3 / 6
3、新たな婚約と試練の行方
しおりを挟むロメリアと王子の婚約が成立して、10年近く。よくたえたものだ。喜怒哀楽を隠すのも、上手くなった。
『お互いに尊重しあい、助け合うことで和らぎ、絆が深まれば深まるほど、早く消える試練だ。一方的に消そうとすれば酷くなるから、そのつもりで。ただの呪いだと思って返し続けてはならぬ。良いな?』
そういう説明を精霊王に婚約したことを報告した時にされたのたが、バンダカは精霊の言葉をちゃんと勉強していなくて、わかったフリをして、頷いていただけだった。
あの時、ちゃんと言葉を理解して聞いていたら、それはそれで困ってしまった。ロメリアは王太子妃になりたいと思っていなかったのだ。
あの可愛いらしい呪いのような試練をそのままにして、10年もの間、たえていた。……そこまでして、この婚約が破棄になることを待ち望んでいた。
バンダカは妖精のことを軽んじるところがあった。王太子ともあろう人が、妖精王と話すのに必要な言葉をきちんと勉強せずに蔑ろにしてきたのも嫌だった。
更に極めつけは……。
「それは、君が何とかしてくれ」
「え……?」
「私は、王太子として色々やることがあるんだ。お祖母様の時も、母上の時も、すぐに消えたというから、君にも、すぐに消せるだろう」
「……」
バンダカは、妖精王と何の話をしたのかを全く気にもしなかった。
ただ、どうにかしろと命じるだけで、一切、本当に何もしなかった。
それだけでなく、会うたびにいつになったら、消せるのかと言われるくらいだった。それには、イラッとした。
そんな彼にロメリアは婚約者だけでなく王太子妃になってから支え続けなくてはならないのかと思ったら、げんなりしてしまった。本当に何の協力もしないバンダカに絆をどう感じろというのか。
「王太子も、きちんと勉強していたら、新しい婚約者にアドバイスも出来たのでしょうけど……。あ、でも、確か、リンベル様は、精霊が見えない方だと聞いたことがあったような……?」
つまり、きちんと勉強していても、見えない人と何を言われているか言葉のわからない人同士ということだ。
妖精王に婚約者が代わるときちんと伝えられたのかも、怪しい。
「見えなくても、声は聞こえるかも知れないわ。……まぁ、私が心配することではないわよね」
もし、ちゃんと理解出来ていなかったら、悪化させるのは早そうだ。リンベルは、せっかちなところがあるから、呪いを返しまくっていそうだ。
両親からは、しばらくゆっくり休めばいいと言われていたが、それが物凄く気になってしまい、週末明けから普通に学園に通うことにした。
32
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説
国護りの聖女と呼ばれていた私は、婚約者である王子から婚約破棄を告げられ、追放されて……。
四季
恋愛
国護りの聖女と呼ばれていたクロロニアは王子ルイスと婚約していた。
しかしある日のこと、ルイスから婚約破棄を告げられてしまって……。
記憶喪失を理由に婚約破棄を言い渡されるけど、何も問題ありませんでした
天宮有
恋愛
記憶喪失となった私は、伯爵令嬢のルクルらしい。
私は何も思い出せず、前とは違う言動をとっているようだ。
それを理由に婚約者と聞いているエドガーから、婚約破棄を言い渡されてしまう。
エドガーが不快だったから婚約破棄できてよかったと思っていたら、ユアンと名乗る美少年がやってくる。
ユアンは私の友人のようで、エドガーと婚約を破棄したのなら支えたいと提案してくれた。
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる