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王子たちが王女にしたことに激怒して、お茶会のやり直しはしないことになった。それこそ、時間になっても始まってすらなかったし、それについての謝罪もなかったが、王子たちは自分たちの遅刻よりは妹を探しまわっていただけだ。

それでも遅刻は遅刻なのだが、謝罪もない王子たちに幻滅ばかりしていくことになるとは思いもしなかった。

あの時、呼ばれていた者たちが、候補ですらなくなったのは、すぐのことだった。

それで、王妃が今度こそ自分の贔屓にしている家の娘たちとのお茶会を開く気でいたが、それもなくなった。

それというのも、王子たちは2人とも……。


「「ファティマ嬢のような令嬢が好みだと気づきました。彼女のような令嬢となら、お茶をします。ですが、嘘つきは大っきらいなので、二度と話しかけないでもらうい、顔もみたくありません」」


王妃は信じられなかったが、王子たちは言ったらしい。


(まぁ、好みを私だと言わなかったのだから、大丈夫と思ったのだろうけど……。いい迷惑だわ。私より年上のはずなのに。王女の世話係となった私が更に目立つことをするって、どうなのよ。王子たちは、何をしたかもわかってなさそうね)


王子たちは面倒くさいのを丸投げしたようなものだ。それが、周りに知られることになり、ファティマまでの耳に届くことになったのも、すぐのことだった。

王子たちの投げ方が、雑すぎてファティマは頭を抱えたくなった。


(私のようなのが好み。……あの人は、それが私のことだと気づくのだろうか? 王子たちの言っているのが、私のことだと気づいたら、どんな反応をしてくれるのだろうか)


ファティマは、それを考えて気持ちが沈んだ。


(王子のどちらかに選ばれたら玉の輿だと思われるだけに違いない。……渡されたの期待するようなことなど、思ったりするわけがない)


王宮で、アイシャの世話係となったファティマは、気がかりだった。

王子たちのお茶会を台無しにしたのは、乱入した王女であり、それによって兄たちの婚約者候補選びがなくなった。そう噂されることになれば、そう見えなくはないのだ。


(名前など出さないでくれれば良かったと言いたいところだけど、王女の世話係にしたのも、王子たちに会いやすいように取り計らったとか思われたら、もっと最悪だわ。上手く誤魔化さないと……。はぁ、これでは王女の世話係ではなくて、未成年の王族の世話係じゃない。そこまでのことを引き受けたつもりはないから、王女のことだけに集中してたら、駄目かな?)


だが、さらなる厄介事があることまで気づいていなかった。ただ、変な誤解をされるのだけは嫌だと思いながら、どう思ったのかを手紙で聞くこともできなかった。

ましてやこれ幸いとどうしているかと聞けなかった。


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