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(何を考えているのかが、最後までさっぱりわからなかったわ)


アナスターシャは、婚約者のフィリップに呼び出されるままに時間通りに出向いた。そこで、待っていたのはフィリップだけでなく、彼の幼なじみの令嬢のローズマリーも居た。彼女はフィリップの正面か、別のソファーにではなくて、フィリップの横でひっつくように座って話していたようだが、アナスターシャがこの光景を見たのは初めてではない。毎回、こうなのだ。だから今更、驚くことではない。


(見慣れすぎると違和感なくなるものね。どうして、こんなにべったりひっつく必要があるんだか)


彼らにとって普通のことで、ここの家族も使用人たちも、そのせいで怒ることも嗜めることもしてこなかったようなのだ。

アナスターシャは最初にそれを指摘したのだが、数回話しても未だに話が通じなかったので、もはや諦めてしまったくらいだ。

もっとも、アナスターシャのように諦める選択をしたのとは違い、ローズマリーと婚約した子息は非常識だとして婚約しても、それこそ毎回、長くは続くことはなかった。最短では半月ほどで解消していて、長くても半年ほどだったかと思う。


(それでも、わからないのよね)


「あぁ、アナスターシャ。もう、そんな時間か」
「あっという間に時間は過ぎるわね」
「……」


学園から三人一緒にここに来ればなんてことはないのだが、アナスターシャは帰宅して一度着替えを済ませてから来ている。

ローズマリーはフィリップと一緒に来ても、彼女専用の部屋がこの家には普通にあるため、着替えのためにわざわざ帰宅する必要はないのだ。


(やっぱり、これって、変よね。変すぎて、まともなことがないのよね。その自覚もないせいで、こっちが変になりそうだわ)


婚約者とその幼なじみの前のソファーに座りながら、そんなことをアナスターシャは思って、ため息をつきたくなってしまっていた。


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