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(ブリュエット視点)


祖母に引き続いて侯爵家のメイドになった。雇い主は、祖母の時とは別にいる。祖母の雇い主に義理はないが、私の雇い主は色々と良くしてもらっているから、恩返しのようなものをしている。

あの家をユルシュルのことを監視するのが役目だったりするが、なぜ監視する必要があるのかは教えられていない。

そんな時に荷物が届いて、受け取ってしまった。その中身が、次の当主宛のドレスだったことで、使えないメイドとみなされた気がする。あんなのを送りつけられるとは誰が思いつくというのか。

しかも、ちょっと見ただけで、弟にぴったりサイズだと言う令嬢にもびっくりしてしまった。

その前に侯爵家に届いた手紙を侯爵のもとに届くようにしたのは、私だ。あれが何かは知らないが、そうしろと言われたからやっただけだ。

シャルル様に届いたものを受け取ったことで、信用がた落ちになってしまったのを挽回しようと側付きのいない隙に手伝おうとしても駄目だった。

何なら、戻って来たデボラに睨まれて、それに冷や汗をかいた。殺気が凄くて恐ろしかった。

一体、何者なのだろうかと思っていたら、侯爵がしたことをそのままにするようにしろと雇い主からの伝言が届いて、その通りにした。

したのにおかしな方向に進んだのだ。令嬢が、頼った先の養子になることになったのだ。ここは、颯爽と私の雇い主が現れて侯爵家を助けることになっていたはずだが、そうはならなかったのだ。

侯爵の手紙は、婚約の話を受けることだったはずなのに。丁重に断ったことになったのだ。


「どうなってるのよ」


言われた通りにしたのに思い通りにならなかったのだ。それどころか。養子先に着いて行けと言われていたのにそれが叶わなかった。

とんでもない役立たずだと思われていたら、雇い主が侯爵家の子息を令嬢と勘違いして、ドレスを送りつけたことになって、とんでもない誤解のまま雇い主の両親に知られてしまったらしく、心の病ということにされて療養を理由に幽閉されることになったのだ。

そう、私の雇い主はこの国の王子だった。王太子になるのは自分だと思っている王子で、その妃になるのはユルシュルしかいないと思っているような人だった 。

ドレスを子息に送りつけたのも、ユルシュル様に自分のとのろにたどり着いてほしかったのだが、そうはならなかったのだ。

色々とおかしな仕掛けを頑張っていた王子が、理想の人が男性なのを受け入れられなかったと思われるまで、あっという間のことだった。

更にあっという間に雇い主を失った私は、侯爵家でメイドをし続けるしかなかった。子息宛のドレスを平然と受け取ったメイドと知れ渡ってしまっていて、他で雇ってもらえなかったのだ。

そんなことをしている間に唯一の身内の祖母も亡くなってしまって、転職など無理だとなって一生を侯爵家で働くことになってしまった。

嫁いで来たのが、隣国の王女ではなかったから、まだマシなようで侯爵夫妻は好き勝手しすぎているし、跡継ぎの子息は頼りないままなせいで、嫁の言いなりになっているのを見て、結婚して辞めようと思っても、結婚相手が中々現れることはなかった。






彼女は、つく相手を完全に見余っていた。ユルシュルのことを気に入っている人ならざる者が、彼女にあった幸せを掴ませるために動いていることを知らなかったのだ。

王子がユルシュルを見初めていたのだが、ブリュエットはそれを監視させていると思っていたのもあり、婚約したがっているとは思えないことをしていたのもあって勘違いしていた。

その結果、彼女もまた自分の首を絞めることになったことに気づくことはなかった。

ユルシュルも、他の男性と婚約させようとしたことで、ブリュエット自身が不幸になる運命に全身浸かったまま抜け出せなくなっていることに気づくこともなかった。


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