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親族の間で、そんなことがあったことがあったのだが、その間に莉緒さんはカレシと別れてしまっていたようだ。


「いつの間に……?」
「凪さんが、色々なさっている間に数回ほど、お別れしてましたよ」
「数回……?」


そんなに??

琴葉さんの言葉に僕は、何に驚いていいのかがわからなくなっていた。まぁ、元々勘違いしやすいところはあったが、それを拗らせ続けているのだろうか?

そういえば、化粧も変わってたな。高校生の頃の彼女の良さがまるでなかったことにもびっくりした。今の流行りなのかと思ったが、カレシの好みなのだと思っていたが、本人が好んでいるだけのようで複雑なものしかなかった。

かくいう僕は、好きな人が莉緒さんではなくなっていた。化粧が、好みでなくなったからではない。彼女の顔つきが変わったというか。全体の雰囲気のせいだろう。

今、好きなのは、目の前にいる琴葉さんだ。彼女の両親だけでなく、父さんと祖父母の公認の仲だったりする。

人生はわからないものだ。

そんな僕は、ジオラマを制作する作家になっていた。琴葉さんのお父さんの思い描いた世界をジオラマにしたことで、それを聞きつけた人たちから依頼されるようになったのだ。

その中に佳都くんの母親もいたりする。最後に見たい景色があるらしく、それを佳都くん以外の家族が形に残したいらしい。

佳都くんは、今は行方不明のようだ。

もっか、その作品の仕上げに追われているところだ。なにせ、時間との戦いなのだ。

叔母の花屋は、琴葉さんがバイトで入っている。お嬢様には中々過酷だと思っていたが、僕がやらかした植物園での一件から、花が益々大好きになったようだ。

何より、僕の叔母さんの経営している花屋なのがいいようで、叔母だけでなくて、従弟妹たちも懐いている。今や僕より琴葉さんが好かれている気がする。

悔しくない。悔しく……。悔しくはないけど、寂しいかも知れない。

まぁ、なにはともあれ僕は、好きなことをして、好きな人の側にいて、誰かの大切な記憶をその人が見たままにジオラマに残している。


「懐かしい」


最期に見る風景が、その人にとって一番見たい景色を見せられたことが幸せでたまらない。

佳都くん、どこにいるんだよ! お母さんを見送らないで、後悔しないのかよ!!

何とか、完成したそれを持って行った時、意識はなかったようだ。でも、必死に呼びかけに戻って来て、その一言を発して笑ってくれたのだ。

それだけで、僕も泣いてしまった。そんなこんなで葬儀に出ながら、佳都くんを呼んでいた。

するとそこに彼と莉緒さんがやって来たのには、驚いた。いや、うん。莉緒さんが探して来たようだ。

佳都くんは、イケメンだったのが嘘のように残念なやさぐれ感が凄かった。そもそも、髭が似合わない。

ごめん。一瞬、誰だかわからなかった。


「何してんのよ! お別れしに来たんでしょ!!」
「っ、」


……うん。この関係、叔母さんとこと一緒だ。

まぁ、色々衝撃的だったが、お別れはできた。

そして、莉緒さんと佳都くんは、僕より先に結婚した。

僕は、琴葉さんと結婚した。まさか、佳都くんたちに越されるとは思ってもみなかったが。


「あら、そのジオラマ……」
「ん?」
「不思議ですね。私、このジオラマの風景を見たことがある気がします」


琴葉の言葉に僕はにっこりと笑った。

それは、そうだろう。君が佳都くんと付き合ってる時に僕も、見た風景なのだから。桜、藤、蓮……。何気に季節を楽しんでいるところに出くわしていたのだ。

だが、そのことを話すつもりはなかった。

佳都くんのところに先に双子が生まれ、数年おきに大喧嘩して、別れると騒いでは莉緒さんが子供たちを連れて僕らの家にやって来ていたが、僕ら夫婦は大した喧嘩もなく、誰もが羨むような仲睦まじいおしどり夫婦となって、幸せで笑顔溢れる人生を送ることができたのだった。

僕は、自分の見たい景色だけでなくて、たくさんの人のもう一度見たい景色を多く残すことになった。


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