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しおりを挟むその後、王女が婚約したのはラジェンドラだった。
ラジェンドラは、悪友の元婚約者なこともあり、婚約する気はなかったようだが、そんなところも王女が気に入った要因の1つのようだ。
ヴィディヤとしては、サントスよりも従兄の方が素敵な子息だと前々から思っていた。そのため、王女の必死さにヴィディヤも助太刀することにした。
何より、王女とは似ているところがあり、従兄と婚約すれば、その後も長い付き合いになれる。一生ものの友を逃したくなかった。
「お前まで、王女と婚約しろと言うのか?」
「あら、そうなったら、義理でも従姉妹になれるのですもの。妹がほしい従兄様なら、わかってくれるでしょ?」
「……」
「……でも、そうよね。無理を言ってるわよね」
しょんぼりしながら、ヴィディヤはそんなことを言った。
「はぁ~。お前にねだられると弱いんだよな」
「あら、逆に王女様のどこが気に入らないのですか?」
「……」
「あるのですよね? あの、どこぞの知りたがりに義理立てする以外に」
「……」
「ないのでしたら、悪友に義理立てするのをどこぞの放り投げて考えてみてください。もちろん、私のわがままも、捨てて構いません。王女様は、真剣に従兄様に好意を向けているのですから、無下になさらないで。……じゃないと」
「じゃないと?」
「従兄様とも二度と口をききません」
ヴィディヤは、にっこりと笑った。
ラジェンドラは、それこそ、脅しではないかと言いたかったが、全てを飲み込んだ。
ラジェンドラの弟が、兄がやり込められているのをニヤニヤ見ていたが、ヴィディヤは気にしていなかった。従弟は、王女が兄の婚約者になったら、どうなるかを考えてはいないのだ。
ヴィディヤが、そんな従弟に何か言うことはなかった。
その後、王女は無事にラジェンドラと婚約することになり、サントスと婚約していた時以上に幸せそうにする2人をよく見かけるようになった。
その頃には、ヴィディヤは王太子妃となっていて、仲睦まじく幸せそうにしている2人を見て笑顔になっていた。
ヴィディヤは、幼なじみ以上の面倒な人物に遭遇することもなく、トリシュナに比べて大したことないと思って何事もこなしていた。すると不思議なことに無理難題を言われても、慣れとは恐ろしいもので、こなせてしまっていた。それも、幼なじみに鍛えられたことが大半だったが、ふと思ったのは……。
「あの幼なじみのやることなすことで、鍛えられていたみたいね」
何気にヴィディヤは、幼なじみのおかげで逞しくなれていたようだが、彼女にわざわざ会ってお礼を言う気にはならなかった。
謝罪を一度もされなかったが、謝罪をきちんとしてくれていたとしても、ヴィディヤは二度と会いたくなかった。まぁ、それはお互い様々だったかも知れないが。
幼なじみと言っても、トリシュナを心から理解できた者は現れなかったようだ。
母親にも、自分の娘とは思えないと言われても、トリシュナは母親だけは悪く言わなかったようだ。そこに刷り込まれたものが凝縮していたようだが、彼女の母親がそれをわかることはなかった。
ヴィディヤたちは、色んな人たちに羨まれるような素晴らしい人生を送ることになった。
時折、厄介なのも現れたが、2人の舌戦に敵う者などいなかった。
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