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愛してやまない息子の誕生日に亡くなることになったが、葬儀でもあの旦那と義母は亡くなったというのに嫁の悪口を言っていた。

そんなことをわざわざ今、言うのかと誰もが思っていた。聞くに堪えないと不愉快そうにしている者も多くいた。


「嘘つき! ママじゃない!」
「?」


そこで小学生の息子が、耐えかねたように言葉にした。


「ケーキの予約するって言ったのあの人だ!」
「え?」


父親を指さして、あの人と言ったのだ。


「あの人がやるから任せろって言ったんだ。ママは忘れてなんかないよ。悪く言わないで!! それに僕と仲良くしてる孫の写真を周りに自慢したいからって、プレゼントもくれたことないのに誕生日会に来るなんて言うから、友達を誰も呼べなかったんだ! 誕生日を祝う気もないのに2人ともいなくてよかったんだ!」
「「っ!?」」


祖母と父親を泣きながら怒鳴った。あの人と言いたくなるのもわからなくはない。

息子の誕生日に死んだことを自業自得のように言っていたことに我慢の限界を迎えたのだ。そう言ったのを聞いたことで、葬儀場は静まり返った。


「は? なら、俺が忘れたのが悪いって言いたいのか?」
「っ、」
「忙しく働いていたんだ。お前らのために働いていたのに何だよ!」
「そうよ。友達がいないから、呼べなかっただけでしょ? それを私たちのせいにして、本当に嫌な孫ね」


母親を目の前で失った息子にそんなことを言う父親がいるだろうか。それを目撃することになった者たちは、あまりの言い分に信じられない顔をみんながした。

していないのは、そんなことを言った母親のみだった。孫の言葉よりも、息子の方が正しいとばかりにしていた。


「なら、約束なんかしなきゃよかったじゃないか。それに散々、奥さんのことを馬鹿にしといて。自分がすると言ったことも忘れてたんだろ? それを子供に指摘されたからって、その態度はないだろ」
「そうよ。子供に八つ当たりするなんて、どうかしてるわ」


だが、父親は息子の暴露で恥をかかされたと捉えたようだ。


「それに頼むはずだったケーキ屋さんの近くに商談でよく行くっていってたくせに。数週間したら、営業で得意先を回ってるって、ママに言ってるのも聞いたんだ。仕事してたわけじゃないじゃないんでしょ?」
「なっ、お前に何がわかるんだ!」
「わかるよ。他の女の人のとこ通ってるの。仕事してるはずなのに別のマンションに出入りしてるって、僕の友達のお母さんが何人も見てるもん」
「っ、そんなのただの誤解だ!」
「そうよ。根も葉もない言いがかりよ!」


どこのケーキ屋で注文しようとしていたかを息子に聞いたのは、父親の会社の上司だった。


「あの付近に君の商談相手も、得意先もないはずだが?」
「え、いや、その」
「大体、君は、そういうのをさせると仕事先からのクレームが多くあがるから、外させたはずだが? まだ、やっているのか? それで、クレームが更に増えたのを忘れたのか? それで、どれだけの顧客を失ったと思っているんだ!」
「っ、そんな、クレームなんて大袈裟すぎますよ。あれは、俺の仕事ぶりに嫉妬した周りが……」
「は? 嫉妬? それは、そっちだろ」
「そうね。他人の得意先を横取りしようとして、本当に迷惑しかかけられてないのに失礼すぎよ」
「っ、」


会社で、散々なことをしていても辞めろと言わなれないのは、この男の父親が会社の社長の恩人らしく、ギリギリまで辞めさせないことにしているに過ぎなかった。

それを聞いていた社長は……。


「そこまでだったとは思わなかった。父親は、あんなに素晴らしい方だったのに残念だ。悪いが、事実確認ができ次第、辞めてもらう」
「なっ、そんな!」
「待ってください! 何かの誤解です」


それを聞いて、社長に縋ったのは辞めるように言われた母親だ。

そんな姿に親戚や仕事関係者たちは、白い目を向けていた。

2人とも、息子のことも、孫のことも心配することなく、自分たちのことを心配しているのだ。

その子を心配していたのは、母方の祖父母だったが、喪主とその母親は亡くなったことをその両親に連絡し忘れていたのだ。

この時、まだ知らずにいて葬儀に間に合わなかったのだ。


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