上 下
5 / 53

しおりを挟む

兄の恋路も、兄には高校の成績がすこぶる良くなくとも、カノジョとのことの方が重要なことだろう。だからといって、千沙都の1番の重要案件ではない。千沙都は、ブラコンではない。

兄の方も、シスコンではない。今の優先順位は、確実に家族よりも、成績よりも、カノジョの方にあるはずだ。でも、骨の髄まで首ったけではないと思いたい。流石にこれ以上、成績が下がれば両親でも怒るに違いない。

今現在でも、普通の親なら勉強しろと言いそうな成績であろうとも、しつこく言うなんてことはしない。言ったところで恋路と勉学の両立は難しいとわかっているからかも知れない。かといって、恋をやめさせようとはしないところが、両親だ。無理にやめさせて荒れるよりもいいと思っているのかも知れない。


(兄さんは、中々の面食いだからカノジョさんが可愛いのは間違いないはず。今のカノジョさんと上手くいかなくなったら、どんなに姿形が格好いい分類に属しても次に素敵なカノジョができるか怪しいのよね)


母も同じように思っているようで……。


「連れて来る時は、早めに教えてね」
「は? いや、カノジョの家とかなり距離あるから、学校帰りに気軽に呼べないから来ないと思う」
「……なら、その子の家に行く時は、きちんとするのよ?」
「行く予定はないよ。あっちは、祖父母と二世帯住宅らしくて、カノジョの友達うんねんにも口うるさいらしいし」


そんなことを怜久は言った。そんな話を既にしていたようだ。


「あら、それ、お母様のご両親?」
「いや、父親の方」
「義両親となら、お母様は大変でしょうね」


そんなことを母と怜久が話しているのを千沙都も聞いていた。


(父親の方の祖父母か。私なら、友達のことでとやかく言って来る時点で、余計なことは一切言わないようにするな。カレシの話題なんて、絶対にしない。同性の友達にまで口出すようなら、学校の話もしないわね)


千沙都の母は、子供たちの交友関係にも、カレシにも、カノジョにも、ウェルカムな感じの人だ。自分の若い頃と照らし合わせて、良かれと思って助言したり、あーだ、こーだと押し付けがましく言うこともない。

ただ、気になるから会ってみたいと言うより、来る時は気を使わせまいとして、逆に家には居ないようにする口な気がする。

まだ会ったこともないカノジョが気にならないわけではないが、そっちに行くと益々脱線してしまうので、千沙都の兄の恋路のことはこのくらいにして、千沙都にとって日課になっていることの方に話を向けることにする。

千沙都の住む近所に幼なじみの男の子がいた。同い年の彼の名前は猿渡一希。小さな頃から、見た目がよくて幼い頃は可愛らしく、お目々ぱっちりの男の子だったが、成長するにつれて可愛らしいところがどこかに行方不明となった。中身は元々可愛いらしさの欠片もなかったが。

一希は中学生あたりから格好いいと周りの女の子にやたらと騒がれるまでになった。身長も、グッと伸びて、女の子に間違われることもなくなった。

見た目からすると確かに千沙都の目から見ても格好いい少年だ。そこは、認める。でも、中身がどうかというとそこは問題大有りな少年だった。中身は全く可愛げの欠片もない。まぁ、そんなものなくとも見た目が良ければ、ツンツンしていても愛想が全くなくてもいいと思うが、彼の中身は別のもので占められていた。

その家と千沙都の家族は、家族ぐるみで仲良くしていた。千沙都と一希が同い年で、幼稚園が同じだったことから、まず最初に母親たちが先に仲良くなったのだ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

三度の飯より犬好きな悪役令嬢は辺境で犬とスローライフがしたい

平山和人
恋愛
名門貴族であるコーネリア家の一人娘、クロエは容姿端麗、文武両道な才女として名を馳せている。 そんな彼女の秘密は大の犬好き。しかし、コーネリア家の令嬢として相応しい人物になるべく、その事は周囲には秘密にしている。 そんなある日、クロエに第一王子ラインハルトとの婚約話が持ち上がる。王子と婚約してしまったら犬と遊ぶ時間が無くなってしまう。 そう危惧したクロエはなんとしても婚約を破棄し、今まで通り犬を飼える立場になろうと企む。

人を好きになるのがこんなにつらいって……誰か教えてよ

たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が突然事故で他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して、領のことなど右も左もわからない。そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。  そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。    だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の4人のこどもたち(14歳男子、13歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。  仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、貴族のマナーなど全く知らないこどもたちに貴族のマナーを教えたり、女心を教えたり(?)とにかく、毎日が想像以上に大変!! そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※設定はゆるめです(たぬきち25番比) ※胸キュンをお届けできたらと思います。

両親や妹に我慢を強いられ、心が疲弊しきっていましたが、前世で結ばれることが叶わなかった運命の人にやっと巡り会えたので幸せです

珠宮さくら
恋愛
ジスカールという国で、雑草の中の雑草と呼ばれる花が咲いていた。その国でしか咲くことがない花として有名だが、他国の者たちはその花を世界で一番美しい花と呼んでいた。それすらジスカールの多くの者は馬鹿にし続けていた。 その花にまつわる話がまことしやかに囁かれるようになったが、その真実を知っている者は殆どいなかった。 そんな花に囲まれながら、家族に冷遇されて育った女の子がいた。彼女の名前はリュシエンヌ・エヴル。伯爵家に生まれながらも、妹のわがままに振り回され、そんな妹ばかりを甘やかす両親。更には、婚約者や周りに誤解され、勘違いされ、味方になってくれる人が側にいなくなってしまったことで、散々な目にあい続けて心が壊れてしまう。 その頃には、花のことも、自分の好きな色も、何もかも思い出せなくなってしまっていたが、それに気づいた時には、リュシエンヌは養子先にいた。 そこからリュシエンヌの運命が大きく回り出すことになるとは、本人は思ってもみなかった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

母は、優秀な息子に家の中では自分だけを頼ってほしかったのかもしれませんが、世話ができない時のことを全く想像していなかった気がします

珠宮さくら
恋愛
オデット・エティエンヌは、色んな人たちから兄を羨ましがられ、そんな兄に国で一番の美人の婚約者ができて、更に凄い注目を浴びる2人にドン引きしていた。 だが、もっとドン引きしたのは、実の兄のことだった。外ではとても優秀な子息で将来を有望視されているイケメンだが、家の中では母が何から何までしていて、ダメ男になっていたのだ。 オデットは、母が食あたりをした時に代わりをすることになって、その酷さを知ることになったが、信じられないくらいダメさだった。 そんなところを直す気さえあればよかったのだが……。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」

処理中です...