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しおりを挟む「み、見つからなかった」
「ど、どうするんですか!?」
「それは……」
父は、一睡もせずに朝を迎えていた。母は、ギャンギャンとそんな父を怒鳴り散らすことしかできずにいた。
シャルルは顔色を悪くしていて、朝食を取りに来たユルシュルを見た。
そんな両親と弟を他所でいつも通りに朝食を取った。
その手紙を昨日のうちにデボラが持って帰って来た。中身を読んで、ありえない内容に速攻で燃やしたユルシュルは、中身を替えたのをデボラに元に戻させたが、それが見つからなかったのだろう。
父の字を真似るなんて、いつもしていることだ。
それこそ、戻させる時に他にも探している者が父以外にもいたらしい。そちらが、その手紙が侯爵の手に戻らないように出してくれたのだろう。
ちゃんと侯爵家の紋章入りの封蝋にしたのだが、そこを確認せずに届くようにしてくれたのなら、ありがたい。
「ユルシュル」
「私には、どうしようもできません。お父様がなさったことですから」
「それは、そうだが」
「ここは、叔父様に頼むしかないのでは?」
「そんなの無理だ。……義兄に頼むなんて、そんな」
「あなた、それくらいなんですか。やらなければ、この家の今後に関わるんですよ」
「っ、」
隣国に住む侯爵の実の姉の嫁ぎ先だ。ユルシュルの叔父は公爵であり、王弟でもある。
ユルシュルは、叔母夫妻がとても好きだ。この頼りない両親とはまるで違う。特に叔母の見る目は、とても優れている。そんな姉とユルシュルの父は仲がよろしくない。更にその姉の夫に頭を下げるのが嫌で仕方がないのだ。
「ユルシュル。それとなく、頼んでくれ」
「私が、ですか?」
「お前の頼みなら、断らない」
「そうね。あの人たち、あなたのことだけは、昔から気に入っていたもの」
「姉さん」
「……」
両親と弟に頼み込まれて、ユルシュルはため息をつきたくなった。こんな情けないのが、家族なのかと。まぁ、そうなるとは思っていたが。
ユルシュルが頼まれた通りにするふりをして、今回のことを叔父夫妻に手紙で書いて、それを上手く阻止した条件にユルシュルを養子にすると言い出したのは、それからすぐだった。
すり替えたもののままつくはずだが、その辺も王弟である叔父に抜かりはなかったが、ユルシュルのやったことが失敗することはなかった。
そんなこんなで、ユルシュルが叔父夫妻の養子になるまで、そんなに時間を要することはなかった。
ユルシュルの実の両親と弟は、王太子の逆鱗に触れることなく、穏便に隣国の王女の婚約の話を断れたことに安堵していた。
シャルルの方は、ドレスを贈って来たのが誰なのかもわかっていないのに全てが上手く終わったかのようにしていて、ユルシュルが養子となって旅立つ時に清々しい笑顔で見送ってくれた。
「まぁ、もう、頼ってこれないことを全く自覚していないところは、親子でそっくりなのはよくわかったわ」
ユルシュルは、付き合いきれないと思っていた。こんなにあっさりと養子になれたことに心からホッとしていた。
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