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第1章
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しおりを挟む(どうして、こんなにあっさりと私は捨てられることになったんだろ? ……それもこれも、私の見る目がなかったからになるのよね。大反省までして、信じて馬鹿みたいにこれまでしたことないくらいの努力をしたのに。彼は、彼だけは、以前の私と同じく、聖女を嫌っているのだと思っていたのに。私のことを理解してくれていると思っていたのに。やっぱり、心のどこかでは聖女をいいように信じていたんだわ。この世界を救う唯一の存在として、利用できる者として)
聖女を上手いこと利用しようとする者に元婚約者がいることに我慢の限界が近い気がしてならなかった。
暴れ出しそうな感情を必死に抑え付けようとしていたが、それはフェリシアには無理になり始めていた。
フェリシアの内から、どす黒い何かが溢れ出し始めていた。
(だからこそ、私は、こんな世界滅んでしまえばいいと思わずにはいられないのよ。……世界というか。この国が、なくなってしまえばいいとすら思うわ。あんな女を信じるなら、みんな道連れになって終わればいい)
フェリシアは、そんなことを思うまでになっていた。聖女への恨みが、デュドネに集中し始めることになったのも、フェリシアがこんな風に思っていたからだったが、それをしたフェリシアには、そんなことをしている自覚は全くなかった。
ただ、デュドネは敵に回してはならない者を怒り狂わせたことを思い知ることになるまで、大した時間はかからなかった。
フェリシアを嘲笑って追い出そうとした面々も自分たちが、この後どうなるかなんて、この時の誰も知りもしなかった。
フェリシアを追い出すことに成功したと喜んでいたが、
突然、現れた聖女はこんなにあっさりと後釜になれるとは思っていなかっただろう。
でも、すんなり変わることなんてできなかった。彼女だけてまなくて、デュドネに住まう者たちは、フェリシアの恐ろしさを身をもって知ることになったが、既に回避することは手遅れとなっていた。
聖女なんて、この世界に必要ない。フェリシアは、ずっとそう思って生きてきた。聖女の存在を知ってからは、聖女がどんな存在なのかをよく知らない時から、その単語を聞くだけで鳥肌が立つほどにフェリシアは、その言葉を口にするのも嫌なほど嫌っていた。
何がそんなに嫌なのかがわからないほど、聖女に対して爆発しそうな感情がフェリシアの中には常にあった。
何もかも奪うことになった聖女に対面して、以前から嫌な思いを何度となくしたことがあったような気すら、フェリシアはしてならなかった。
またなのかと突然、現れた聖女を見て、なぜか、そんな風に思ったが、それを疑問に思う余裕はフェリシアには残されていなかった。
「婚約破棄されて、追放されたんだから、さっさと出て行って」
「っ、」
「あなたに居場所なんてないのよ!」
自称聖女にそんなことを言われて、ブチッとフェリシアの中で何かがキレた。
「この世界に聖女なんて必要ない。消えてなくなればいい。こんな女を信じる人たちも、みんな一緒に消えてしまえばいい。その方が、世のためになるのは間違いないとちょっと前まで思ってはいたけど……、再び同じようにその通りだと思う日が来るとは思わなかったわ」
聖女に居場所がないと言われたことにキレてら今まで抑えていたものが、吹き出し始めるのをフェリシアはおさえられなかった。
(この世界に聖女なんて必要ない。何で、召喚なんてことをしたのよ。そんなことをするくらいなら、滅びてしまえばいい。全部無くなってしまえばいい)
フェリシアは、そんな思いが内から怒りと共にこみ上げてくるのを止められなかった。聖女を召喚した人たちも、あの女を聖女だと信じる人たちも、フェリシアを嘘つき呼ばわりするあの女も、消えてなくなればいいと強く強く思うようになっていた。
そのどす黒いものに阿鼻叫喚が沸き起こり逃げ惑う者たちばかりになったが、フェリシアの怒りはおさまることをしなかった。
なぜ、こんなことになってしまったのかはわからないが、わかることがあるとすれば、聖女さえ現れなければ、こんなことにはならなかったはずだ。
(あの女を信じて、私を信じてくれない人たちなんて、消えてなくなってしまえばいい。あんなのを聖女だと担ぎあげるのなら、その程度のおころってことだもの。そんな人たち消えてしまっても、問題ないはず)
いつしか、そんな風に思うまでになっていた。どす黒い感情に支配され、全てを埋め尽くそうとする自分をフェリシアは止める術を持ち合わせていなかった。
何より、本人に止める気が微塵もなかった。
そのどす黒いものにフェリシアは、デュドネを全て飲み込んで自分自身も飲み込まれて、そこでようやくプツリと思考が停止した。
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