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(クラスが違う! やった!!)


まず、クラス替えを見た時に千沙都が思ったのは、幼なじみが一緒のクラスでなくなったことだった。本気で喜んで心の中でガッツポーズをしてしまった。

毎年、同じクラスだったことが千沙都は自分が思っていた以上に嫌だったようだ。


「神山さん、また同じクラスだな」
「あ、うん。今年も、よろしくね」
「こっちこそ、よろしく」


理人とは同じクラスになっていた。密かに千沙都は、それを喜んでいたが彼にはバレてないはずだ。猫の話題を思う存分に語れるのが楽しくて仕方がなかった。今のところ楽しい理由は思う存分、猫のことを語れる相手が見つかったことという位置づけだ。


「最悪。千沙都の幼なじみと同じだった」
「寧々」
「それと勘違いもいた」
「……どんまい」


他にも、去年同じクラスの面々が一希と一緒なことを嘆いていた。

寧々のいう勘違いとは、瑶のことのようだ。よく知らない女子生徒は、イケメンがクラスに2人もいると大はしゃぎしているようだが、寧々は真逆な反応をしていた。この世の終わりのような顔をしていて、千沙都はどう励ますのが正解なのかと思ってしまった。

千沙都は、寧々には申し訳ない気持ちを持ちつつ、理人と愛猫の話題で盛り上がる毎日を楽しく過ごすことになった。

そのうち、付き合うようになったのだが周りの反応は千沙都が思っているものとは違っていた。


「あれ? まだ、付き合ってなかったの?」
「え? まだ??」
「とっくに付き合ってるものと思ってた」
「とっくに……?」
「気づいてないの? 2人とも、幸せオーラ全開で、近づきづらかったわ」
「……」


そんなことを千沙都だけでなくて、理人も友達に言われたようだ。

それが、当事者には意味不明すぎた。そんなつもりは全くないのだ。


「幸せオーラって、何だろうな」
「ほぼほぼ、愛猫自慢してた気がするんだけど」
「だな。猫の話題で盛り上がってるだけなんだよな。……あー、その、今度は、猫に関係ないとこに行くか?」
「関係ないとこ……?」


理人の言葉に千沙都は、きょとんとした顔をした。


「ほら、その、ちゃんとしたデートしないか?」
「そ、そうだね。前までは、猫カフェとか。猫グッズ巡りとかしてたもんね」


付き合う前のことだが、2人で出かけていたからデートだと思われていたのかも知れない。中には猫溜まりスポット情報を共有して、猫探しをしたことすらある。

そんなことをしていたのを兄の怜久にも、だいぶ前から目撃されていたようだ。そのせいで、付き合い始めたのは最近だとバレて、周りと同じような反応をされてしまった。


(兄さんにまで、この反応をされる日が来るとは思わなかったわ。……よっぽどなのね。周りが見えてなさすぎたわ)


兄にまで言われたことで、千沙都はそんなことを思ってしまった。


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