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しおりを挟む「そもそも、婚約をしたくないとはっきりと嫌われている相手を追いかけ回して、何を考えていたんだか」
「そんなことないわ!」
父親が何を言っても、プリヤはそんなことないの一点張りだった。それをきちんと伝えてなかったことすら忘れて、プリヤが聞く耳持たずに暴走したかのように両親はしていた。
更には今回のことで愛想が尽きたと勘当されることになった。
それを聞いて、激怒したのは幼なじみだけだった。
「勘当だと?!」
「あんまりよね?」
「あんまりだ! よし、私が2人に言ってやる」
幼なじみが可哀想すぎると公爵に第1王子が物申して騒ぎ立てて、他でも色々やらかしていたこともあり、王族の評判は更にガタ落ちになってしまった。
まぁ、元より評判が良かったことなどなかったが、まだ下があるのかというくらいに落ちた。
「元王太子は、平手打ちした幼なじみの令嬢の味方を未だにしているようだ」
「あんなのを王太子にしていたせいで、こんなことになったんだ。いつまで、そんなのを王族にしているつもりなのやら」
もう庇いたてはできないと廃嫡させることにした。庇いたてすぎれば、国ごと大変なことになる。元より庇っていたつもりはないが、野放しにしても迷惑しかかけそうもないのを心配していただけに他ならなかった。
だが、元第1王子はそれもこれも、あの女のせいだと喚き散らすのをやめることはなかった。
更に元公爵令嬢も、同じだった。どこまでもそっくりだった。
「あの女のせいだ」
「そうね。あんな女にみんな騙されているんだわ」
留学して来た女のせいで、散々な目に合わされたと騒ぎ立て続けた。
平民となった2人は、アディラのことを侮辱したとして、ひっきりなしに通報されることになった。牢屋に入れられることになっても自分たちが誰を侮辱して、馬鹿にしていたかに気づくことはなかった。
「あいつら、頭、大丈夫なのか?」
「元王太子と元公爵令嬢だろ?」
「それが、元令嬢の方は、留学して来たあの方を平手打ちしたらしいぞ」
「はぁ!?」
「マジかよ。それで、この国から、早々に他の国に行ってしまったのか」
2人が牢屋に入る頃には、アディラは別の国に行ってしまった後だった。
それを知った平民は、牢屋から出ることになった2人の顔をしっかり覚えていて、石やら腐ったものを投げつけるようになったのも、その頃からだった。
「ちょっと! 何するのよ!!」
「そうだぞ! 私たちが、何をしたって言うんだ!!」
「あんたらのせいで、聖女様がこの国に長く滞在してくれなかったんだ!」
「聖女だと? そんなのおとぎ話だろ」
「そうよ。そんなの信じているのなんて、庶民だけよ。これだから、下賤の民は……」
2人は、どうやらおとぎ話のことだと思っていたようだ。
おとぎ話ではない。現実に聖女は存在していたのだが、この2人は幼い頃からあり得ないことはおとぎ話だと思い込んでいた。
そのせいで、アディラに謝罪するなんて馬鹿げたことをせずにいたのは、そんな茶番に付き合えないと思ってのことだった。
プリヤたちは周りからどう見られているのかもわからないまま、聖女を無知ゆえに誤解して追い出した2人として、平民たちの怒りの捌け口となった。
それでも、新しい王太子とその婚約者がいるからこそ、他よりも随分マシな国になるが、聖女を言い出していなければ、もっとより良い国になっていたのは、間違いなかったが、その全てを彼らのせいにせるのがおかしいことに気づく者も少なかった。
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