9 / 14
9
しおりを挟むオーギュストが、苦しそうに笑っていたところに公爵が戻って来たと知らせが来たので移動した。
だが、オーギュストは笑いのツボから抜け出せずにいた。
「何があった?」
「笑いのツボにハマったようです」
「……」
ユルシュルが、そう言うと養父となった公爵は、珍しそうな顔をして息子を見た。
それは、公爵夫人も同じだったが、ユルシュルがきちんと挨拶をして、王女のことを聞くとオーギュストを怪訝な顔をして見てから、話してくれた。
「……では、王太子と婚約なさるんですね?」
「そうなる」
今回のことで、王女は自分の首を絞め上げてしまった。そんなことをしたと知っても、王太子は婚約したいと譲らなかったようだ。
侯爵家は、今回のことで危うく王太子の逆鱗に触れそうになったが、そうはならなかったことにホッとしているようだ。
「それで、オーギュストがあぁなったのは、何だったんだ?」
「私も、それが気になるわ」
ユルシュルは、その話を養父母にした。更にデボラが描いたデザインも見せた。
「これを贈ったとは、聞いていないな」
「流石にぴったりで、こんなに素敵なデザインのものを頼めはしないはずよ」
「?」
「あー、ユルシュル。あちらの姪は、センスがないんだ」
「っ、」
オーギュストは、公爵の言葉に吹き出していた。どうやら、シャルルの女顔だけでなくて、センスの良いうんねんの辺りで選べはしないと思ったようだ。いや、両方かも知れない。
「あなたの側付きのメイドに調べさせなかったの?」
「追えなかったそうです」
「あら、そうなの?」
デボラは、何とも言えない顔をした。養母は、実父よりも見る目がある。メイドのことで、いいのを捕まえたと前に言われたことがある。
今回は、連れて来たことを知って歓迎してくれていた。
「追えないなら、益々、あの子のしたことじゃないな」
「……まぁ、いいじゃない。もう、あの家の尻拭いをすることもないのだもの」
養父は、怪訝な顔をしていたが、養母はそんなことを言った。どうやら、こんなことがこれからも続くことになりかねないから、縁を切ることにしたようだ。その辺、抜かりがなさすぎる。
ユルシュルは、ドレスの送り主やら、ブリュエットの雇い主やらがちょっとだけ気になったが、もう関係ないと思って忘れることにした。
叔母が、そう言うのを聞いたことが大きかった。
大体、女顔のシャルルに本気だとしても、冗談だとしても、デザインからオーダーメイドのものをわざわざ贈って来るような相手だ。お金とその辺の才能があるのはわかる。
でも、シャルルに送りつけて何をしたかったのかとブリュエットが手紙のことで動いていたのを見て、雇い主が一緒だろうとも、別々だろうとも、ユルシュルはそれ以上の興味を持つ相手には思えなかったこともあり、丁度いいと思って侯爵家でのことは終わったことにした。
そもそも、ユルシュルがいる間は、どうにかすると言ったが、あの家を出たのだから、どうにかする必要はないのだから、終わらせてもいいことでしかなかった。
95
お気に入りに追加
233
あなたにおすすめの小説
あなたとの縁を切らせてもらいます
しろねこ。
恋愛
婚約解消の話が婚約者の口から出たから改めて考えた。
彼と私はどうなるべきか。
彼の気持ちは私になく、私も彼に対して思う事は無くなった。お互いに惹かれていないならば、そして納得しているならば、もういいのではないか。
「あなたとの縁を切らせてください」
あくまでも自分のけじめの為にその言葉を伝えた。
新しい道を歩みたくて言った事だけれど、どうもそこから彼の人生が転落し始めたようで……。
さらりと読める長さです、お読み頂けると嬉しいです( ˘ω˘ )
小説家になろうさん、カクヨムさん、ノベルアップ+さんにも投稿しています。
【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます
もふきゅな
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。
エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。
悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。
妹よ。そんなにも、おろかとは思いませんでした
絹乃
恋愛
意地の悪い妹モニカは、おとなしく優しい姉のクリスタからすべてを奪った。婚約者も、その家すらも。屋敷を追いだされて路頭に迷うクリスタを救ってくれたのは、幼いころにクリスタが憧れていた騎士のジークだった。傲慢なモニカは、姉から奪った婚約者のデニスに裏切られるとも知らずに落ちぶれていく。※11話あたりから、主人公が救われます。
高慢な王族なんてごめんです! 自分の道は自分で切り開きますからお気遣いなく。
柊
恋愛
よくある断罪に「婚約でしたら、一週間程前にそちらの有責で破棄されている筈ですが……」と返した公爵令嬢ヴィクトワール・シエル。
婚約者「だった」シレンス国の第一王子であるアルベール・コルニアックは困惑するが……。
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。
陰謀は、婚約破棄のその後で
秋津冴
恋愛
王国における辺境の盾として国境を守る、グレイスター辺境伯アレクセイ。
いつも眠たそうにしている彼のことを、人は昼行灯とか怠け者とか田舎者と呼ぶ。
しかし、この王国は彼のおかげで平穏を保てるのだと中央の貴族たちは知らなかった。
いつものように、王都への定例報告に赴いたアレクセイ。
彼は、王宮の端でとんでもないことを耳にしてしまう。
それは、王太子ラスティオルによる、婚約破棄宣言。
相手は、この国が崇めている女神の聖女マルゴットだった。
一連の騒動を見届けたアレクセイは、このままでは聖女が謀殺されてしまうと予測する。
いつもの彼ならば関わりたくないとさっさと辺境に戻るのだが、今回は話しが違った。
聖女マルゴットは彼にとって一目惚れした相手だったのだ。
無能と蔑まれていた辺境伯が、聖女を助けるために陰謀を企てる――。
他の投稿サイトにも別名義で掲載しております。
この話は「本日は、絶好の婚約破棄日和です。」と「王太子妃教育を受けた私が、婚約破棄相手に復讐を果たすまで。」の二話の合間を描いた作品になります。
宜しくお願い致します。
逆行転生した侯爵令嬢は、自分を裏切る予定の弱々婚約者を思う存分イジメます
黄札
恋愛
侯爵令嬢のルーチャが目覚めると、死ぬひと月前に戻っていた。
ひと月前、婚約者に近づこうとするぶりっ子を撃退するも……中傷だ!と断罪され、婚約破棄されてしまう。婚約者の公爵令息をぶりっ子に奪われてしまうのだ。くわえて、不貞疑惑まででっち上げられ、暗殺される運命。
目覚めたルーチャは暗殺を回避しようと自分から婚約を解消しようとする。弱々婚約者に無理難題を押しつけるのだが……
つよつよ令嬢ルーチャが冷静沈着、鋼の精神を持つ侍女マルタと運命を変えるために頑張ります。よわよわ婚約者も成長するかも?
短いお話を三話に分割してお届けします。
この小説は「小説家になろう」でも掲載しています。
婚約者に嫌われた伯爵令嬢は努力を怠らなかった
有川カナデ
恋愛
オリヴィア・ブレイジャー伯爵令嬢は、未来の公爵夫人を夢見て日々努力を重ねていた。その努力の方向が若干捻れていた頃、最愛の婚約者の口から拒絶の言葉を聞く。
何もかもが無駄だったと嘆く彼女の前に現れた、平民のルーカス。彼の助言のもと、彼女は変わる決意をする。
諸々ご都合主義、気軽に読んでください。数話で完結予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる