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しおりを挟む問題は、留学からアミールカレが戻って来た後だった。
アミールカレは、可愛いなんて言えなくなっていた。すっかり格好よくなっていて、ニヴェスの妹がそれを見るなり、キャーキャー騒いで煩かった。
アダルジーザのようにどうにか自分のものにしようとあの手この手で誘惑しようとしたのはすぐだった。
「私と婚約させようとしたんだから、今からそうしてよ!」
「何年前の話をしているんだ」
「そうよ。大体、あちらだって了承するわけないでしょ」
「っ、そんなことないわ! 私の方が、お姉様よりいいに決まってるわ」
「……」
両親に見つかって、色々と言われても、どこから来たのか分からないという自信を妹は常に持っていた。
「アミールカレ様! いつになったら、お姉様と婚約破棄してくれるのよ!」
「何度も言っているが、そんなことする気はない。ニヴェスがすると言っても、絶対にしない」
「お姉様のどこがいいのよ!」
アミールカレは、それに淀みなく答えた。
それにニヴェスが赤面したのは言うまでもない。
「そのくらいにしてあげてもらえませんか?」
「ん? まだ、言い足りないんだが」
「アミールカレ。ニヴェスが、倒れるわよ」
マルチェッリーナとアデーレが止めるので、アミールカレはようやくニヴェスを見た。
「気を悪くさせたか?」
「いえ、そんなことはないですが、大勢が聞いているところではやめていただけるとありがたいです」
「聞かれてまずいことではないだろ?」
「……」
「ふふっ、ごちそうさま」
その頃には、ベアトリーチェは留学を終えて戻っていたが、後日、ニヴェスのところに手紙で、その場にいたかったかのように書かれていて、マルチェッリーナたちが教えたことがわかった。
彼女とて、こちらで婚約者を見つけて戻る時には、婚約者とあちらに行ったというのにニヴェスが溺愛されていて羨ましいかのように手紙を寄越して来ていた。
そんなことを書いているが、あちらで大変仲良くしているのをニヴェスは知っていた。なので、手紙の返信には色々と書いて送っておいた。
婚約者のいる者同士として、楽しい惚気合戦が繰り広げられたが、その内容にマルチェッリーナが加わったのも
割とすぐのことだった。
やっとお眼鏡に叶う婚約者ができたのだ。それでも、ニヴェスとアミールカレのようにはいかないと愚痴っていることが多かった。
逆にアミールカレは、マルチェッリーナとアデーレの婚約した子息にあれこれ相談されて忙しそうにしていてニヴェスといられないと愚痴っていた。
それはそれで珍しかったが、やっと2人っきりになれたと言う彼の蕩けた表情がニヴェスの心臓に悪すぎて、相談にどんどん乗ってあげてほしいと頼み込むのは、すぐだった。
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