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しおりを挟む「おばさん、完全防備で行って、花粉症の症状が出たって言ったの?」
「ん~、どこまで完全防備で行ったかは知らないけど、何もしないで言ったとは言ってなかったから、それなりの格好では言ったんじゃないか。あれだけ、花粉症で酷い目にあってるのに無防備では行かないだろ」
「……」
(いや、無防備で行ってるから。おばさんが家族にバレたくなくて嘘ついて誤魔化してるのか。はたまた、本当に完全防備の末に花粉症に悩まされてると思ってるかは、わからないけど)
そこは、何となくだが長い付き合いで、そうしたと思いこんでいそうだと千沙都は思ってしまったが、それについての追求はやめた。そっちに行ったら、駄目だ。埒が明かなくなる。それにおばさんが認めるはずがない。のらりくらりと言い逃れるのは上手いのだ。
「……猿渡。公園のことは、おばさんに聞いたの?」
「ん? そうだけど?」
「どこのって、聞いた? 公園の名前で?」
「いや、でも、1番近いって言ってたから、調べて行った」
「……」
(確かに地図上では、1番近いかも。何で、そこで1番近いなんて言ったんだろ。そして、なぜ、わざわざ調べたんだ。わからないな~)
公園の名前を言えば済んだはずなのにそれをしなかったせいで、勘違いが起こったようだ。
これは推論だが、いつも行っている公園の名前を覚えていなかったのではなかろうか。それを誤魔化すかのように1番近いとつけた結果、息子が本気で1番近い公園に行ってしまい、暗がりだったせいで荒れ放題とにっている公園を見頃が何も見当たらない公園程度にしか見えなかったようだ。
(いつも、散歩してる方の公園だと何で思わないかが不思議でしかないな。見頃なものがあるだろうに。……そもそも、何が見頃なのかもわかってないなんてことはないわよね? ……なんか、それが当たりな気がする)
見慣れすぎているせいで、一希がその辺も誤解しているような気がしてならなかったが、その辺のことも深く追求することはなかった。
気になりだしたら、終わりが見えなくなる。それが、一希とその家族なのだ。程よい距離を保てなくなったら、付き合いきれなくなってしまう。もう既に付き合いを遠慮したくなっている。
(そういえば、自分が困ってると他に困ってる人を巻き込んで、自分の困り事が解消するとそのまま相手が困ってるのをスルーするとこがあったっけ。そもそも、見頃の花のことも知らないのかも)
そんなことを思ってしまった千沙都は、家族に全部説明するのも面倒くさいと思ってしまった。あまりに間が抜けているのだ。話すのも阿呆らしい。
でも、怜久はそういうことだけは忘れることがないせいで、兄に話を振られて千沙都がその話を家族にすることになった。両親は、特に詳しく知らなくても良かったような顔をしていたが、聞いていた兄は聞くだけ聞いて、すぐに忘れた。
(そんなところが、猿渡に似てるのよね。それより、他に覚えておいた方がいいことがたくさんあるでしょうに)
そんなことを思ったのは、千沙都だけではなかったはずだが、兄はそれに気づくことはなかった。
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