして気づけば、あやかしのシッターとして奮闘しながら、美形に囲まれて生活するとは、夢にも思っていなかった。
全23話。
月花は愛され咲き誇る
緋村燐
キャラ文芸
月鬼。
月からやってきたという鬼は、それはそれは美しい姿をしていたそうだ。
時が経ち、その姿もはるか昔のこととなった現在。
色素が薄いものほど尊ばれる月鬼の一族の中、三津木香夜はみすぼらしい灰色の髪を持って生を受けた。
虐げられながらも生きてきたある日、日の本の国で一番の権力を持つ火鬼の一族の若君が嫁探しのために訪れる。
そのことが、香夜の運命を大きく変えることとなった――。
野いちご様
ベリーズカフェ様
ノベマ!様
小説家になろう様
エブリスタ様
カクヨム様
にも掲載しています。
母は、優秀な息子に家の中では自分だけを頼ってほしかったのかもしれませんが、世話ができない時のことを全く想像していなかった気がします
珠宮さくら
恋愛
オデット・エティエンヌは、色んな人たちから兄を羨ましがられ、そんな兄に国で一番の美人の婚約者ができて、更に凄い注目を浴びる2人にドン引きしていた。
だが、もっとドン引きしたのは、実の兄のことだった。外ではとても優秀な子息で将来を有望視されているイケメンだが、家の中では母が何から何までしていて、ダメ男になっていたのだ。
オデットは、母が食あたりをした時に代わりをすることになって、その酷さを知ることになったが、信じられないくらいダメさだった。
そんなところを直す気さえあればよかったのだが……。
人形の中の人の憂鬱
ジャン・幸田
キャラ文芸
等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。
【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。
【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる