7 / 24
7
しおりを挟むそんなことが続いて、芽衣子は憂鬱な日々を送っていた。早く学校についても、透哉が来るのを待ち構えている女子がいて、そこで女子たちが待ち合わせして話し込むようにまでなったのだ。
席に座れないことが続くばかりではなかった。飲み食いしたのを置いて行くまでになっていて、芽衣子はギリギリになってクラスに着くようになっていた。芽衣子だけではない。芽衣子のクラスの面々が、気を遣うようになっていた。
「浅見さん、おはよう」
「お、おはよう」
(あれ? 女子がいない??)
いつもなら、朝でもお構いなしに芽衣子の席に誰かしらが座って透哉と話しているのだが、その日は違っていたことに芽衣子は首を傾げたくなった。
当たり前のようにゴミが放置されるまでになっていたが、この日はそうではなかった。
転校生が来る前のようになっていて、クラスメイトたちも、前のようになったことに不思議そうにしていた。
休み時間になっても、女子が透哉のところに来て話に盛り上がることはなかった。芽衣子は益々わけがわからない顔をしていた。
(なんか、クラスの女子たちの方が教室から出て行ってない? 何で??)
以前まで透哉と話をしていた女子が、いそいそとクラスから、出て行くのに芽衣子は首を傾げるばかりだった。それとクラスが違うのにやって来ていた女子もいなくなった。お構いなしにやって来ていたのが、嘘のように誰も来なかったことに益々わけがわからなくなっていた。
芽衣子は知らなかったが、昨日こんなことがあったようだ。
透哉は質問攻めに合い続け、そのうち芽衣子みたいなのが、隣なのが羨ましいとなったのだ。
「本当に何で、あんなのが隣なのよ」
「早々、天然だとか言われてるけど、あんなの演技でしょ」
そんなことを言いだしたのはクラスが違う女子で、芽衣子のことが嫌いな人物が集まってしまったようだ。なんてことない話から悪口大会のようになったのだ。
「幼なじみとか言う男子のところに毎日言って、迷惑かけてるらしいよ」
「えー、信じられない。幼なじみが可哀想」
自分たちこそ、迷惑なことをしているというのにその自覚もなく、芽衣子の席を占領しながら、くっちゃべりながら、そんなことを話し始めたのだ。
それを聞いていたクラスメイトたちが、何か言う前に透哉がブチ切れたのだ。
「迷惑かけてるかは、本人が思うことだろ。君たちこそ、今現在、迷惑だと思われてる自覚がないんだな」
「え?」
「私たち、迷惑なんてかけてないけど?」
「なら、はっきり言う。迷惑だから、大した用もないのに来ないでくれ。ここで、飲み食いしたなら、各自でどうにかしろ。ここはカフェテラスでも何でもないんだ。それと他人の悪口を言いたいなら、他所でしてくれ。聞きたくない」
それまで、どんな質問でも、毎回同じようなことを聞かれても嫌な顔一つせずに聞き流し続けていたが、そのうちここに何しに来ていたのかを忘れてしまったようだ。
格好いい人がいるというなに飲み食いをして、好き勝手な話をし始めていて、透哉に質問していたことすら、どうでも良くなっていた。透哉が徹底して空気のようにしていたせいで、ここでなら好き勝手しても許されるみたいになってしまっていたようだ。
それが、一気に悪口大会のようになったことにそれまで黙っていた透哉が本気で怒ったのだ。
「そんな怒ることないじゃん」
「そうだよ。てか、浅見芽衣子みたいな子がタイプなの?」
「少なくとも、君らみたいな女子はタイプではないのは確かだ。もう、大した用事もないのに話しかけないでくれ。こっちが恥ずかしくなる」
そんなことを言われた女子は、頭に血が上ったようで透哉に怒鳴り散らしていた。その形相は、恐ろしいものばかりだった。
「うっわ、逆ギレかよ。怖ぇー」
「どんなに美人でも、あの顔されると幻滅だよな」
「てか、あれだけ飲み食いして、ゴミ放置してるの見ただけでないだろ。顔がよくても、あんなのが彼女だとか恥ずかしくて友達に紹介できねぇーよ」
「だよな」
男子がそんなことを言い始めたのは、すぐだった。押しかけて来る女子より、天然の強い芽衣子の方が、断然可愛いと彼らは思っていた。本人はその自覚が全くないところが、益々好感を持たれていたようだ。
そんなことがあったことを全く知らない芽衣子は、他の男子にも声をかけられて、慌てて挨拶を仕返したりした。わたわたしているのを見て笑われてもいたが、そんなことよりいつもと違うことの方が芽衣子は気になって仕方がなかった。
(どうなってるんだろ??)
昨日と今日で違うのはわかるが、何があったかまではわかることはなかった。誰もわざわざ芽衣子に話さなかったのだ。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
小さなパン屋の恋物語
あさの紅茶
ライト文芸
住宅地にひっそりと佇む小さなパン屋さん。
毎日美味しいパンを心を込めて焼いている。
一人でお店を切り盛りしてがむしゃらに働いている、そんな毎日に何の疑問も感じていなかった。
いつもの日常。
いつものルーチンワーク。
◆小さなパン屋minamiのオーナー◆
南部琴葉(ナンブコトハ) 25
早瀬設計事務所の御曹司にして若き副社長。
自分の仕事に誇りを持ち、建築士としてもバリバリ働く。
この先もずっと仕事人間なんだろう。
別にそれで構わない。
そんな風に思っていた。
◆早瀬設計事務所 副社長◆
早瀬雄大(ハヤセユウダイ) 27
二人の出会いはたったひとつのパンだった。
**********
作中に出てきます三浦杏奈のスピンオフ【そんな恋もありかなって。】もどうぞよろしくお願い致します。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが
まっど↑きみはる
ファンタジー
「我が宿敵!! あなたに、私の夫となる権利をあげるわ!!」
そう、王国騎士『マルクエン・クライス』は、敵対していた魔剣士の女『ラミッタ・ピラ』にプロポーズを受けのだ。
隣国が戦を仕掛けてきたので返り討ちにし、人質として三国の王女を貰い受けました
しろねこ。
恋愛
三国から攻め入られ、四面楚歌の絶体絶命の危機だったけど、何とか戦を終わらせられました。
つきましては和平の為の政略結婚に移ります。
冷酷と呼ばれる第一王子。
脳筋マッチョの第二王子。
要領良しな腹黒第三王子。
選ぶのは三人の難ありな王子様方。
宝石と貴金属が有名なパルス国。
騎士と聖女がいるシェスタ国。
緑が多く農業盛んなセラフィム国。
それぞれの国から王女を貰い受けたいと思います。
戦を仕掛けた事を後悔してもらいましょう。
ご都合主義、ハピエン、両片想い大好きな作者による作品です。
現在10万字以上となっています、私の作品で一番長いです。
基本甘々です。
同名キャラにて、様々な作品を書いています。
作品によりキャラの性格、立場が違いますので、それぞれの差分をお楽しみ下さい。
全員ではないですが、イメージイラストあります。
皆様の心に残るような、そして自分の好みを詰め込んだ甘々な作品を書いていきますので、よろしくお願い致します(*´ω`*)
カクヨムさんでも投稿中で、そちらでコンテスト参加している作品となりますm(_ _)m
小説家になろうさん、ネオページさんでも掲載中。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる